第1特集「どうする!ホンダ」の編集を担当した西澤です。
2006年に当社へ入社した私の振り出しは、自動車担当の記者でした。企業や産業を見る視点、取材の進め方、記事の書き方。自動車取材を通じてこうした仕事の基礎を身につけました。
当時学んだ自動車経営を捉える枠組みは「車種」「地域」「提携」「人事」です。今回の特集では、この基本的な枠組みに沿って業界の異端児ホンダを深掘りしました。
車種戦略では、ホンダが掲げる2040年「脱エンジン」計画が、市場環境の激変で軌道修正を迫られている様を、東洋経済が独自入手した内部資料をもとに詳報しています。提携戦略では、経営統合交渉が破談した日産自動車・三菱自動車と、再接近の動きがあることを報じています。
地域戦略では、中国ではこの5年で販売台数が半減する非常事態に陥った背景、北米では水面下に進む大増産計画をレポートしました。インドでは現地取材を敢行し、2輪事業の強さの秘密を探りました。人事では「ナンバー2」辞任で揺らぐ経営体制や、26年度に「社長任期」が迫る中での次期社長レースの行方を追っています。
――こうして書くと簡潔にまとまりますが、実際にはたいへんな労力を要しました。経営戦略や人事の本音は、粘り強い取材の積み重ねなしには見えてこないからです。
一流の記者は王道のテーマに挑み、二流は変わり種に走る。王道の取材を担う記者を擁し、このような特集を社会に発信しつづけることこそが、本誌の存在意義であると私は信じています。
ぜひ手に取ってご覧ください!
担当記者:西澤 佑介(にしざわ ゆうすけ)
1981年生まれ。2006年大阪大学大学院経済学研究科卒、東洋経済新報社入社。自動車、電機、商社、不動産などの業界担当記者、19年10月『会社四季報 業界地図』編集長、22年10月より『週刊東洋経済』副編集長