長期的な経済発展の過程を検討しようとするときに不可欠となるのが、整合性のある時系列統計である。本『アジア長期経済統計』シリーズでは、アジアならびにその周辺で相対的に統計資料の豊富な国あるいは地域を選び、加工統計の時系列を整備・作成し、その成果を国内外の人々に提供する目的でつくられた。
本シリーズの構成は以下の通りである。
第1巻:台湾/第2巻:ベトナム/第3巻:中国/第4巻:韓国/第5巻:タイ/第6巻:インド/第7巻:フィリピン/第8巻:インドネシア/第9巻:トルコ・エジプト/第10巻:ロシア/第11巻:中央アジア/第12巻:日本
各巻とも、(1)たんなるデータ集ではなく、国民経済計算の概念枠組にのっとった統計集とすることを目標とし、(2)対象とする機関は戦後の40~50年ではなく、少なくとも戦前ないしは20世紀初頭の時期までは遡る、ことを目標としている。
時代を遡れば遡るほど統計資料は不足するので、これは野心的な試みであるが、利用しうる統計資料をできるだけ収集し、GDPと1人当たりGDPの時系列を中心とする諸系列相互の関連が明確な形になるように再構成して提供する。その成果に基づいて、アジアにおける成長の比較研究や、それと国際貿易、就業構造、生産ないし支出構造などを関連させた研究が可能となるからである。アジア諸国の多くは植民地の時代が長かったが、本シリーズによって各国の最近の経済発展をより長い歴史的文脈のなかで検討することが可能になる。
この中国巻は、台湾、香港、マカオを除き2013年現在の中華人民共和国が実質的に統治している地域における、1912年から2010年にいたる時期の経済統計の時系列を、国民経済計算を念頭に置きながら整理し、データベース化したものである。中国を対象とした長期経済統計には先行研究がいくつかあるが、中華民国期に関しては広範囲の時系列統計をまとめたものは存在しておらず、本書が初めてとなる。
また、満州についても、満鉄附属地と関東州も含めた満州全体の経済統計について章を設け、人口・労働力から国民経済計算までの推計も行った。
本書には、補論のほか、統計表のデータが収録されたCD-ROMがついていて、統計を利用したい研究者にも最適。