週刊東洋経済

情報量と分析力で定評のある総合経済誌

担当記者より
2025年10月11日・18日合併号最新号
2025年10月6日 発売
定価 950円(税込)
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【特集】すごいベンチャー100 2025年最新版


資金調達の二極化に加え、東証グロース改革で小粒上場へのハードルが上がり、イグジットの戦略見直しを迫られている日本のベンチャー企業。オルツの不正会計問題やセクハラ問題、袋小路に入り込んでいる「国産ユニコーン」の現状など、スタートアップで起きている事象を取り上げます。そして、恒例の「すごいベンチャー100社」では、独自のビジネスモデルや社会への影響力を持ち、「ネクストユニコーン」の可能性のあるベンチャーを編集部が選定し、紹介していきます。
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担当記者より

特集「すごいベンチャー100 2025年最新版」を担当した木皮透庸です。

恒例のベンチャー特集も今年で10年目。ユニークなビジネスモデルや先進的な技術を持つスタートアップから100社を厳選しています。今年の特徴は、事業のどこかでAIを活用する企業が多数を占めた点です。加えて、冠婚葬祭やストックオプション業務、建設など特定業界の課題に特化した「バーティカルSaaS」の存在感も一段と高まっています。

国内スタートアップは2万5000社を超え、裾野は広がっていますが、資金調達環境は依然として厳しいままです。特に成熟期では、競争力のある企業が大型調達を実現する一方、資金繰りに苦しむ企業も少なくありません。

今後は東証グロース市場改革の影響も大きくなります。2030年以降は「上場後5年で時価総額100億円以上」へと上場維持基準が引き上げられます。実質的には「上場基準の厳格化」ともいえ、IPO(新規株式公開)にこだわらず、M&Aによるイグジット(出口戦略)を模索するスタートアップが増えています。イグジット長期化を見据え、マーケティング強化や老舗事業会社の買収などを通じて競争力を磨く各社の取り組みを取材しました。

創業からわずか1年で日本最速のユニコーン(評価額10億ドル以上)となったSakana AIの伊藤錬COOにもインタビュー。スピード感ある事業展開の背景や、三菱UFJ銀行と組んで進める「融資判断の自動化」におけるAI活用の実態を伺いました。

さらに「悩める国産ユニコーン」では、評価額10億ドルを超えながら成長の壁に直面する企業群を取材。国が掲げる「ユニコーン100社」という目標の正当性が問われています。このほか、「オルツの不正会計問題」に関する記事や最新の「評価額・調達額ランキング」も掲載。起業家、VC、CVC、証券会社の関係者への取材を基にした「ホンネ座談会」では、資金調達やイグジットをめぐる本音から業界の今が垣間見えます。

明暗が交錯し、「踊り場局面」ともいわれる日本のスタートアップ業界。真の成長力を武器に未来を切り拓いてほしい――。そんな思いを今年のベンチャー特集には込めました。スタートアップ関係者はもちろん、そうでない方にもぜひ手に取っていただきたいです。

担当記者:木皮透庸(きがわ ゆきのぶ)
1980年茨城県生まれ。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。NHKなどを経て、2014年東洋経済新報社に入社。自動車業界や物流業界の担当を経て、2022年から東洋経済編集部でニュースの取材や特集の編集を担当。2024年7月から週刊東洋経済副編集長。ベンチャー特集では2024年と2025年の編集責任者を務める。

週刊東洋経済とは

週刊東洋経済

『週刊東洋経済』は、変化する世の中を確かな視点で解明する総合ビジネス週刊誌です。

創刊は1895年(明治28年)、日本国内で最も歴史のある週刊雑誌でもあります。企業戦略から主要業界事情、国内外の政治経済はもちろん、近年はビジネス実用、テクノロジー、社会問題まで、経済の複雑化やビジネスパーソンの関心の広がりに対応し、幅広いテーマを取り上げています。

一方で創刊以来、一貫しているのはセンセーショナリズム(扇情主義)を排除し、ファクトにこだわる編集方針を堅持することです。「意思決定のための必読誌」を掲げ、今読むべき特集やレポートを満載し、価値ある情報を毎週発信しています。

週刊東洋経済の編集方針

  1. 取材力
    当社に所属する約100人の経済専門記者が主要業界、全上場企業をカバー。国内外の経済や業界、企業などを深堀りし、他には読めない記事を提供。
  2. 分析力
    複雑な情報やビジネス慣習、制度変化などを分析し、的確に整理。表層的事象をなぞるのではなく、経済や社会の底流で起きている構造を読み解く
  3. 中立性
    企業や業界側の立場や事情に追従することなく、本誌記者は取材対象を客観的立場で分析・評価し、ときには忖度なく切り込む。

3つのポイント

視野が広がる幅広いテーマ
「健全なる経済社会を先導する」という創刊理念のもと、企業戦略やマクロ経済だけでなく、社会問題や海外情勢など幅広いテーマで特集を組み、中立的な立場で情報発信をしています。

図解や表でわかりやすく
ビジネス誌の中で随一の規模を誇る約100人の記者集団が、「経済から社会を読み解く」スタンスで徹底取材。旬な情報を図解や表にまとめて、わかりやすく解説します。

『会社四季報』の独自データで深掘り
約3,900社の上場企業すべてに担当記者を配置。財務情報から海外進出情報など『会社四季報』ならではのデータベースから独自の切り口で深掘りし、分析した連載や特集を『週刊東洋経済』で展開しています。

目次

特集
すごいベンチャー100 2025年最新版
真の競争力が問われる新時代に突入 好機をつかむベンチャーはどこだ?
100社創出は曲がり角 悩める「国産ユニコーン」
ベンチャー評価額&調達額 最新ランキング
[スペシャルインタビュー]Sakana AI 共同創業者・COO(最高執行責任者) 伊藤 錬
「ホームラン級の研究成果を企業に実装する」 

「ラウンド」って何? 投資家の種類は? イチから知ろう! ベンチャー業界「超入門」
経産省は初の実態調査を開始 「ベンチャー界かい隈わい」で横行するセクハラ
オルツ不正会計問題の波紋 問われるベンチャーのガバナンス
監査実務のベテランが解説 エコシステム全体で横連携を
ホンネ座談会 踊り場局面のベンチャー業界 どうやって勝ち残るか?

2025年版の注目企業は? すごいベンチャー100社リスト
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  • 10/20(月) 週刊東洋経済 2025年10月25日号