週刊東洋経済

情報量と分析力で定評のある総合経済誌

担当記者より
2020年9月12日号
2020年9月7日 発売
定価 730円(税込)
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【特集】トクする事業承継 M&A

廃業するべきか、それとも後継者にバトンタッチするべきか──。中小企業オーナーにとって最大の悩みは事業承継です。

タイミングと手法を間違えないためには、入念な準備が必須。M&A仲介ビジネスが活況を呈する中、留意しなければいけないこともたくさんあります。

失敗しないバトンタッチのノウハウを、豊富なケーススタディーとともに伝授します。売りたい中小企業オーナーにとっても、買いたい経営者にとっても、必読の特集です。
 

【巻頭リポート】安倍長期政権の「光と影」 1強政権は何をもたらしたか


安倍首相が8月28日に辞意を明らかにして以降、次期首相をめぐる政局が動き出しました。安倍政権の中枢を支えてきた菅官房長官が本命です。功罪相半ばする1強政権の政策は、しばらく継続することになりそうです。

担当記者より

特集「トクする事業継承 M&A」を担当した田島靖久です。国内企業の99%を占める中小企業。その多くがいま廃業の危機を迎えつつあります。2015~25年までの累計で約650万人の雇用、約22兆円のGDPが失われる可能性がある――。いわゆる中小企業の2025年問題ですが、これが新型コロナによって前倒しになる可能性が高まっているのです。

そんな実態を取材している中で私たちは、熱く盛り上がっている市場が形成されていることに目をつけました。M&A仲介ビジネスです。会社を売却したい売り手と、買収して事業を拡大したい買い手を仲介する会社やマッチングサイトが急増しているのです。

ただ、「M&A」といいながら、世界的なM&Aの常識とちょっと違うようです。大企業同士のM&Aでは通常、大手銀行や証券会社が売り手か買い手、どちらか片方についてそれぞれの利益を最大化するよう相手側と交渉します。それが、M&A仲介会社は、売り手側と買い手側の両方についてマッチングを行うのです。M&A業界からは「利益相反に当たるのではないか」との指摘が多く出ています。

実はこの仲介ビジネスは日本独自のもの。M&A市場が成熟した欧米では見られないビジネスモデルです。そのため法規制も追いついていないうえ、ケースによって売り値や買い値もまちまちで相場がありません。M&A仲介大手は、売り手と買い手の担当者を分けたり、価格査定を自動化したりするなどして、公平性を担保しているといいますが、中には後継者問題に悩む企業の弱みに付け込み、高額な手数料を取るような業者も出てきているようです。

とはいえ、実際のところは、こうした仲介がなければ事業承継は進みません。2025年問題が深刻化の一途をたどることは確かです。救世主か存在悪か。それは当事者が事前に正しい知識を持っているかにかかっているのかもしれません。

ゼロから事業を興し、さまざまな浮き沈みを経験しながら長年にわたってかじ取りを行ってきた創業者にとって、会社は「わが子」のようなもの。その会社を手放すことはとてつもなく大きな決断でしょう。そんな決断を後押しできるよう、特集には事業承継で後悔しないための知識とノウハウを詰め込みました。ぜひお読みください。

担当記者:田島 靖久(たじま やすひさ)
東洋経済記者。大学卒業後、放送局に入社。記者として事件・事故を担当後、出版社に入社。経済誌で流通、商社、銀行、不動産などを担当する傍ら特集制作に携わる。2019年10月から現職

>>週刊東洋経済編集部の制作にかける思い

週刊東洋経済とは

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『週刊東洋経済』は、変化する世の中を確かな視点で解明する総合ビジネス週刊誌です。

創刊は1895年(明治28年)、日本国内で最も歴史のある週刊雑誌でもあります。企業戦略から主要業界事情、国内外の政治経済はもちろん、近年はビジネス実用、テクノロジー、社会問題まで、経済の複雑化やビジネスパーソンの関心の広がりに対応し、幅広いテーマを取り上げています。

一方で創刊以来、一貫しているのはセンセーショナリズム(扇情主義)を排除し、ファクトにこだわる編集方針を堅持することです。「意思決定のための必読誌」を掲げ、今読むべき特集やレポートを満載し、価値ある情報を毎週発信しています。

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    企業や業界側の立場や事情に追従することなく、本誌記者は取材対象を客観的立場で分析・評価し、ときには忖度なく切り込む。

