担当記者より
今回の特集にあたり、複数の調査会社に取材しました。ある調査会社に出向いたところ、その会社の幹部は「新型コロナが騒がれ出した2月から2ヶ月ほどしか経っていない時期に、倒産企業が急増した。私の想定よりも早く、存続をあきらめている印象がある」と切り出しました。そして、「今日の12時の時点で、コロナ関連倒産は30件で・・・」と話し始めたところ──。
「速報です」と、別の社員の方が取材部屋に入ってきました。また関連倒産が、一気に3件増えたというのです。矢継ぎ早に倒産が増えていることを、このとき実感しました。
新型コロナウイルスの脅威は、多くの産業を飲み込もうとしています。特に零細・中小企業が多く、十分な手元資金を持っていない日本の観光や飲食関連企業が、次々と資金ショートを起こしています。
そもそも中小企業は、人手不足を背景とする人件費高騰が経営を圧迫していました。そこに2019年秋の消費増税が逆風となって吹き付けました。業績が悪化していたところに、今年に入って新型コロナが襲いかかり、とどめを刺した形となりました。
今後は倒産がいったんおさまる可能性があります。4月に入り金融庁は、新型コロナの緊急経済対策を踏まえた資金繰り支援を金融機関に要請しました。「はっきり言って、むちゃくちゃ。お金がないところには、形だけの審査で貸し出す姿勢」と、あきれ顔のアナリストもいるほど。
一方で、「そうは言っても、やはり金融機関側は融資の際にはそれなりの審査が必要。企業が本当に必要なタイミングで融資を受けられるかどうかはわからない」との見方もあります。観光や飲食関連企業はすそ野が広く、従事している従業員も多いため、動向には注視が必要です。
さらに、状況は深刻です。特集の校了を終えた16日、政府は緊急事態宣言の対象を全国に拡大しました。これまで対象だった1都府県で店舗を休業していた小売業も、その対象を全国の店舗に広げなければいけません。
GMS(総合小売店)最大手のイオンは金融機関からの借入枠が1.2兆円ほどあるようです。百貨店最大手の三越伊勢丹ホールディングも取引銀行に対して、800億円規模の融資枠設定を要請したもよう。このような大手小売りでさえ、手元資金を厚く確保することを迫られています。
ましてや零細・中小の小売りとなると、コロナ影響が長期化すれば、資金繰りが続かなくなる懸念があります。特に、EC(ネット通販)や郊外型ショッピングセンターに顧客を奪われている地場資本の百貨店は、雪崩おちるかのように倒産する事態が起きる可能性もあるでしょう。
今回の特集では、どのような産業に危機が迫っているのか、リーマンショックや東日本大震災といった過去の危機時とはどのような違いがあるのかなど、倒産のリアルをレポートしています。また、資金繰りが危ない「要注意企業ランキング」も充実。観光客が一瞬にして「蒸発」したホテル、旅館、エアライン、バスといった企業の悲鳴と今後の対策についても取り上げています。東洋経済の記者のパワーを結集した「コロナ大恐慌」特集、ぜひお手にとってご覧ください。
担当記者:梅咲 恵司(うめさき けいじ)
東洋経済記者。百貨店、スーパーなどの業界を担当。過去に自動車、精密機械、不動産業界などを担当。『週刊東洋経済』臨時増刊号「名古屋臨増2017年版」編集長。
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