週刊東洋経済

情報量と分析力で定評のある総合経済誌

担当記者より
2020年11月21日号
2020年11月16日 発売
定価 730円(税込)
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【特集】デジタル大国 中国

コロナ禍から急速に経済を立て直した中国は、デジタル化を原動力にさらなる成長を狙っています。アリババ、テンセントに続く新興勢力のリポートや最新の企業ランキングを通じて、最新動向を徹底追跡。

パナソニック、ユニクロなど、急速に変化する中国市場で奮闘する日本企業のリポートも交えて日本への教訓を探ります。
 

【第2特集】混迷続くアメリカ 「バイデン政権」を待つ試練

トランプ大統領との歴史的な大接戦の末、当選を確実にしたバイデン氏。政策は何が変わり、超大国はどう生まれ変わるのでしょうか。大統領選挙後も分断が深まる米国をどう舵取りするのでしょうか。新政権の方針は日米関係にも大きな影響を与えそうです。
 

【スペシャルリポート】崖っぷちの三菱自動車 東南アジア「一本足」の賭け


コロナショックによる販売減で深刻な業績不振に陥っている三菱自動車。日産自動車の出資を受け入れ、事実上傘下に入って進めてきた拡大戦略が裏目に出ました。今後の生き残りのカギを握るのは東南アジアです。この正念場をどう乗り切るのでしょうか。

担当記者より

特集「デジタル大国 中国」を担当した劉彦甫です。ECサイトと連携し食材の管理や購入が簡単にできる冷蔵庫、外出先からでもスマホで操作できる洗濯機など、日本や私の出身地である台湾ではまだ将来の夢のように語られるIoT家電ですが、実は中国では、すでに一般家庭でも日常的に使われています。生活シーンのデジタル化が、私たちの予想を超えるスピードで進んでいることを、今回の特集取材でつくづく感じました。

中国のすごいところは、技術面というよりむしろ普及の速さ。欧米や日本でインターネットが普及し始めたのと同じタイミングでネット技術を導入できたことで、従来の先進国が経験したことがないスピードで技術発展が進みました。それから、よく言われることではありますが、消費者が個人情報の扱いに寛容であることも、その速さを加速させました。自分たちの暮らしが便利になるのなら、自身の情報を使われることをいとわないというのが、彼らの考え方だといいます。

そう聞くと「日本と中国は違うから学ぶことはない」と思うのももっともなのですが、今回の特集でインタビューをした日本企業の中国担当役員は、日本が中国から学ぶことの必要性を強調していました。

いま中国は、インターネットをうまく活用して急速に発展した国として、東南アジア、中東など広域アジアの国々からも手本とされているのだそうです。社会環境やビジネスモデルなど、さまざまな「中国式」を取り入れながら進もうとしています。となると、日本はこうした国々と付き合っていくうえでも「中国式」を知っておかなければならないというわけです。

中国のデジタル化については、情報統制や監視強化といった政治的なイメージがつきまといがちですが、私たちが学ぶべきことは実はたくさんあるということをあらためて感じました。

担当記者:劉 彦甫(りゅう いぇんふ)
台湾台北市生まれの客家系。長崎県立佐世保南高校、早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了、修士(ジャーナリズム)。専攻はアジア国際政治経済、東アジアジャーナリズム。現在は電機大手や電子部品、精密機械、医療機器、宇宙業界を担当。台湾や香港を中心に東アジアの動きも追いかける。趣味はピアノや旅行。

>>週刊東洋経済編集部の制作にかける思い

目次

特集
デジタル大国 中国

虎の尾を踏んだジャック・マー アント「3兆円上場延期」の舞台裏

「財新」のテック業界デスクが解説 中国のデジタル化を象徴する8つの数字
1~3次産業をデジタル化し生産性向上 アリババが拓く下沈市場
・14億人の内需を狙うジャック・マー
・人工衛星の観測データで中国の農村金融を改革
・ビッグデータ活用で短納期生産 工場のサプライチェーン革命
宅配サービスの美団と低価格ECの拼多多が挟撃 王者アリババを脅かす新興勢力

チャイナスピードで競い合え ●パナソニック専務 中国・北東アジア社 社長 本間哲朗
ユニクロ、パナソニック、京セラ デジタル最前線で競う日本企業
現地イノベーション支援のプロが伝授 中国テックと連携「3つの秘訣」
飛躍するデジタル企業 「中国100強」最新ランキング
これが今の中国を代表する100社だ!