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「健全なる経済社会を先導する」という創刊理念のもと、企業戦略やマクロ経済だけでなく、社会問題や海外情勢など幅広いテーマで特集を組み、中立的な立場で情報発信をしています。

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『会社四季報』の独自データで深掘り
約3,900社の上場企業すべてに担当記者を配置。財務情報から海外進出情報など『会社四季報』ならではのデータベースから独自の切り口で深掘りし、分析した連載や特集を『週刊東洋経済』で展開しています。

目次

特集
トクする事業承継 M&A

Prologue ファンケル/CoCo壱番屋 オーナー経営者の決断

Part1 コロナ禍で加速する事業承継
新型コロナで拍車がかかる 待ったなしの後継者問題
早く売却すれば3億円が手元に 事業承継のタイミングによる売却額シミュレーション
親族内承継、第三者への譲渡・・・ 事業承継それぞれの道のり
従業員のケガ、雇用延長問題・・・ 承継後に起こるトラブルにご用心

Part2 お得な会社の引き継ぎ方
親族内承継 上手に節税して継がせる
承継税制を使ってはダメな人 使い方誤れば争族リスクも
第三者承継(M&A) 売却価格引き上げがカギ
MBO・外部招聘 買収資金の手当てが必要
廃業(会社清算) お金を残す「会社のしまい方」
準備が肝心! 承継計画を作成してみよう
問題先送りは致命的 こんな社長が倒産させる
[INTERVIEW] PwCアドバイザリー合同会社 M&Aアドバイザー 福谷尚久 
 事業承継を成功させるには「情と理」が必要

Part3 過熱する承継ビジネス
仲介会社、銀行、マッチングサイト バブル到来の承継市場
[INTERVIEW] りそな銀行社長 岩永省一 ファンドで承継を支援する
狙いは“エコシステム”の形成 大手のGCAも殴り込み
数十万円で買える案件も掲載 マッチングサイトも勃興
会社に勤務しつつ買収する人も 広がる個人M&Aの現場
後継者不在に悩む中小企業の救世主か M&A仲介大手の正体
[INTERVIEW] 日本M&Aセンター 社長 三宅 卓 「利益相反との批判は間違っている」

Epilogue 国も全力で後押し 事業承継加速の重要な「カギ」

巻頭リポート
安倍長期政権の「光と影」 1強政権は何をもたらしたか
「デフレ脱却」という目標設定が間違い 効果が出なかった経済政策

連載
|経済を見る眼|大学のグローバル化はどう変わるか|苅谷剛彦
|ニュースの核心|新型コロナの恐怖をあおる偏向メディアの罪|大崎明子
|フォーカス政治|安倍政権が電撃退陣する構造的要因|山口二郎
|グローバル・アイ|トランプ再選なら習近平有利 警戒すべきはまさかの失脚|ユエン・ユエン・アン
|INSIDE USA|オンライン授業か対面か 政治問題化する学校再開|瀧口範子
|中国動態|「国内大循環」論は中国経済を救うか|伊藤亜聖
|財新|動画配信大手 を揺さぶる2つの事実吉利汽車が今年の販売目標を下方修正
|マネー潮流|目先の投資価値は将来の火種|中空麻奈
|少数異見|ジョブ型導入を叫ぶ経営者に言いたいこと
|トップに直撃|長谷工コーポレーション 社長 池上一夫
|知の技法 出世の作法|ロシアの反政権活動家の 入院をどうみるか|佐藤 優
|経済学者が読み解く 現代社会のリアル|「マッチング寄付」は 逆効果を生みかねない|佐々木 周作
|人が集まる街 逃げる街|愛知県 蒲郡市|牧野知弘
|クラシック音楽最新事情|パイプ数5898本 巨大オルガンの音色|田中 泰
|話題の本|『一八〇秒の熱量』の著者 山本草介に聞く ほか
|「英語雑談力」入門|overstate|柴田真一
|ゴルフざんまい|スコアメイクと ティーイングエリア|小林浩美
|経済クロスワード|事業承継
|編集部から|
|読者の手紙 次号予告|

今後の発売スケジュール

  • 11/4(火) 週刊東洋経済 2025年11月8日号

訂正情報

「週刊東洋経済2020年9月12日号」(9月7日発売)に、以下の間違いがありました。訂正してお詫び致します。
 
32ページ ■長谷工コーポレーション・池上一夫社長のインタビュー

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【正】当社が開発・管理する学生向けマンション