週刊東洋経済

情報量と分析力で定評のある総合経済誌

担当記者より
2020年5月16日号
2020年5月11日 発売
定価 730円(税込)
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【特集】AIを使いこなす人材になる

現在、コロナ禍の中で多くのビジネスパーソンが在宅勤務を余儀なくされています。営業のために頻繁に得意先を訪問することも、品質管理のために工場に多くの人材を配置することもできない時代に突入したといえるでしょう。

そこで役立つのがAI(人工知能)。例えば、蓄積されている顧客リストの中から成約の可能性が高い顧客を抽出する、画像認識によって良品と不良品を見分ける、といったことは、AIの得意分野。適切なシステムをつくることによって省力化、自動化が実現できます。

ポイントは、現場のことをわかっている人材がシステムづくりを担うべきだということ。専門家にアウトソースすればうまくいく、というものではないのです。本特集のチュートリアルに従ってパソコンを操作すれば、文系人材であっても、いくつかのAIを活用したアプリケーションを自作できるようになります。

AI研究の第一人者である松尾豊・東京大学大学院工学系研究科教授は「リモートワークで在宅勤務をしている今こそAIを学ぶチャンスだ」とアドバイスしています。今こそアフターコロナ時代に求められる最強スキルを体得し、「AIを使いこなす人材」を目指しましょう。

 

【巻頭リポート】「コロナ制圧戦」で善戦 韓国・台湾の舞台裏


相対的に感染が抑制されている韓国や台湾の対応が世界から称賛されています。迅速で広範囲な検査態勢、医療の専門知識を持った政治家の活躍など、SARS、MERSの苦い経験が生きました。日本が学ぶべき点も多々あります。

担当記者より

企業はリモートワークを余儀なくされ、さまざまな場面でデジタル化の必要性が指摘されることとなりました。システムがクラウド化されていないので社外からアクセスできない。契約書の押印が必要だったり、請求書が紙で会社に送られてきたりするので、出社しないといけない……。これまでなんとなく見過ごされてきた課題が、強く浮き彫りになっています。

「AI」という言葉が身近になるにつれ、多くの企業が「とりあえずAIで何かできないか」と考えるようになりましたが、実はその前にやるべきことはたくさんあるようです。日頃の業務がデジタル化されていなければ、情報はインクで印刷された紙や担当者の頭の中にしか残らず、データが貯まりません。データはAIの肝です。学習させるデータがなければ、スタート地点にも立てません。

社内にITがわかる人材がいない企業も少なくありません。それはシステム構築をベンダーに丸投げしてきた結果で、IT投資が増えても実は企業の生産性は上がっていないことが指摘されています。

「AIで何かできないか」──。こうした相談は、今回の特集でインタビューをした東京大学の松尾豊教授の元にも日々寄せられているそうです。でも、松尾教授は嘆いていました。「経営者も社員も勉強をしていないのがいちばんの問題。いまだに何の知識もないまま相談に訪れる方のなんと多いことか」。

実はアマゾンやグーグルのクラウドには、従量課金で気軽に試せるAIツールがいくつもあります。実際に触れて「ここにAIが使えそうだ」という勘所がわかれば、その先のプロジェクトもスムーズに立ち上がりそうです。在宅勤務で通勤時間がなくなった分、AIの勉強に充ててみるのはいかがでしょうか。松尾教授は「多くの人は業務が忙しくて勉強する時間がない」と言いますが、もうその言い訳は通用しません。

「日本のデジタルトランスフォーメーションはコロナによって進むだろう」。複数のIT企業の幹部は、口をそろえてこう話します。きっかけが何であれ、この流れを止める理由はもうどこにもありません。

担当記者:中川 雅博(なかがわ まさひろ)
東洋経済記者。神奈川県生まれ。東京外国語大学外国語学部英語専攻卒。在学中にアメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校に留学。2012年、東洋経済新報社入社。担当領域はIT・ネット、広告、スタートアップ。グーグルやアマゾン、マイクロソフトなど海外企業も取材。これまでの担当業界は航空、自動車、ロボット、工作機械など。長めの休暇が取れるたびに、友人が住む海外の国を旅するのが趣味。宇多田ヒカルの音楽をこよなく愛する。

