週刊東洋経済

情報量と分析力で定評のある総合経済誌

担当記者より
2020年7月4日号
2020年6月30日 発売
定価 730円(税込)
JAN:4910201310708

【第1特集】激震!不動産

【第2特集】会社四季報最新号が見抜く コロナ禍に強い会社

今号は2大特集。第1特集は「激震!不動産」。コロナショックの直撃で荒れ模様の天気になっているのは、ホテルや大都市に立地する商業施設。それに対し、郊外の商業施設や物流施設は空前の需要増に沸いています。一方で先行きが不透明なのがオフィスビルやマンション。不動産業界における明と暗。揺れ動く不動産マーケットの最前線に肉薄します。不動産・ゼネコン・金融関係者だけでなく、投資家にも必読の特集です。

投資家必読ということでは、もう1つの特集にも注目。第2特集は「会社四季報最新号が見抜く コロナ禍に強い会社」です。逆境下でも好業績を維持している企業はどこか?独自予想による好調企業ランキングをお届けします。
 

【スペシャルリポート】なぜ取締役会に出席しない? 会社側の苦しい「言い訳」


役員会に出席せず改善の兆しがない取締役は、機関投資家や議決権行使助言会社から厳しい目を向けられています。株主総会招集通知から、取締役・社外監査役の取締役会出席率を独自集計し、欠席の多い人のランキングを作成しました。安易な選任の実態は?

担当記者より

今からちょうど1年前、オフィスビルの特集を担当しました。都心では超高層ビルが続々と立ち上がり、当時はまさに活況。テナント企業の側でも堅調な企業業績を背景に、こうした新しいビルに移転したり、散らばっていた拠点を1棟に集約したりといった動きが広がりました。

ここ数年の不動産業界では「イノベーション」が流行語。従業員同士や他業界の人々と交流し、新しい発想を生み出す。そのためビルのワンフロアにたくさんの人を集め、間仕切りを取っ払って互いに声をかけやすくする。不特定多数の人が出入りするシェアオフィスやコワーキングスペースも、こうした文脈の中で開発されていきました。

今年3月上旬には、マンションの特集を担当しました。価格高騰の続くマンションは、共働き夫婦が購買層の中心です。仕事や子育てに忙しい彼らにとっては、利便性が重要。広さや設備グレードを犠牲にしてでも、駅から近くて都心に出やすい場所でのマンションの供給が盛んになりました。

そんな不動産業界の常識を、コロナ禍は大きく揺さぶっています。他人とは接触せず、仕事も在宅――。アフターコロナでは、従来通りの不動産開発がどこまで通用するのか。不動産各社は未だ答えを見出せていません。

感染リスクを抑えたオフィスや商業施設、在宅勤務に対応した住宅などはいずれ開発されるでしょう。ただ、私が気がかりなのは、アフターコロナに対応した不動産が開発された頃には、社会はすでに「アフターコロナ」へと進んでいるのではないか、という点です。

それを象徴するのが、IT企業の集結する渋谷。2012年の渋谷ヒカリエを皮切りに、続々と超高層ビルが立ち、ようやくオフィス街としての顔を備えてきた矢先、コロナに襲われました。立ち尽くすオフィスビルを尻目に、IT企業は次々とリモートワークに移行していきます。足の長い不動産開発は、いつも後手に回ります。

コロナ禍は、不動産業に対してビジネスモデルの転換を突き付けているのかもしれません。投資額の大きい不動産開発には失敗が許されず、確実に売れる・貸せるものを作る誘因が働きます。そうした「安パイ」に頼れないことが証明された今、不動産業界自らが新しい働き方や住み方を世に問う物件を開発し、潮流を生み出していくことが必要になっていくのでしょう。

「正直、アフターコロナの不動産のあり方について考えられる状況ではない」。5月、ある不動産会社の方がこう言っていました。実は私自身も、今回の特集ではコロナに揺れる業界の模様が中心となり、正直なところアフターコロナの不動産像を描くには至りませんでした。緊急事態宣言解除から1カ月が過ぎた今、腰を据えて次の不動産業を議論していきたいと思います。

担当記者:一井 純(いちい じゅん)
東洋経済記者。不動産業界担当。ビル、マンション、商業施設、物流施設、証券化、再開発など。趣味は写真と業務スーパー訪問。

>>週刊東洋経済編集部の制作にかける思い

週刊東洋経済とは

週刊東洋経済

『週刊東洋経済』は、変化する世の中を確かな視点で解明する総合ビジネス週刊誌です。

創刊は1895年(明治28年)、日本国内で最も歴史のある週刊雑誌でもあります。企業戦略から主要業界事情、国内外の政治経済はもちろん、近年はビジネス実用、テクノロジー、社会問題まで、経済の複雑化やビジネスパーソンの関心の広がりに対応し、幅広いテーマを取り上げています。

一方で創刊以来、一貫しているのはセンセーショナリズム(扇情主義)を排除し、ファクトにこだわる編集方針を堅持することです。「意思決定のための必読誌」を掲げ、今読むべき特集やレポートを満載し、価値ある情報を毎週発信しています。

週刊東洋経済の編集方針

  1. 取材力
    当社に所属する約100人の経済専門記者が主要業界、全上場企業をカバー。国内外の経済や業界、企業などを深堀りし、他には読めない記事を提供。
  2. 分析力
    複雑な情報やビジネス慣習、制度変化などを分析し、的確に整理。表層的事象をなぞるのではなく、経済や社会の底流で起きている構造を読み解く
  3. 中立性
    企業や業界側の立場や事情に追従することなく、本誌記者は取材対象を客観的立場で分析・評価し、ときには忖度なく切り込む。

