週刊東洋経済

情報量と分析力で定評のある総合経済誌

担当記者より
2020年5月23日号
2020年5月18日 発売
定価 730円(税込)
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【特集】コロナ異常経済

今回の経済危機は欧米では「グレート・ロックダウン」と呼ばれるようになりました。邦訳すれば、「大封鎖」。新型コロナウイルスの感染拡大により、1930年代の「グレート・デプレッション(大恐慌)」を上回るような景気後退が始まっています。

そこで、米国、中国など主要国の経済見通しについて、ファクトを基に冷静に分析しました。また、日本経済の先行きについては、有力エコノミスト18人に緊急アンケートを実施。今年のGDP成長率、為替、株価の見通しをまとめました。

企業決算の先行きにも注目が集まります。赤字転落が相次ぐ国内主要16産業をズバリ診断。ビジネスパーソンが今知りたいことを漏れなく網羅した必読特集をお届けします。

 

【スペシャルリポート】苦戦するファミリーマート 「ブランド統合」の光と影


コンビニエンスストア業界2位の店舗数を持つファミリーマートは、この3月からフランチャイズ加盟店支援制度を順次拡充。複数店舗を経営する際の奨励金や24時間営業店向けの支援を強化しましたが、その狙いとは?

担当記者より

私の在宅勤務も1カ月を超え、ただでさえストレスフルな状態の中、新型コロナの取材を進めながらさらに気が滅入る毎日を送っています。

14日には39県の緊急事態宣言が解除され、特定警戒を維持した東京都も感染者数は減っています。国内は経済活動の全面再開を待ちわびる雰囲気になりつつありますが、でも、このやっかいな感染症は、緩めれば再び広がる可能性が高い。有効なワクチンが実用化されてみんなが予防接種できる状況にならない限り、生活を元に戻せば、第2波、第3波の流行はやってくるのです。

私は経済記者ですが、最近は医療や疫学の専門家に取材したり、論文を読んだりする機会が増えました。感染状況の先行きについて自分の中でロジカルなイメージを持つことができなければ、経済政策や財政政策の先行きについての記事も書けないと感じているからです。もちろん、そのイメージが100%正しいわけではないのですが、それでもベースとなる仮説は必要です。

つい比較してしまうのは12年前のリーマンショック。先行きがいくら予測不能とはいえ、そのメカニズムは経済学の分野で十分に説明ができたし、仮説も立てることができました。今回の難しさは、あの時の国際協調による金融財政政策といった出口への解があるわけではないということ。終わりが見えないのです。

ただでさえ、日本の財政は大赤字です。それでも国民の生命の危機は、日本銀行が通貨発行を増やして、事実上国の借金を引き受けることになっても救わなければならない。1人当たり10万円の給付は、約12兆円の支出を伴います。これは公的年金の年間支出の実に1/4にも上る大きな額だということをみなさんはご存知ですか。日本のGDPはどこまで落ち込むのでしょうか。これから一人ひとりが新しい生活スタイルを実践しながら、感染拡大防止と経済活動の両立を模索する時期になります。

これからは新しい生活スタイルに加え、「新しい制度への作り替え」にまつわる課題が次々と浮上してくるでしょう。オンライン診療の全面解禁、9月入学、申請・給付のオンライン化などもその一例ですが、これらをめぐって有識者がさまざまな主張を繰り広げる光景がそこかしこで見られるようになるはずです。コロナ危機に煽られて拙速な制度変更になることも禁物です。読者のみなさんが自分なりの考えでじっくり見極められるよう、週刊東洋経済がその一助となれば幸いです。

担当記者:野村 明弘(のむら あきひろ)
東洋経済解説部コラムニスト。編集局解説部長。日本経済や財政・年金・社会保障、金融政策を中心に担当。業界担当記者としては、通信・ITや自動車、金融などの担当を歴任。経済学や道徳哲学の勉強が好きで、イギリスのケンブリッジ経済学派を中心に古典を読みあさってきた。『週刊東洋経済』編集部時代には「行動経済学」「不確実性の経済学」「ピケティ完全理解」などの特集を執筆した。

>>週刊東洋経済編集部の制作にかける思い

目次

特集
コロナ異常経済

第1部 経済大撃沈
コロナ禍の世界経済

[INTERVIEW]コロナ後の経済はこうなる
「中銀の役割は物価安定から財政支援へ移行」 BNPパリバ証券チーフエコノミスト 河野龍太郎
「不安が常態化 米中以外の国と関係強化を」慶応大学法学部教授 細谷雄一

