週刊東洋経済

情報量と分析力で定評のある総合経済誌。

担当記者より
2020年5月2日・5月9日合併号
2020年4月27日 発売
定価 730円(税込)
JAN:4910201320509

【特集】コロナ医療崩壊

世界を揺さぶる新型コロナウイルス。米国、イタリア、スペイン、フランスなどと比べると、日本は感染者数、死者数とも桁違いに少なく抑制できています。しかし、重症患者がじわりと増加を続ける中で、懸念されることがあります。それが「医療崩壊」です。

現在の脆弱な医療体制ではコロナ患者に対応できないだけでなく、ほかの診療・手術にも支障が出てしまうのです。すでに全国で外来診療を制限したり救急外来を断ったりするケースが頻発。欧米で起きている医療崩壊による死亡者の急増が、日本でも現実のものとなりつつあります。

なぜこのような深刻な事態に陥ったのか。本特集では、日本の感染症対策の問題点、医療現場が直面している危機、世界主要国の動きについて詳報します。
 

【スペシャルリポート】始まった「コロナ切り」 異次元の雇用破壊


各地で相次ぐ解雇や雇い止め。「コロナショック」は「リーマンショック」を凌駕する異次元の雇用破壊をもたらしつつあります。とくにフリーランスは「仕事ゼロ」になるケースが多発しています。国による強力な支援が不可欠です。

担当記者より

この特集の取材に取り掛かったのは3月末。それから校了する4月下旬までの間にも、新型コロナウイルスの感染状況は日に日に深刻さを増していきました。そのような中、いくつもの医療現場で医師や看護師から生の声を集めましたが、それらはどれも悲鳴に近いものでした。

4月上旬、ある国立大学病院の医師にメールで取材依頼をしました。ほかの病気でも重症患者を多く抱える大学病院での感染者受け入れは、院内感染の予防やほかの治療への影響などで大きな困難を伴うものです。先生が多忙を極めていることは容易に推察できましたが、記者として現場の危機感をぜひ伝えたいと考えたからです。

案の定、先生は1月中旬以来休みなく働いているとのことで、取材は受けてもらえませんでした。送られてきた丁重なメールには、「スタッフの疲労を考えるとあと何日(感染者の対応が)可能かわからない」と想像以上に深刻な状況が綴られていました。

医療の現場を支える多くの方が、「いつ自分が感染するかしれない」「家族に感染させるのではないか」という不安を抱えながら何ヶ月も働き続けています。先生のメールはこんな言葉で締めくくられています。

「多くの薬剤師、検査技師、事務、食事、清掃の方が医療を支えています。もしよろしければ、休日夜間も頑張るスタッフのためにイギリスのように決まった時間に拍手をしてあげてください。自分だけは大丈夫は通用しません。アビガン、フサンが効果あることを期待して頑張っています」。

最前線で身を削っている医療従事者に、私たち一人ひとりが心から感謝しなければいけません。そして、何よりも自分自身が感染しないように日々の生活で気を付けなければいけないことは言うまでもありません。

どうかこれ以上感染が拡大しないよう祈る気持ちでいっぱいです。みなさまもぜひ本特集から現場の「今」を知ってください。

担当記者:井艸 恵美(いぐさ えみ)
東洋経済記者。1988年群馬県生まれ。実用ムック、週刊誌編集などを経て、2018年から『週刊東洋経済』編集部記者。

>>週刊東洋経済編集部の制作にかける思い

目次

特集
コロナ医療崩壊 

第1章 震える日本
医療現場の絶体絶命
なぜPCR検査を受けられないのか 現場疲弊させる「検査難民」
見えない敵の真実 新型コロナウイルスQ&A
戦いの長期化を覚悟すべき理由 感染拡大の行方を予測する
期待できる治療薬はどれか アビガンは年内にも承認へ
実用化は早くても2021年 楽観できないワクチン開発
保育と介護、葛藤する現場
「世界は戦時下にある 傍観者ではいられない」楽天 会長兼社長 三木谷浩史
医史学の専門家が推薦ブックガイド26冊 「人と病」疫病と人との歴史を腰を据えて学ぶ

[インタビュー]コロナショック 専門家はこう見る
「日本の竹やり戦術はもう限界 ビッグデータの徹底活用が急務だ」
 WHO事務局長上級顧問 英キングス・カレッジ・ロンドン教授 渋谷健司
「稼いだ時間の上にあぐらをかき 何の対策も準備してこなかった」
 神戸大学教授 岩田健太郎

第2章 試される世界
コロナとの戦いは続く
アメリカ黒人の高い死亡率 死者4万人 初動遅れに批判
ベンチャーの新技術は切り札となるか 血液、尿・便を使って感染実態を解明
アメリカICU病棟の看護師が激白 「マスクが全然足りない」
イギリス首相も感染の非常事態 見えぬ終息 負担増す市民
イタリア名所から人影が消えた 医療崩壊で建国以来の危機
ドイツ コロナ禍でも欧州の優等生 出口戦略を求める経済界
中国 危機はいまだ去らず ウイルスの逆輸入を警戒

[インタビュー]コロンショック 世界の識者はこう見る
「危機終息前の経済対策は無駄 ワクチン開発に投資すべきだ」
 経済学者・思想家・作家 ジャック・アタリ
「グローバル型資本主義は衰退へ デジタル資本主義が加速する」
 
仏パリ経済学校教授 ダニエル・コーエン

スペシャルリポート 
リーマンショック超え確実 始まった「コロナ切り」 
仕事ゼロでも固定費重い 立ち行かないフリーランス

ニュース最前線
ゼネコンの工事停止が続出 誰が「遅延費用」を負うのか
ソフトバンクGが巨額赤字 ビジョンファンドは岐路に
トロイカ体制のJフロント パルコ軸に成長描けるか


連載
|経済を見る眼|「測りすぎ」の日本的経営|延岡健太郎
|ニュースの核心|IMFの最新経済見通し、その警告をどう読む|中村稔
|トップに直撃|レノボ・ジャパン社長 デビット・ベネット
|フォーカス政治|政権内部の対立も顕在化 給付金めぐる混迷の内幕|塩田 潮
|グローバルアイ|世界は中国を批判している場合か|ジム・オニール
|INSIDE USA|「持たざる者」を襲う悲劇 コロナが映す格差のリアル|肥田美佐子
|中国動態|新興カフェ・ラッキンが粉飾 中国企業の資金調達に暗雲|田中信彦
|財新|中国「医療用資材」輸出に品質問題浮上中国「新車販売」回復傾向だが低空飛行
|マネー潮流|経済対策の規模でなく使い方を問う|佐々木 融 
|少数異見|コロナ禍でも国際問題への関心を失うな
|知の技法 出世の作法|公明党の「10万円」給付を 安倍首相が受け入れた理由|佐藤 優
|経済学者が読み解く 現代社会のリアル|コロナショックで物価は上がるか下がるか|渡辺 努
|人が集まる街 逃げる街|大分県竹田市|牧野知弘
|クラシック音楽最新事情|作曲家たちが愛する春 美しき5月のメロディー|田中 泰
|話題の本|『タルピオット イスラエル式エリート養成プログラム』の著者 石倉洋子に聞く ほか
|「英語雑談力」入門|heighten|柴田真一
|経済クロスワード|コロナ危機と経済対策
|編集部から|
|読者の手紙 次号予告|