市場の失敗と政府の失敗への対策
日本が直面している現実の経済政策問題を評価する方法
を学ぶための,ミクロ経済学の入門テキスト.
基礎理論と,「市場の失敗」「政府の失敗」の分析をとおして 基本的な考え方を学ぶ.
○本書の特徴
(1) 加減乗除以外の数学を用いず,需要・供給分析の応用により経済学の基本的な考え方を学ぶ.
(2) 日本の現実の経済政策問題を数多く分析.
(3) 理論トピックは,日本の経済政策問題に役立つものを選択,
(4) 独学者にとっても,自分の興味あるトピックに最短時間で到達できる.
(5) 経済学的な政策判断の基本的な考え方の背景にある暗黙の前提を,掘り下げて解説.
本書は,従来の日本のミクロ経済学の教科書と異なる目的を持っています.
従来の日本のミクロ経済学の教科書の多くは,より高級な経済学を分析するための基礎を作ることを目的としています.このため,経済学を専攻する人のためには役立つが,それだけを読んでも現実の日本の政策問題に対する判断はできません.
それに対して,本書は,現実の経済政策問題を数多く分析することを通じて,経済学を初めて学ぶ人が,日本が直面している広範な経済政策問題に関する対応策を自分自身で考えられるようになることを目的としています.
そのような教科書は,大学生だけでなく,経済学を独習したいと考えている社会人にも,大学で経済学を専攻するかどうか判断しようとしている高校生にも,役立つでしょう.
序章 市場と政府の役割分担 1章 市場 2章 供給 3章 余剰と参入規制 4章 市場介入 5章 弾力性・限界収入 6章 規模の経済:独占 7章 外部経済と不経済 8章 減産補助金と環境権 9章 情報の非対称性 10章 公共財 11章 権利の売買 <II巻-効率化と格差是正> 12章 フローとストック 13章 労働 14章 生産要素の総量市場と帰属所得 15章 供給者による自家消費 16章 混雑 17章 長期均衡 18章 生産と消費の基礎理論 19章 厚生経済学の基本定理 20章 社会的厚生 21章 効率化政策への批判 22章 格差是正政策 終章 効率化政策と格差是正政策の両立
八田達夫
はった たつお
政策研究大学院大学(GRIPS)学長.
1943年東京都に生まれる. 1966年国際基督教大学(ICU)教養学部卒業(1966年). 1973年ジョンズ・ホプキンス大学経済学部博士(Ph.D.). オハイオ州立大学経済学部助教授(1973-74年),埼玉大学教養学部助教授(1974-77年), ジョンズ・ホプキンス大学経済学部助教授・准教授・教授(1974-85年), 大阪大学社会経済研究所教授・所長(1986-99年), 東京大学空間情報科学研究センター教授(1999-2004年), 国際基督教大学教養学部教授(2004-07年), を経て2007年より政策研究大学院大学(GRIPS)学長.
[主要論文] "The Paradox in Capital Theory and Complementarity of Inputs," Review of Economic Studies, 1976; "A Theory of Piecemeal Policy Recommendations," Review of Economic Studies, 1977; "A Recommendation for a Better Tariff Structure," Econometrica, 1977; "Structure of the Correspondence Principle at an Extremum Point," Review of Economic Studies, 1980; "The Generalized Theory of Transfers and Welfare: Bilateral Transfers in a Multilateral World," American Economic Review, 1983(共著); "Welfare Effects of Changing Commodity Tax Rates Toward Uniformity," Journal of Public Economics, 1986; "The Global Correspondence Principle," American Economic Review, 1987(共著); "The Nakasone-Takeshita Tax Reform: A Critical Evaluation," American Economic Review, 1992, 他.
[主要著作] 『年金改革論』日本経済新聞社(共著,日経・経済図書文化賞受賞),1999年; 『電力自由化の経済学』東洋経済新報社(共編),2004年,他.