週刊東洋経済

情報量と分析力で定評のある総合経済誌

担当記者より
2020年5月30日号
2020年5月25日 発売
定価 730円(税込)
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【特集】大学 シン・序列

コロナショックを受けて、大学をめぐる環境は急変。授業のオンライン化、学生の経済的困窮など、課題が山積しています。このショックを乗り越えて、隆々と輝く大学はどこなのでしょうか。

最高学府の未来を占う本特集では、独自ランキングを数多く掲載。教育・研究力、就職力、国際力、財務力の4分野におけるトップ70大学ランキングをお届けします。有力21大学への合格者数を掲載した「強い高校ランキング」も見逃せません。

インタビューとしては、東京大学、早稲田大学、東北大学、関西学院大学、昭和女子大学など多彩な大学のトップが登場。大学関係者、受験生をもつ親御さん、企業の採用担当者にとって、必読の50ページ特集です。
 

【スペシャルリポート】「賃料補助」は焼け石に水 飲食店を追い込む“遅い政治”


多くの飲食店経営者が自粛要請に応じています。政治に求められるのは救済プランの素早い策定ですが、与野党案が固まったのは5月8日。せめて第1次補正予算に盛り込まれていれば──。永田町の主導権争いが、立場の弱い人たちを苦しめています。

担当記者より

緊急事態宣言が発令されてから、当社では感染予防の観点から、対面での取材活動が原則禁止となりました。今回の大学特集も、すべての取材をオンラインや電話でこなすことに。当初はどうなることやら、と暗澹たる気持ちになったリモート取材活動でしたが、半月もすれば私も相手側もだんだんと慣れてきて、無事に取材を完了させることができました。

それでもやっぱり、対面での取材、現場に足を運んでの取材はなにものにも代え難いものがあります。頭の固いことをいうようですが、その場を共有してはじめて、相手との間合いを感じながら切り返したり、突っ込んだりできるものなのだと思います。オンライン取材の録音をあとで聞き返すと、特に複数人が同席した取材では発言者以外はミュートにしているので、タイミングがうまくつかめず「もっとここで突っ込んで聞けばよかった」など反省することもしばしばありました。

さて、今回の特集では、コロナで大学が閉まり、オンライン授業の導入を余儀なくされた大学の現場も取材しました。東京大学が4月上旬からすべての授業をオンライン化したのに続き、立教大学が4月末から、早稲田大学も5月11日からと、さまざまな大学が続々と決断しました。

大学側の発表した文書を読むと、万全の体制でオンライン体制に移行できるかのごとく書かれています。ただ実際の現場はどうかというと、やはりドタバタ劇が繰り広げられていたもようです。そもそも、大学がオンライン化したといっても実は学生たちのIT環境は整っていません。立教大学の経営学部が4月14日時点で行ったアンケートでは、1年生の約20%は「自分専用のPCがない」とのこと。Wi-Fiも格安のプランを契約している学生が多いのでしょう。授業を3コマ程度受けたところで、利用可能なデータ容量の上限を超え、通信制限がかかってしまったという声も聞かれました。

また、すべての教授が高度なITリテラシーを備えているわけではありません。メールで課題を出し、課題を出せば授業を履修したとみなす教授、学生のプレゼン資料をネット上にアップロードさせ、議論は文面で行う、という方式を採る教授などもいる模様。必ずしも対面にかわるインタラクティブな授業を実施しているわけではなさそうです。

ただ、オンラインでの授業を実施している教授からは「普段の授業では滅多に発言しない学生が、チャットだと積極的に発言しており、実は色々なことを考えていたことがわかった」という話もあり、新しい学びの可能性を感じる一面もありました。

新型ウイルスとの共存を強いられるニューノーマルの時代、私たちの取材活動や大学の授業だけでなく、さまざまな場面でオンライン化が進みますが、現在のドタバタの中においても少しずつ新しい価値を見出すことが求められるのかもしれません。ひとまず私は引き続き、「自宅オフィス」の環境を整え、リモート取材術の研鑽を積みたいと思います。

担当記者:印南 志帆(いんなみ しほ)
東洋経済記者。早稲田大学大学院卒業後、東洋経済新報社に入社。日用品、化粧品、百貨店などの流通・小売業界の担当記者、東洋経済オンライン編集部、電機業界の担当を経て、現在は『週刊東洋経済』編集部兼ゲーム業界記者。平安時代の歴史が好き。

