週刊東洋経済

情報量と分析力で定評のある総合経済誌

担当記者より
2020年7月11日号
2020年7月6日 発売
定価 730円(税込)
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【特集】銀行 地殻変動

土砂降りの長雨のように経済活動に打撃を与えているのが、新型コロナウイルス。多くの企業や個人が資金繰りの不安にさらされています。そうした中で、積極的に「傘を差し出す=融資をする」ことで、大きな役割を果たしているのが銀行です。

しかし、銀行の現場は、利益度外視で傘を貸しているわけではありません。政府からの利子補給があり、ビジネスとして立派に成り立つからこそ、蛇口を全開にしているのです。

湯水のように融資を拡大すると何が起こるか。言うまでもなく融資先には事業継続が難しい「問題企業」も含まれています。そうした大口融資先に貸し込み続ければ、不良債権の増大によって経営の屋台骨を揺るがしかねない──。1990年代から2000年代初頭のバブル処理を経験している銀行マンには、そんな不安が頭をよぎります。

アフターコロナに向けて何が起こるのか。激動の中にある銀行の近未来を占う総力特集をお届けします。
 

【スペシャルリポート】自動車「コロナ不況」が促す 部品業界サバイバルの行方


コロナ危機の自動車部品メーカーへの影響は、過剰な設備と人員を抱えていた日産系でとくに深刻。比較的堅調だったトヨタ、ホンダ系も無傷ではありません。世界レベルでの技術開発競争は激化の一途で、生き残りへの再編と淘汰が始まろうとしています。

担当記者より

「晴れた日に傘を貸し、雨が降ると傘を取り上げる」といわれる銀行ですが、このコロナ禍で初めて雨の日に傘を貸し始めました。私はこれまでも長く金融業界の取材を続けてきましたが、今回ある銀行マンに「これまで叩かれるばかりだった銀行が、初めて感謝されているんじゃないか?」と冗談めかして言うと、彼も笑っていました。

バブル崩壊後、債券回収や不良債権の処理に追われ、ほとんど「貸す」業務に就いたことがなかった銀行マンたち。入行10~15年目くらいまでの若手は、口座開設のやり方も知らないという話もあながち嘘ではないのかもしれません。 

ある大手地銀の店頭には、これまでまったく取引をしたことがないような小口の事業者までもが融資を申し込もうと殺到しました。地元ではいわばエリートともいえる行員は、まさか自分が駅前の小さなスナックにまで出向いて融資相談を受けるなんて、考えたこともなかったことでしょう。

新型コロナによって銀行員の仕事が変わったという点では、窓口でも興味深い現象が見られました。緊急事態宣言下で、平日日中の時間をもてあましたサラリーマンたちが、記念コインの交換や通帳記帳などといった不要不急の用事で続々と訪れたのです。そんな人たちの対応に忙しくなるというのも、想定外だったかもしれません。

今回の特集では、そんな悲喜こもごもに触れながら、コロナ禍で変貌した銀行の姿を追いました。アフターコロナに向け、はたして銀行は日本経済の復活に貢献することができるのか。ぜひお読みください。

担当記者:田島 靖久(たじま やすひさ) 
大学卒業後、放送局に入社。記者として事件・事故を担当後、出版社に入社。経済誌で流通、商社、銀行、不動産などを担当する傍ら特集制作に携わる。2019年10月から現職。

>>週刊東洋経済編集部の制作にかける思い

目次

特集
銀行 地殻変動

銀行の企業救済でくすぶる時限爆弾

Part1  コロナがもたらす銀行の変貌
無利子無担保で積極融資 初めて傘貸す銀行の本気
融資合戦の陰で進む 「メインバンク」争奪戦
地元に根を張る中小・零細企業を救え 信金・信組の飽くなき挑戦
資本性ローン提供に加え、商社の役割も 地元企業を支える地銀の覚悟
 [INTERVIEW] 横浜銀行頭取 大矢恭好/山口フィナンシャルグループ会長 吉村 猛
苦しい事業者に付け込む 増殖する新型「ヤミ金」
 [INTERVIEW] 三菱UFJ銀行頭取 全国銀行協会会長 三毛兼承

Part2 メガにも押し寄せる地殻変動
大企業から資金要請殺到 問われるメガ銀行の手腕
店舗とATMの削減が加速 進む銀行のデジタルシフト
三菱UFJを初めて抜いた 三井住友 首位獲得の真相
 [INTERVIEW] メガバンクトップに聞く
 三井住友フィナンシャルグループ 社長 太田 純/みずほフィナンシャルグループ 社長 坂井辰史
政府出資は時限的が理想 「企業再生」 成功への道筋

Part3 アフターコロナに待ち受ける時限爆弾
融資膨張の先に待つ 「不良債権地獄」の恐怖
独自試算 最新決算で浮き彫りに 「危ない地銀」ランキング
小売り・サービスに多額融資 コロナ衝撃度ランキング
全上場銀行業績を予測 会社四季報 銀行版
強豪も動き始める コロナで地銀再編に号砲
金融庁が“宗旨変え”で接近 SBIは地銀の救世主か
[INTERVIEW] SBIホールディングス社長 北尾吉孝

銀行は本当に変われるか

スペシャルリポート
自動車「コロナ不況」が促す 部品業界サバイバルの行方
CASE対応で先行する欧州部品大手

ニュース最前線
100億円の寄付を即決 ユニクロ柳井会長の危機感
ディズニーリゾートが再開 残る課題は「収益多角化」
自動車の世界需要激減で 化学・繊維業界に余波


連載
|経済を見る眼|ビッグデータ不在の教育行政|苅谷剛彦
|ニュースの核心|「中国化」で生き延びる香港の金融市場西村豪太
|トップに直撃|SMBC日興証券 社長 近藤雄一郎
|フォーカス政治|対コロナ戦略に不可欠な 「忖度」しない行政の構想力|牧原 出
|グローバルアイ|世界は第1次大戦以来の岐路にあるベルトラン・バドレ/イーブス・ティバージェン
|INSIDE USA|学校の先生が大量にリストラ コロナが襲う財政難の矛盾|安井明彦
|中国動態|米国政治に翻弄される中国 経済開放のアピールも限界|富坂 聰
|財新| 中国CATLが超長寿命電池開発中国「新車販売」増を楽観できない内情
|マネー潮流|FRBのYCC導入には高いハードル|木内登英
|少数異見|大バッシングの電通をあえて擁護する
|知の技法 出世の作法|国家安全保障戦略の改定で 敵基地攻撃能力を持てるか|佐藤 優
|経済学者が読み解く 現代社会のリアル|学力試験の結果も左右 気温が与える重大な影響|鈴木瑞洋
|人が集まる街 逃げる街|山口県 萩市|牧野知弘
|クラシック音楽最新事情|伝説のバイオリニスト 「最後の日本ツアー」中止|田中 泰
|話題の本|『海洋プラスチック』の著者 保坂直紀に聞く ほか
|「英語雑談力」入門|paint a picture|柴田真一
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