>>週刊東洋経済編集部の制作にかける思い

週刊東洋経済とは

週刊東洋経済

『週刊東洋経済』は、変化する世の中を確かな視点で解明する総合ビジネス週刊誌です。

創刊は1895年(明治28年)、日本国内で最も歴史のある週刊雑誌でもあります。企業戦略から主要業界事情、国内外の政治経済はもちろん、近年はビジネス実用、テクノロジー、社会問題まで、経済の複雑化やビジネスパーソンの関心の広がりに対応し、幅広いテーマを取り上げています。

一方で創刊以来、一貫しているのはセンセーショナリズム(扇情主義)を排除し、ファクトにこだわる編集方針を堅持することです。「意思決定のための必読誌」を掲げ、今読むべき特集やレポートを満載し、価値ある情報を毎週発信しています。

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    企業や業界側の立場や事情に追従することなく、本誌記者は取材対象を客観的立場で分析・評価し、ときには忖度なく切り込む。

3つのポイント

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「健全なる経済社会を先導する」という創刊理念のもと、企業戦略やマクロ経済だけでなく、社会問題や海外情勢など幅広いテーマで特集を組み、中立的な立場で情報発信をしています。

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約3,900社の上場企業すべてに担当記者を配置。財務情報から海外進出情報など『会社四季報』ならではのデータベースから独自の切り口で深掘りし、分析した連載や特集を『週刊東洋経済』で展開しています。

目次

特集
AIを使いこなす人材になる

Part1 AIを操る
無料かつプログラミング不要 AIを自作してみよう
ソフトダウンロード不要 住宅価格を予測しよう
これだけは知っておこう AI活用への基礎知識
ディープラーニングの第一歩 画像認識に挑戦
「在宅の時間が増えた今が AIを学ぶ絶好の機会だ」松尾 豊

Part2 AI時代を生きる
つまずく前に押さえるべきツボ AIは「準備」が8割
「100本ノック」で鍛えよう 成功するAI企画作成術
AI先駆企業に学ぶ 現場への正しい導入方法
理系の弱点を巧みにカバー 現場で重宝される すごい文系AI人材
過度に慎重になる必要はない AIが持つ法的リスク
AI時代に強みを発揮 10年後に勝ち残る職業

巻頭リポート
「コロナ制圧戦」で善戦 韓国・台湾の舞台裏
「感染者ゼロ」と主張 北朝鮮の強力な防疫態勢は本物か

スペシャルリポート 
最新話を無料で大盤振る舞い 世界を狙う「ジャンプ」の勝算
電子書店型アプリにも参入した事情

ニュース最前線
「捺印のために出社」の愚 見直し必至のハンコ文化
外出自粛でゲーム需要急増 任天堂、ソニーの“悩み”
原油が先物で粗大ゴミ扱い 需要急減で底値は見えず


連載
|経済を見る眼|教育での対応も喫緊の課題だ|苅谷剛彦
|ニュースの核心|もしも、中銀発行デジタル通貨があったなら|野村明弘
|トップに直撃|東京電力エナジーパートナー 社長 秋本展秀
|フォーカス政治|国内政局の行方も左右する 米中の対コロナ政策論争|歳川隆雄
|グローバルアイ|コロナ対策に失敗したスウェーデン|ハンス・ベルイストローム
|INSIDE USA|コロナショックで意識変化 保守派も「大きな政府」に傾く|会田弘継
|中国動態|ポストコロナの覇権を争奪 激化する米中政治戦と日本|小原凡司
|財新|中国企業が最先端半導体の開発で躍進CATLが海外投資拡大へ資金調達準備
|マネー潮流|原油相場は炭鉱のカナリア|高井裕之
|少数異見|コロナで失われた元気を取り戻す方法
|ゴルフざんまい|自分の形を持つ 個性派ゴルファー求む|青木 功
|知の技法 出世の作法|新型コロナウイルス禍で 大学教育をどうすべきか|佐藤優
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|人が集まる街 逃げる街|静岡県沼津市|牧野知弘
|クラシック音楽最新事情|因習をぶち破る『運命』 新たな名盤誕生の予感|田中 泰
|話題の本|『ふくしま原発作業員日誌』の著者 片山夏子に聞く ほか
|「英語雑談力」入門|engage|柴田真一
|経済クロスワード|AI
|編集部から|
|読者の手紙 次号予告|

今後の発売スケジュール

  • 11/10(月) 週刊東洋経済 2025年11月15日号
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