[日本]エコノミスト18人緊急アンケート 低成長、デフレに逆戻りも
 ドル円相場 経済ショックでも意外に安定?
[米国]3兆ドル財政出動でも限界露呈 経済再建阻む雇用崩壊
[中国]生産再開は進むが外需下振れリスク 遠ざかるV字回復の期待
[欧州]EU分裂の危機再燃 イタリア問題が焦点
[原油]協調減産開始でも、膨大な需給ギャップ サウジ、ロシア経済に打撃

[INTERVIEW]「焦点は資金繰り支援 銀行は真価を発揮せよ」金融庁長官 遠藤俊英

第2部 震える決算
主要16業種の激震度


[INTERVIEW]核心を聞く
「工場が武器になる 日本企業には好機」マネックスグループCEO 松本 大
「業界の垣根を越え 勝ち組が手を組む」フロンティア・マネジメント 代表取締役 松岡真宏

[ホテル・商業施設]テナント賃料減額が相次ぐ 不動産オーナーの苦境
[航空]海外で相次ぐ経営破綻 大手2社の資金繰りは大丈夫か
[鉄道」移動制限で乗車率が急落 新幹線が主力のJR東海に痛手
[自動車]体力消耗戦に突入 日産 再建暗礁で窮地
[電子部品]期待の5G需要にも暗雲 車載向けへのシフトが裏目に
[IT・ネット]アプリやECの需要は拡大 ネット広告の減少が懸念材料
[通信]時短営業で端末販売減少 通信収入が堅調で増益へ
[スーパー]外出自粛が追い風に 低迷を抜け出し日用品が伸びる
[鉄鋼]自動車・建設向けの需要が急減 高炉が続々止まる異常事態
[建設]相次ぐ現場の閉所 大手で分かれる工事中断
[商社]原油価格の急落でダメージ 資源への依存度で明暗
[生保]職員23万人が営業を自粛 「対面営業」に迫る構造転換
[銀行]資金需要はリーマン超え 融資増え引当金の負担増
[証券]コロナ相場で売買は活発 手数料無料化へ戦々恐々
[食品・飲料]売れ行き好調で品不足も 巣ごもりで即食・宅飲みブーム
[医薬品]治療薬・ワクチンの開発が急ピッチ 「レムデシビル」の次はどこだ

[INTERVIEW]「背中を押される形で ITの活用が加速する」IIJ会長 鈴木幸一

スペシャルリポート 
苦戦するファミリーマート 「ブランド統合」の光と影
セブン、ローソンも対応急ぐ フランチャイズ優等生の曲がり角

ニュース最前線
コロナ新薬で異例の承認 医療機関の期待と不安
アパレルの「ゾゾ頼み」再燃 ZOZOが悩む複雑な事情
原油価格連動の金融商品 危険な一発退場「即死条項」


連載
|経済を見る眼|大学入試を見直す絶好の機会|柳川範之
|ニュースの核心|「ポスト在宅勤務」は遠隔移民との競争|西村豪太
|トップに直撃|シークス 社長 柳瀬晃治
|フォーカス政治|統治能力を失った安倍政権 与野党超えて国難対処を|山口二郎
|グローバルアイ|「コロナ恐慌で株高」の不思議|ジム・オニール
|INSIDE USA|新型コロナ禍でも止まらない 米スタートアップの新陳代謝|瀧口範子
|中国動態|感染対策と経済復旧を両立 アフターコロナ模索の中国|伊藤亜聖
|財新|中国新興EV、テスラの追及に猛反発中国証券監督当局がIPO不正厳罰化
|マネー潮流|金融システム不安の封じ込め|中空麻奈
|少数異見|いつか見た光景 なぜ検査を先送りした
|知の技法 出世の作法|「対日戦勝記念日」変更で ロシアは何を考えているのか|佐藤 優
|経済学者が読み解く 現代社会のリアル|CEOと事業部長の利害対立 どうすれば解消できるか|定兼 仁
|人が集まる街 逃げる街|千葉県鴨川市|牧野知弘
|クラシック音楽最新事情|ショパンコンクール 前回の覇者が語った思い|田中 泰
|話題の本|『〈嘘〉の政治史』の著者 五百旗頭 薫に聞く ほか
|「英語雑談力」入門|declutter|柴田真一
|経済クロスワード|コロナ危機と企業業績
|編集部から|
|読者の手紙 次号予告|

訂正情報

「週刊東洋経済2020年5月23日号」(5月18日発売)に、以下の間違いがありました。訂正してお詫び致します。
 
18ページ ■ファミリーマートの記事の写真キャプションのうち下線部を訂正します。

【誤】2018年11月、ブランド転換した愛知県一宮市の店舗前であいさつするファミリーマートの澤田貴司社長。同社はこの店舗でブランド統一を完了した

【正】2018年11月、ブランド転換した愛知県一宮市の店舗前であいさつするファミリーマートの澤田貴司社長。同社は同月にブランド統一を完了した