音楽産業 再成長のための組織戦略

八木 良太著
2015年7月17日 発売
定価 3,300円(税込)
ISBN:9784492762189 / サイズ:サイズ:A5判/ページ数:224

本書は、音楽CDの売上が15年で半減するという厳しい市場環境の中で、レコード会社をはじめとした音楽関連企業が不確実性と複雑性の問題にいかに組織的な対応を行ったのかについて解き明かしている。

これまでの研究では、音楽ビジネスの不確実性に対する分析枠組みとして文化産業システムアプローチが提示されてきたが、21世紀に入ってからの複雑性に対する分析枠組みはいまだ提示されていない。その現状を踏まえて、本書では、複雑性の分析に有用なコンフィギュレーションアプローチを提示している。複雑性の時代を迎えて、音楽関連企業が生き残るためには、文化産業システムとコンフィギュレーションという2つのアプローチに基づく組織マネジメントを実践することが必要不可欠であると筆者は指摘する。

また、現在、音楽産業は「文化」から「商業」側に振れた組織マネジメントへ移行しようとしており、それに伴い「文化と商業のジレンマ」がさらに増幅する可能性がある。筆者は、日本の音楽産業が再生を図りながら持続的成長を実現するには、「文化と商業のジレンマ」を解消して、文化と商業を結びつける必要があり、そのためには豊かなクリエイティブ能力と高度なマネジメント能力を併せ持ったコンテンツプロデューサーを育成することが重要であると説く。

本書は、音楽ビジネスはもちろんのこと、他のコンテンツビジネスのこれからの経営にも有益な示唆を与えるものである。したがって、音楽はじめ、映画、放送、出版、アニメ、ゲームなどのコンテンツビジネスやICT(情報通信技術)ビジネスに従事している実務家やその研究者にとって必読の書といえる。

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概要

市場半減の中でも成長を遂げた企業が、いかに組織対応したか解明。今後のコンテンツビジネスの経営について有益な示唆を提示する。

目次

はしがき
序章 音楽産業が直面する不確実性と複雑性の問題
第1章 音楽産業の現状
第2章 不確実性の組織マネジメントと文化産業システムアプローチ
第3章 複雑性の組織マネジメントとコンフィギュレーションアプローチ
第4章 音楽産業の組織研究におけるコンフィギュレーションアプローチの有用性
第5章 結論
終章 再成長のための組織戦略

参考文献
索引

著者プロフィール

八木 良太  【著】
やぎ りょうた

1973年愛媛県生まれ。青山学院大学在学中にChar(チャー)のアシスタント・ディレクターを務め、音楽業界に入る。その後、アルファレコード、ビクターエンタテインメントの邦楽ディレクターとして、菊地雅章や沖野修也など、多数のアーティスト・企画作品を手がける。2006年、東京藝術大学大学院音楽研究科音楽学専攻修士課程修了。2014年、横浜国立大学大学院国際社会科学研究科企業システム専攻博士課程修了。尚美学園大学芸術情報学部専任講師などを経て、2014年より現職。専攻は、音楽産業を対象とした経営戦略論。著書に『日本の音楽産業はどう変わるのか――ポストiPod時代の新展開』(東洋経済新報社、2007年)などがある。