和牛肉の輸出はなぜ増えないのか

横田 哲治著
2013年11月22日 発売 在庫なし
定価 1,650円(税込)
ISBN:9784492780343 / サイズ:四六/並/208

日本の和牛が大きな歴史的転換期を迎えている。

飼料工場、生産者、流通、と畜場などは、一つの大きな産業と言えよう。
いま、その持続性が問われている。

とりわけ、海外でも有名な「松阪牛」「神戸牛」に言える。

飼料価格の高騰、販売価格の低下…。
飼育するほどに赤字が増える日本の和牛農家。

一方で、オーストラリアだけでなく、
中国もブランド和牛の肥育・輸出に力を入れ出した。

このままでは日本の畜産農家の経営は成り立たない。

商品を購入する

概要

世界で和牛ブームが起こる一方で日本の和牛農家の廃業が増えている。日本の畜産業の現場を歩き、活路を見出す良策を探る。

目次

第1章 和牛と稲作
 二〇〇〇年の歴史を持つ水田に定着した和牛
 日本では希な岩手県の牛飼い
 一粒のコメに神の魂が宿る
 コメにまつわる伊勢神宮の祭事
 稲作は肉牛と酪農の発展に欠かせない
 市場価値では計れない水田の重要な機能

第2章 全国に増え続けるブランド牛
 米沢牛──外国人の評価で広まった黒毛和種
 松阪牛──日本を代表する黒毛和種の処女牛
 近江牛──海外への輸出を試みる黒毛和種
 神戸牛──兵庫県で生まれ育った純粋の黒毛和種
 なぜ銘柄牛が誕生したのか
 農林水産省の肉用牛の改良目標
 海外に流出する和牛の遺伝資源

第3章 和牛に沸くオーストラリア
 ビーフ・オーストラリア2012
 広大な大地で牛を育てる家族経営
 和牛の普及と改良を推し進める豪州和牛協会
 日本向け輸出の顕著な傾向

第4章 和牛に忍び寄る安全・安心の危機
 世界中に広がる口蹄疫の恐怖
 都農町の口蹄疫発生
 大規模農場への口蹄疫感染
 解明されない感染ルート
 教訓として得られた飼養頭数の限界

第5章 第一〇回全国和牛能力共進会
 和牛肉の格付けの革新を図れ
 長崎県の肉用牛振興
 飼料なくして牛は存在しない
 和牛の審査基準の新しい取り組み
 中国で飼育される黒毛和牛

第6章 和牛生産の活路を求めて
 高騰する輸入飼料が肉牛農家の経営を圧迫
 熊本県の阿蘇あか牛草原再生事業
 あか牛の生産・加工・販売までを手掛ける大塚牧場
 あか牛は新たな和牛の潮流
 鹿児島肝付農業協同組合でのTPP説明会
 安全・安心を確保する肉牛経営が生き残る道

著者プロフィール

横田 哲治  【著】
よこた てつじ

国際農業ジャーナリスト。一般社団法人FSN(食の安全を考えるネットワーク)理事長。健康な地球市民を育てることを目標として、「食の安全・安心は国境を超える」を信条に、精力的に日本および世界各地の農村を歩き、各国の農業事情、農政を取材している。牛肉問題では、BSE(牛海綿状脳症)や口蹄疫の発生の危険性を早くから予見したり、オーストラリアなど海外での和牛の飼育状況を取材し情報発信するなど、日本の畜産業の存亡に警鐘を鳴らしている。食品偽装問題にも詳しい。