特集「銀行員人生の明暗」を担当した田島です。これまで何度も銀行に関する特集を制作してきましたが、今回はあえて「銀行員」に焦点を当てました。というのも、メガバンクに勤める40代後半の男性の表情が浮かなかったからです。マイナス金利政策の解除によって銀行界に大きな追い風が吹いているにもかかわらずです。
なぜなのか。詳しく話を聞いてみると、その原因は銀行が進めている人事制度改革にありました。「われわれが銀行に入ってから今に至るまで“常識”だとされてきたことが根底から覆されており、安泰と思っていた将来が急に見通せなくなった」と男性は嘆きます。
その代表が、銀行にはびこっていた「年功序列」です。人的資本経営が叫ばれる中で銀行も積極的に取り組んでおり、年功序列から卒業して実力主義に向かおうとしています。これまでであれば大過なく過ごしていれば「いつかは支店長」などと言われてきましたが、今後は実力があり成果を収めなければかなわない夢となってしまいます。
そしてもう一つが出向の縮小です。役職定年を迎えると役職を失うばかりか給与も激減してしまいます。そうした事態を避けるための温情として、銀行は出向制度を運用してきました。ところが金利の上昇で攻めの経営に転じたことで人手不足が顕著になり、シニア層にも残ってもらおうと出向を縮小しているわけです。ただ銀行に残ったからといって幸せとは限りません。こうした現状があるため男性は思い詰めていたのです。
そのため今回の特集では、人事制度の詳細を徹底解説。現役行員を取り巻く環境の変化について詳しくご紹介。合わせて新卒の獲得競争についてもお伝えします。銀行員と言えば高給取りで安定した職業の代表格でした。しかしその根底が今、揺らいでいます。
担当記者:田島 靖久(たじま やすひさ)
週刊東洋経済副編集長。大学卒業後、放送局に入社。記者として事件取材を担当後、出版社に入社。経済誌で流通、商社、銀行、不動産などを担当する傍ら特集制作に携わる。2020年11月に東洋経済新報社に入社、週刊東洋経済副編集長、報道部長を経て23年4月から現職。『セブン&アイ 解体へのカウントダウン』が小社より24年12月発売。

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