債券分析の理論と実践(改訂版)

タックマン,B.著/四塚 利樹訳/森田 洋訳
2012年9月28日 発売
定価 6,600円(税込)
ISBN:9784492711828 / サイズ:サイズ:A5判/ページ数:552

   

【訳者序文】


 

本書の英語版は、実務的観点に立って明晰・厳密に書かれた債券市場のテキストとして、実務家と研究者の双方から高い評価を受けてきた。債券分野においては、一方で制度的側面に詳しい各種の解説書が出版されており、他方で金利モデルに関する高度に抽象的・数学的なテキストも少なくない。しかし、実務家が重要と考えるような債券市場の特性を踏まえつつ、そのエッセンスを理論的・数量的分析にうまく組み込むことに成功したテキストとして、本書は稀有な存在である。しかも多くの予備知識を要求せず、基礎的なレベルから一歩ずつ着実に進むことができるように書かれている。その意味で、初心者にもプロフェッショナルにも学ぶところの多い、優れたテキストとなっている。



実務的に重要であるにもかかわらず大半のテキストで無視されている様々な課題が、本書では詳しく取り上げられている。その一例は、日々の債券価格データから3次スプライン補間法などを使って合理性のあるイールドカーブを構築する「カーブ・フィッティング」の手法(第4章)である。実践に際しては、対象となる市場についての深い理解に加え、ある程度の職人的技術と試行錯誤が必要であることが理解できる。他に興味深い分析が加えられている実践的課題の例としては、2ファクター・モデルを使ってトレーディング戦略の損益要因を分解する枠組みとその応用例(第14章)、「新発国債の流動性プレミアム」と「レポ取引におけるスペシャル・スプレッド」の関係に関する議論(第15章)などが挙げられる。いずれも類書には見られないが、債券市場のプロフェッショナルを目指す者には必須の内容と言えよう。 著者のブルース・タックマン氏は、金融業界と学界の両方で広く知られた債券市場の第一人者である。同氏はハーバード大学を卒業し、マサチューセッツ工科大学(MIT)で経済学Ph.D.を取得した後、ニューヨーク大学(NYU)助教授、UCLA客員助教授を経て、ソロモン・ブラザーズ(現シティグループ)の債券アービトラージ部門に勤務した。その後、CSファースト・ボストン、リーマン・ブラザーズおよびバークレイズ・キャピタルでマネジング・ディレクターを務め、現在はCenter for Financial Stabilityの金融市場研究ディレクターやNYUのクリニカル・プロフェッサー(臨床教授)として、システミック・リスクや金融規制などに関する研究を行っている。



本書の翻訳が始まったのは、早稲田大学大学院ファイナンス研究科の講義・演習で本書に接した修了生7名のグループから訳者の一人(四塚)に提案があり、同グループによって無償で下訳が作成されたことがきっかけである。そのようなきっかけがなければ、この翻訳プロジェクトは成立していなかったであろう。グループの構成(50音順、所属は2012年8月現在)は下記のとおりである。




鮎川哲史  シティコープ・インベストメント・バンク(シンガポール)

大山聖人  野村證券

小野耕多  野村アセットマネジメント

久野慎一  ハイポ・リアル・エステート・キャピタル・ジャパン

塩澤 弘  シティバンク銀行

中村 寛  三井生命保険

古川 真  ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ

 

同じく修了生である吉田佐知氏(アライアンス・バーンスタイン)には原稿全体のチェックと整理を手伝っていただいた。また、東洋経済新報社出版局の川島睦保氏と須永政男氏には、企画から刊行に至るまで多大のご尽力をいただいたことに感謝したい。最後になったが、早稲田大学大学院ファイナンス研究科債券インベストメント講座への寄附を通じて出版を助成していただいた大和証券グループにも厚く謝意を表したい。最終稿の作成は、第1章から第9章まで四塚、第10章から第21章まで森田が担当した。



2012年8月              四塚 利樹


 

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概要

定評のあるタックマン『債券分析の理論と実践』の改訂版。ケース実例を充実させ、最新の成果までを解説した実務家向けの好テキスト。

目次


第1)部 固定利付債の相対的価格評価        
第1章 債券価格、割引ファクターと裁定取引    
第2章 債券価格、スポット・レートとフォワード・レート             
第3章 最終利回り
第4章 一般化とカーブ・フィッティング                      
第2)部 債券価格の感応度指標とヘッジング     
第5章 単一ファクターに対する債券価格の感応度指標
第6章 イールド・カーブの平行移動に基づく価格感応度指標           
第7章 キー・レート感応度とバケット・エクスポージャー 
第8章 回帰分析に基づくヘッジ手法                       
第3)部 期間構造モデル
第9章 期間構造モデル構築のサイエンス
第10章 短期金利プロセスと期間構造の形状
第11章 期間構造モデル構築におけるアート:ドリフト
第12章 期間構造モデル構築におけるアート
      :ボラティリティと確率分布      
第13章 マルチファクター期間構造モデル
第14章 期間構造モデルを利用したトレーディング              
第4)部 金利派生証券      
第15章 レポ取引                 
第16章 先渡契約                
第17章 ユーロ・ドル先物とフェデラル・ファンド(FF)先物          
第18章 金利スワップ               
第19章 債券オプション              
第20章 債券先物                 
第21章 モーゲージ担保証券            

著者プロフィール

ブルース・タックマン
Bruce Tuckman, Ph.D.

金融業界と学界の両方で広く知られた債券市場の第一人者。マサチューセッツ工科大学(MIT)でPh.D.取得後、ニューヨーク大学(NYU)助教授、UCLA客員助教授を経て、ソロモン・ブラザーズ(現シティグループ)の債券アービトラージ部門に勤務。その後、米欧の大手投資銀行債券部門でマネジング・ディレクターを務めた。現在はCenter for Financial Stabilityの金融市場研究ディレクターとして、システミック・リスクや金融規制などに関する研究を行っている。

四塚利樹   【訳者】
よつづか・としき

1958年生まれ。早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授。
京都大学経済学部卒業。マサチューセッツ工科大学(MIT)にてPh.D.(経済学博士)取得。シカゴ大学ビジネススクール助教授、ソロモン・ブラザーズ(現シティグループ)マネジング・ディレクター、法政大学経営学部教授、シンプレクス・ホールディングス取締役、一橋大学大学院国際企業戦略研究科客員教授等を経て現職。

主な著作に『ヘッジファンド・テクノロジー:金融技術と投資戦略のフロンティア』(共著、東洋経済新報社2000年)、主な論文に「イー ルドカーブ戦略の理論と実践 ― 米国債券市場における経験と展望」(『証券アナリストジャーナル』2005年12月)など。

森田 洋   【訳者】
もりた・ひろし

1963年生まれ。横浜国立大学大学院国際社会科学研究科教授。
東京大学経済学部卒業。東京大学大学院博士課程経済学研究科を経て、1991年横浜国立大 学経営学部専任講師。助教授を経て2006年に現職。早稲田大学大学院ファイナンス研究科非常勤講師を兼務。

主な著作に「金利の期待仮説と期待パズル」(『市場競争と市場価格』日本評論社、2005年、所収)、「タームストラクチャーの決定要因」(『資産運用の最先端理論』(日本経済新聞出版社、2002年、所収)、主な論文に「年金債務が確率的に変動する時の最適年金ポートフォリオ」(『現代ファイナンス』23号、2008年) など。