>>週刊東洋経済編集部の制作にかける思い

目次

特集
変わる名門校の条件 大学 シン・序列
大学 シン・序列を生み出した4つの波

バイト消滅で学生が困窮 格差広げるコロナショック
「AI時代の大学は激変する まずは数学嫌いの克服を」 安宅和人

PART1 変わるトップ大
東大&早稲田 包括協定へ東大がラブコール 国私トップが異色タッグ
「大学から社会を変えていく 早稲田の“実行力”が必要だ」 東京大学 総長 五神 真
「日本はデジタル化で周回遅れ 東大と組んで飛躍させられる」 早稲田大学 総長 田中愛治
東北大 大学ランキングで初トップ  手厚い指導で「科学者」育成
「第一志望の学生に来てほしい AO増やし“やる気”を問う」 東北大学 総長 大野英男
京大 求む!野性的で賢い学生 世界から異能を取り込め
慶応大 SFCはAO募集定員を100人増 陸の王者の入学試験に変化
国公立 個性的な学部が続々と誕生 学問の垣根を越えた新機軸

[独自評価]「教育・研究力」「就職力」「財務力」「国際力」でみる 名門大学 シン・序列

PART2 有力私立大の現在地
関東 偏差値がジワジワ上昇  3つのトレンドで大変貌
「研究者の真の国際化を後押し データ教育にも力を入れる」 東京理科大学 学長 松本洋一郎
関西 教養のアップやリーダー育成に本腰 新学部で試される改革力
「三田キャンパスの学部を再編 文理横断型にしていきたい」 関西学院大学 学長 村田 治
個性派 独自路線で存在感 とがった教育で奇才が育つ
「半数の卒業生を難関大の院へ」 大和大学 学長 田野瀬良太郎
女子大 強みを発揮し高い就職率を実現 グローバルレベルに挑む
「女子大ならではの強みがある」 昭和女子大学 理事長・総長 坂東眞理子
海外大 日本の大学を引き離す 海外トップ大の魅力と実力
コロナ感染の集計で注目 ジョンズ・ホプキンス大とは?

分野別で見る 名門大学の研究力序列

PART3 受験に強い高校
2020年最新合格データ 有力大に強い高校はここだ

スペシャルリポート 
「賃料補助」は焼け石に水 飲食店を追い込む“遅い政治”
「家賃補助は6月分から対応 資本注入策も検討していく」自民党政調会長代理 田村憲久

ニュース最前線
先陣切った米国の生産再開 透けるトヨタの“深謀遠慮”
延期か、それとも継続会か コロナで変わる株主総会
居抜きの利用や間借りも 始まるオフィスの再定義


連載
|経済を見る眼|コロナデータの報道に異論あり|小峰隆夫
|ニュースの核心|不安が広がると怖い提案が出てくる|大崎明子
|フォーカス政治|側近主導政治で進行する 安倍政権の意思決定の劣化|千田景明
|グローバルアイ|コロナで深刻化する途上国の飢餓|トニー・ブレア/アグネス・カリバタ
|INSIDE USA|コロナで過熱する米中対立 日本の舵取りは一段と困難に|ジェームズ・ショフ
|中国動態|国際的評判より内政の安定 強硬化する中国の対米外交|益尾知佐子
|財新|中国 新車販売台数 プラス転換の背景中国に迫る「コロナデフレ」の気配
|マネー潮流|ポストコロナの財政規律と市場機能|森田長太郎
|少数異見|元に戻りたい国ともう戻れない国々
|トップに直撃|radiko 社長 青木貴博
|知の技法 出世の作法|1973年の極秘文書で 現れた日ソ首脳会談の亡霊|佐藤 優
|経済学者が読み解く 現代社会のリアル|農業での国際市場参入 途上国の貧困改善に効果|黒石悠介
|人が集まる街 逃げる街|岩手県花巻市|牧野知弘
|クラシック音楽最新事情|クラシックの新約聖書 珠玉のピアノソナタ|田中 泰
|話題の本|『フィンランド人はなぜ午後4時に仕事が終わるのか』の著者 堀内都喜子に聞く ほか
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