スター企業が上場ラッシュ “大陸マネー”に依存する香港
ソフトバンクGの中国リスク 「アリババ頼み」孫正義の苦悩
特別対談 中国通の2人が語り尽くす デジタル中国への期待と不安
●神戸大学教授 梶谷 懐  ●アジア・パシフィック・イニシ アティブ シニアフェロー 徳地立人

現地駐在員10人に聞いた 中国「新常態」のリアル
新型コロナ克服のカギは 健康QRコードと“村社会”
米ドルに取って代わることはできるのか デジタル人民元の未来
米国が恐れる「智能化戦争」の正体 中国軍はAIで「制脳権」を狙う
中国のデジタル化は新ステージへ 加速する新興国のDX

第2特集
混迷続くアメリカ 「バイデン政権」を待つ試練
「バイデン新政権」の多難な船出 崩れた世界秩序の修復へ
有識者に聞く 混迷する米国 新大統領はどう動く
選挙後も生き残った トランプなきトランプ主義 ●キヤノン グローバル戦略研究所 研究主幹 宮家邦彦
米中対立はソフトランディング 台湾の偶発戦争リスクも低下 ●東京財団政策研究所 主席研究員 柯隆
米中対立を日米関係の さらなる進化につなげよ ●早稲田大学 教授 中林美恵子
バイデン不況は起きないが 対中脅威論は変わらない ●みずほ総合研究所 理事・フェロー 小野 亮
脱炭素で日米欧が同調 日本にもチャンスは十分ある ●日本エネルギー経済研究所 専務理事 小山 堅

スペシャルリポート
崖っぷちの三菱自動車 東南アジア「一本足」の賭け
「新たなパートナーは必要ない」 三菱自動車CEO 加藤隆雄

ニュース最前線
米中での販売回復が鮮明に コロナに見るトヨタの底力
カメラ不振でニコン赤字 リストラ加速で再生なるか
山梨県が富士急に格安賃料 方針転換で巨額賠償請求も


連載
|経済を見る眼|コロナ下の家計貯蓄に見る衝撃の事実|小峰隆夫
|ニュースの核心|「カーボンニュートラル宣言」は中身が問題|中村 稔
|フォーカス政治|民間臨調が問う「日本モデル」の功罪|牧原 出
|グローバル・アイ|GAFA分割だけでは不十分 技術を競わせる政策が必要だ|ダロン・アセモグル
|INSIDE USA|米で毎日1000人が死亡 猛威を振るう新型コロナ|瀧口範子
|マネー潮流|国も今こそESG投資に具体策を|中空麻奈
|少数異見|2021年、世界的な株価暴落に警戒せよ
|知の技法 出世の作法|米大統領選挙を契機に 独自に動く沖縄の論理|佐藤 優
|経済学者が読み解く 現代社会のリアル|「プラットフォーム特権」は利用者の不利益となるか|善如悠介
|リーダーのためのDX超入門|「ヒット商品」を生み出すデータ活用術|山本康正
|トップに直撃|エレコム 取締役社長 葉田順治
|人が集まる街 逃げる街|福島県 いわき市|牧野知弘
|クラシック音楽最新事情|バーンスタイン没後30年 今こそ聴きたい名曲|田中 泰
|「英語雑談力」入門|be horrified|柴田真一
|話題の本|『学校弁護士』の著者 神内 聡に聞く ほか
|経済クロスワード|中国のデジタル化
|編集部から|
|読者の手紙 次号予告|

訂正情報

「週刊東洋経済2020年11月21日号」(11月16日発売)に、以下の間違いがありました。訂正してお詫び致します。
 
16ページ ■「カメラ不振でニコン赤字 リストラ加速で再生なるか」の記事
ソニーの2019年のミラーレスカメラ生産台数

【誤】1165万台
 ↓
【正】165万台