特集「ホテル 高級化大戦」を担当した木皮透庸です。
小誌がホテルを特集するのは2023年5月以来、約2年ぶりです。前回の特集タイトルは「ホテル富裕層争奪戦」。今、富裕層争奪をめぐる競争はより激しさを増しています。要因は言うまでもなく、インバウンド(訪日外国人客)の急増です。
2024年にインバウンドは3686万人と過去最多を記録。今年1~3月では1053万人となり、過去最速で1,000万人を突破する活況ぶりです。個人的に参加した3月の東京マラソンでは参加者の半数近くを外国人が占め、「インバウンド沸騰」を肌身に感じたのでした。
今や東京や京都の宿泊の半分は外国人。外国人富裕層の長期滞在需要を獲得しようと、高級化の競争は新次元に突入しています。その一番象徴的な動きが、ヒルトン最高級ブランド「ウォルドーフ・アストリア」の日本初進出です。万博開幕に合わせて4月に開業した大阪の新ホテルは、大手旅行予約サイトで1泊2名朝食付きの宿泊単価はおおむね13万円以上。大阪では頭一つ抜ける価格で、まさに高級化をリードする「本命」が登場したと言えます。ヒルトンのアジア太平洋地域社長に直撃し、日本市場に着目する理由を聞きました。
特集では、外資系と国内系のホテルの運営形態の違い、そのメリット・デメリットを丁寧に解説。大阪や京都における高級ホテルの進出状況、外資系ラグジュアリー誘致に積極的な日系デベロッパーの思惑や、ホテルに群がるファンドの動きにも迫っています。
攻勢を強める外資系に対し、国内勢はどう迎え撃つか。国内名門ホテル4社(帝国ホテル、パレスホテル、西武・プリンスホテルズワールドワイド、東急ホテルズ&リゾーツ)のトップにインタビュー。帝国は京都開業を来春に控え、東京の建て替えも進めています。パレスは台湾の老舗ホテルと提携する形で海外初進出の予定。それらの狙いや進捗状況についても深掘りしています。2028年に温泉旅館で米国に初進出する星野リゾート。「温泉旅館の運営が唯一、北米で事業を拡大していく方法」と星野代表が言い切っていたのが印象的でした。
自社の強みをどう磨き、消費者に訴求するか。この視点は経営規模を問わず、各社に求められています。インバウンド増の追い風がある今だからこそ、経営者は思い切った戦略を取れるはず。そんな考えから「差別化でキラリと光る中小ホテル」にも光を当てました。
このほか、「10万円でも泊まりたい高級ホテル7選」「5万~7万円のプチラグジュアリー5選」など、ワクワクするコンテンツも満載です。ホテル業界の関係者はもちろんのこと、ホテルの高級化に関心のある多くの方にぜひお手に取っていただきたいです。
担当記者:木皮透庸(きがわ ゆきのぶ)
1980年茨城県生まれ。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。NHKなどを経て、2014年東洋経済新報社に入社。自動車業界や物流業界の担当を経て、2022年から東洋経済編集部でニュースの取材や特集の編集を担当。2024年7月から週刊東洋経済副編集長。