3つのポイント

視野が広がる幅広いテーマ
「健全なる経済社会を先導する」という創刊理念のもと、企業戦略やマクロ経済だけでなく、社会問題や海外情勢など幅広いテーマで特集を組み、中立的な立場で情報発信をしています。

図解や表でわかりやすく
ビジネス誌の中で随一の規模を誇る約100人の記者集団が、「経済から社会を読み解く」スタンスで徹底取材。旬な情報を図解や表にまとめて、わかりやすく解説します。

『会社四季報』の独自データで深掘り
約3,900社の上場企業すべてに担当記者を配置。財務情報から海外進出情報など『会社四季報』ならではのデータベースから独自の切り口で深掘りし、分析した連載や特集を『週刊東洋経済』で展開しています。

目次

第1特集
激震!不動産

コロナに翻弄される不動産

[INTERVIEW]アフターコロナの針路
オリックス銀行 取締役会長 浦田晴之

Part1 荒れる不動産市場
営業再開後も続く受難 正念場の宿泊・商業施設
疑義注記が付いたTHEグローバル社 新興ホテルが陥った危機
テナントが続々撤退 銀座一等地の異変
 在宅勤務で縮小か、拠点分散で増床か オフィスの勝ち組・負け組
社会的距離を保つと席数が減少 ウィーワーク、コロナのジレンマ

[INTERVIEW]アフターコロナの針路
東京建物 取締役常務執行役員 小澤克人

ネット通販の拡大で新設・拡充が続く 大型物流施設の冷めない熱狂
リーマンショックの「生存者」が語る コロナ禍のしのぎ方
地銀「投げ売り」の波紋 REIT暴落後の二極化
「ミドルリスク」はどこへ REITが遺したホテル投資の教訓

Part2 価値激変の住宅
途絶えた価格の上昇気流 凍結状態のマンション市場
在宅勤務が住宅購入を後押し 低価格の戸建てが人気に

[INTERVIEW]アフターコロナの針路
プライム ライフ テクノロジーズ 社長 北野 亮
 
リモート接客で売り方改革 住宅設備の新常態

[INTERVIEW]アフターコロナの針路
LIXILグループ CEO 瀬戸欣哉

不動産・ゼネコン 経営危険度ランキング

Part3 ゼネコンの多難
絶好調からついに踊り場へ 工事中断の先に待つ深淵

[INTERVIEW] 前田建設工業 取締役専務執行役員 岐部一誠
「“脱請負”で建設業界にルールチェンジを起こす」

[INTERVIEW] 大林組 社長 蓮輪賢治
「建築・土木を本業と呼ぶな 多様な収益源で成長する」

コロナ禍で技術開発が加速 施工自動化の未来と現実
談合摘発後の外部調査はわずか 独善性抜けないゼネコン

[INTERVIEW] 建築家 隈 研吾
「大箱の超高層都市は終わり 自然との一体型へ変わる」

第2特集
『会社四季報』最新号が見抜く コロナ禍に強い会社

コロナ不況に負けない 最高益更新率ランキング
成長が持続する 5期連続経常増益ランキング
予想非開示企業を徹底分析 主要29社の独自業績予想

スペシャルリポート
なぜ取締役会に出席しない? 会社側の苦しい「言い訳」
 
ニュース最前線
北朝鮮が連絡事務所爆破 対韓強硬措置を取った背景
主力端末で電波法違反か 楽天モバイルの危うさ
大手損保4社そろって減収 対面営業にコロナ後も暗雲


連載
|経済を見る眼|対面会議が優れる3つの領域|延岡健太郎
|ニュースの核心|エッセンシャルワーカーの賃金増は可能か野村明弘
|トップに直撃|GPIF 理事長 宮園雅敬
|フォーカス政治|「政党連合」結成から 年 長すぎる自公の歪んだ関係|千田景明
|グローバルアイ|コロナ後を左右するネットの安全アレクサンダー・クリムバーグ/マイケル・チャートフ、ラサ・レディ
|INSIDE USA|合言葉は「われわれ対やつら」 抗議デモと大統領の品格|ジェームズ・ショフ
|中国動態|国境紛争で矛盾が明らかに インドも対中牽制に傾くか|益尾知佐子
|財新|スマホ大手「オッポ 」半導体を独自開発英アームの中国合弁トップが突如解任
|マネー潮流|MMTによる「財政バブル」の監視を|森田長太郎
|少数異見|コロナ禍が示した地方自治の重要性
|知の技法 出世の作法|イージス・アショア配備停止と 沖縄辺野古基地の行方|佐藤 優
|経済学者が読み解く 現代社会のリアル|若者の年金負担解消 高齢労働者が希望の光?|小寺寛彰
|人が集まる街 逃げる街|神奈川県 小田原市|牧野知弘
|クラシック音楽最新事情|エンタメ復活の兆し 模索始まる新しい演奏会|田中 泰
|話題の本|『音楽でメシが食えるか?』の著者 富澤一誠に聞く ほか
|「英語雑談力」入門|shed light on ~|柴田真一
|経済クロスワード|不動産
|編集部から|
|読者の手紙 次号予告|

今後の発売スケジュール

  • 11/10(月) 週刊東洋経済 2025年11月15日号