週刊東洋経済

情報量と分析力で定評のある総合経済誌

担当記者より
2020年9月19日号
2020年9月14日 発売
定価 730円(税込)
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【特集】アメリカの新常識


コロナ対応をめぐって失点を重ねたトランプ大統領。アメリカ社会の人種間の分断が深刻になっており、各種世論調査を見ても再選は危うい状況です。選挙分析のプロで過去の選挙の勝者をことごとく言い当ててきたアメリカン大学のアラン・リットマン教授は「バイデンが必ず勝つ」と断言。全米で話題になっています。
 
「バイデン勝利」となれば、またもや米国は大きく変わります。本特集では、政権交代によって起こる政治・外交・経済・産業の激変を深掘り。日本への影響、新たに誕生する菅政権が直面するであろう課題についても先読みします。

担当記者より

特集「アメリカの新常識」を担当した東洋経済解説部の中村稔です。バイデンが勝つか、トランプが持ちこたえるか――。「大統領選のノストラダムス」と呼ばれる米大学教授の最新予測によれば「バイデン勝利」。独自の指標を用いて選挙分析を行っている彼は、もちろん2016年のトランプ当選も見事に言い当てました。確かに、ほとんどの現地メディアはバイデン優勢を伝え、現時点での支持率もバイデンが7pほどリード。このままいけばバイデンの当選が現実路線かもしれません。 

が、実は前回の選挙でも2カ月前までの支持率はクリントンが7pリード。それでも逆転トランプの勝利となったのですから、結果は開けてみないとわかりません。有識者は、10月にトランプ氏が形勢逆転を狙って勝負に出る「オクトーバーサプライズ」の可能性を示唆しています。9月末から3回にわたって行われるTV討論会にも注目です。ここでのイメージが浮動層の動向を大きく左右します。候補者同士が直接激しいバトルを繰り広げるこの討論会に77歳のバイデン氏は耐えられるでしょうか。

郵便投票の急増で混乱が生じ、決着が長引く可能性も指摘されていますが、決着がついたとしても、互いがおとなしく引き下がることはなさそうです。保守とリベラルの対立はさらに先鋭化し、混乱は続くことでしょう。この歴史的選挙は、米国社会に訪れつつある中長期的な変化の始まりともいえます。特集タイトルの「新常識」にはそんな意味を込めました。

コロナ禍の中、私自身が現地に赴いて取材をすることはかないませんでしたが、むしろあらゆることがオンライン化されたために、日本にいながらにして膨大な情報に触れることができました。激しい中傷合戦に辟易しながらも、東洋経済記者の取材力を結集させて挑んだ今回の特集。この1冊で米国について一層の理解を深めていただけることでしょう。

担当記者:中村 稔(なかむら みのる)
1962年山口県生まれ。一橋大学経済学部卒。証券専門紙記者(89~91年NY特派員)を経て93年東洋経済新報社入社。『週刊東洋経済』編集部で通算十数年にわたり金融関連などの特集を担当。機械、銀行・証券、航空、電子部品、エネルギー、鉄鋼、建機、水産などの業界担当も経て2018年から現職。主に国際的な経済・金融情勢について執筆。  

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『週刊東洋経済』は、変化する世の中を確かな視点で解明する総合ビジネス週刊誌です。

創刊は1895年(明治28年)、日本国内で最も歴史のある週刊雑誌でもあります。企業戦略から主要業界事情、国内外の政治経済はもちろん、近年はビジネス実用、テクノロジー、社会問題まで、経済の複雑化やビジネスパーソンの関心の広がりに対応し、幅広いテーマを取り上げています。

一方で創刊以来、一貫しているのはセンセーショナリズム(扇情主義)を排除し、ファクトにこだわる編集方針を堅持することです。「意思決定のための必読誌」を掲げ、今読むべき特集やレポートを満載し、価値ある情報を毎週発信しています。

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「健全なる経済社会を先導する」という創刊理念のもと、企業戦略やマクロ経済だけでなく、社会問題や海外情勢など幅広いテーマで特集を組み、中立的な立場で情報発信をしています。

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約3,900社の上場企業すべてに担当記者を配置。財務情報から海外進出情報など『会社四季報』ならではのデータベースから独自の切り口で深掘りし、分析した連載や特集を『週刊東洋経済』で展開しています。

目次

特集
アメリカの新常識

新常態のアメリカを知る4つのテーマ

PART1 異例ずくめの大統領選挙
負けて居座る大混乱も 怪物トランプの瀬戸際
女性初の副大統領誕生か 新星ハリス候補の強みと弱み
「日米同盟のあり方を 見直す重要な機会に」 ●日本総合研究所会長 寺島実郎
アメリカ国民は何を思う? コロナで変わった政治観
「13指標で分析すると バイデンが必ず勝つ」 ●米アメリカン大学教授 アラン・リットマン
今さら聞けない大統領選Q&A

PART2 混迷する外交
米国が仕掛ける「新冷戦」の落とし穴 「意図せぬ熱戦」のリスク
極端な対中強硬路線は続かない ●米ジョンズ・ホプキンス大学教授 ケント・カルダー
[佐藤 優が解説] 中東、中国...変わる外交のリアリズム 米国外交と地政学
北朝鮮、中国との関係に縛られる韓国 長びく米韓のすれ違い
米中どちらと共に歩む? 日本は「踏み絵」を迫られる

PART3  米国経済のニューノーマル
低成長、低インフレ、低金利 「日本化」進む米国経済
まだ譲らないが長期低落傾向 基軸通貨ドルの地位は安泰か
民主党政権なら規制強化も GAFA「解体論」の行方
IT、自動車、食糧... アメリカ 産業競争力診断
リスクマネー供給力も競争力の源泉 市場はワクチン開発企業に大きな期待

PART4  分断社会の行方 
トランプ政治は「最後のあがき」か 「左」へ旋回する米国社会
「ここから出て行け、国に帰れ」 吹き荒れるアジア人差別
「白人男性中心の社会を 変えていく必要がある」 ●バックステージ・キャピタル創業者 アーラン・ハミルトン
なぜ「国民皆保険」は難しい? 米国の医療格差の真実
映画・ドキュメンタリーで学ぶ アメリカがわかる!74本

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