【特集】テレワーク総点検
緊急事態宣言下では、多くのビジネスパーソンが「非接触」「非対面」での業務推進を余儀なくされました。緊急事態宣言解除後の今、問われているのは、新型コロナウイルスと共存する経済活動です。西村康稔・経済再生担当相は、解除後の企業活動について、「テレワークできる部分はテレワーク。解除されたからといって、すぐに会社に戻らないでほしい」と訴えています。
ただし、職種や業種によって、事情は大きく違います。職種別では、企画系やITエンジニアなどデスクワーク中心の人は在宅勤務しやすかった一方、建設や製造、医療などの「現場」で働く人は対応しきれていません。業種別で見ると、先行したのはデジタル環境に親しむIT・ネット業界。一方で「現場」を持っている業種は、対応が進んでいません。
本特集では業種、職種による「働き方格差」を総点検。さらに、ハンコ文化、株主総会、人事評価、就職活動・・・など、浮かび上がったさまざまな課題を検証します。そのほか、先進的なITツールやビデオ会議で上手にコミュニケーションをするコツなどをたっぷり紹介。この特集を読んで、「テレワークの達人」を目指しましょう。
【スペシャルリポート】老舗「レナウン」が経営破綻 アパレル淘汰・再編の序章
名門アパレルのレナウンが民事再生の手続きに入りました。親会社「山東如意」が再建に見切りをつけ、新たなスポンサー探しは難航が予想されます。ほかのアパレルも店舗閉鎖や売り場撤退が予定され、百貨店に多大な影響が出そうです。
担当記者より
最後に出社した日からまもなく2カ月。私自身もテレワークをしながら作った「テレワーク特集」です。当初は、オンラインでの取材や打ち合わせに戸惑うこともありましたが、移動時間がなくなった分、取材の数をこなせたり、日頃は多忙でアポもとれない経営者のインタビューが入ったりと、メリットもたくさん感じるようになりました。
そんな中、何人かの「達人」に教えてもらったのは、テレワークを効率よく円滑に進めるためのコツ。PC周辺機器や家具を充実させるというより、本当にちょっとしたコミュニケーションの工夫が、私の日々の作業のうえでも「なるほど!」と実感できるものばかり。まさに「極意」でした。
たとえば「チャットで3往復するならビデオに切り替えたほうが早い」。その通りです。テキストを打って送った後、相手がそれを読み、返信が届くまでの時間は、意識すればするほど長く無駄な時間に思えてきます。また、テキストにすると、どことなくかた苦しくなったり、ニュアンスが伝わりにくかったりするもの。ビデオを使うハードルを下げるとこうした問題を解決できそうです。
「雑音を歓迎する。管理職である自分が率先してビデオ会議に子どもを登場させる」と教えてくれた人もいました。在宅の仕事環境は人それぞれ。「うるさくして悪いな」という不安から解消されれば、確かにコミュニケーションはしやすくなります。
さらには「発言機会のなさそうな大きな会議は、音声だけ聞きながら散歩に出かける」という「極意」も。私も、朝から晩まで予定をぎっしり詰めてしまい、終日パソコンの前に座ったままということがよくあります。誰も息抜きを促してくれない在宅環境だからこそ、時には気分を変え、メリハリをつけることは重要かもしれません。
こんな具合で、取材を通してたくさんのコツを知ることができ、日々の仕事はほとんどテレワークでこなせるとわかったのですが、実は誰に聞いてもなお、よい解決策がみつからなかったことが2つだけありました。
一つは、いつもと異なるチームでまったく新しい仕事にチャレンジすること。日頃やり取りしていない人たちとのコラボなど、体制を変えて新しい取り組みを行うときは、やはりテレワークだと難しいものがあります。
そしてもう一つは、OJTなどを通じて新人を育てること。新入社員を早く戦力化したいのに、自分が仕事をしている様子を見せるにも限界があります。アポイントの行き帰り、電車の中で交わした何気ない会話で先輩から学んだことがたくさんあります。今、後輩にそういう機会をなかなか作れていない私自身含め、もどかしい思いを抱いている人は多いのではないでしょうか。
「新しい生活様式」の中でもテレワークが推奨される日々は続きそうです。特集が終わってもまだまだ「極意」を探っていきたいと思っています。
担当記者:長瀧 菜摘(ながたき なつみ)
東洋経済記者。1989年生まれ。兵庫県神戸市出身。中央大学総合政策学部卒。2011年の入社以来、記者として化粧品・トイレタリー、ドラッグストア、軽自動車、建設機械、楽器などの業界を担当。2014年8月から東洋経済オンライン編集部、2016年10月に記者部門に戻り、以降IT・ネット業界を担当。アマゾン、フェイスブック、楽天、LINE、メルカリなど、国内外の注目企業を幅広く取材。ネギ料理の食べ歩きが趣味。
>>週刊東洋経済編集部の制作にかける思い