週刊東洋経済

情報量と分析力で定評のある総合経済誌

担当記者より
2025年11月15日号最新号
2025年11月10日 発売
定価 950円(税込)
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【第1特集】レアアースショック

アメリカと中国の首脳会談を経て、「レアアースショック」の緊張は和らぎましたが、不安は消えません。中国はいつでも輸出規制に踏み出す可能性があるからです。サプライチェーンリスクが増す中、産業界はどう対応するのか? 特集ではレアアース調達の現状から企業の対応策までを網羅。中国依存脱却のポイントを解説していきます。第2特集は「ソニー半導体の岐路」、産業リポートは、ユニホーム事業に本格参戦した「ユニクロ 日本の伸びびしろ」を掲載します。
 

【第2特集】ソニー 半導体の岐路


これから起きるゲームチェンジで、覇権を握り続けることはできるのか。
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担当記者より

特集「レアアースショック 米中の電撃和解でも終わらない」を担当した野中大樹です。

スマートフォンから電気自動車、戦闘機まで、あらゆるハイテク製品に使われるレアアース。素材に少量を添加するだけで製品の性能が劇的に向上することから「産業のビタミン」などと呼ばれます。

このテーマで特集を作ろうと思ったのは、今年4月に仰天するニュースがあったからです。

世界中の国々に相互関税をかけたアメリカに、唯一、報復をしかけた中国。その中身は、ジスプロシウムやガドリニウムなどレアアース7元素の輸出規制でした。すると、あの高圧的なトランプ大統領が態度を一変させ、145%の関税を一気に115%も引き下げました。石破茂首相(当時)に「日本が備蓄するレアアースをアメリカに回してもらえないか」と頼んだともいいます。

トランプ大統領を一撃でうならせたレアアースとは何か。なぜ、レアアースの輸出規制がアメリカにとって痛打となったのか。こうした疑問を解き明かしてみようと考えました。

一つひとつのデータを確認すると、なぜ中国がレアアースを外交上の「武器」にできるのかがよくわかりました。埋蔵量の約半分が中国国内に集中し、鉱物生産は世界の7割を握っています。精錬については世界シェアが9割を超えていました。つまり、中国が輸出量を搾れば、世界中のサプライチェーンが混乱するのです。この構造こそがレアアースという「武器」の強さの正体です。

特集では、レアアース調達不安に身構える自動車業界や、業界に異変が起きている電子機器業界にフォーカスしました。また、数十年をかけて「レアアース大国」となった中国の長期戦略を読み解きました。

期待が高まる南鳥島レアアース泥の開発状況についても詳報しています。

担当記者:野中 大樹(のなか だいき)
東洋経済記者。熊本県生まれ。週刊誌記者を経て2018年、東洋経済新報社に入社。現在は統合編集部。

週刊東洋経済とは

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『週刊東洋経済』は、変化する世の中を確かな視点で解明する総合ビジネス週刊誌です。

創刊は1895年(明治28年)、日本国内で最も歴史のある週刊雑誌でもあります。企業戦略から主要業界事情、国内外の政治経済はもちろん、近年はビジネス実用、テクノロジー、社会問題まで、経済の複雑化やビジネスパーソンの関心の広がりに対応し、幅広いテーマを取り上げています。

一方で創刊以来、一貫しているのはセンセーショナリズム(扇情主義)を排除し、ファクトにこだわる編集方針を堅持することです。「意思決定のための必読誌」を掲げ、今読むべき特集やレポートを満載し、価値ある情報を毎週発信しています。

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  1. 取材力
    当社に所属する約100人の経済専門記者が主要業界、全上場企業をカバー。国内外の経済や業界、企業などを深堀りし、他には読めない記事を提供。
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約3,900社の上場企業すべてに担当記者を配置。財務情報から海外進出情報など『会社四季報』ならではのデータベースから独自の切り口で深掘りし、分析した連載や特集を『週刊東洋経済』で展開しています。

目次

第1特集
米中の電撃和解でも終わらない
レアアースショック


サプライチェーンを牛耳った中国
「武器」化されたレアアースに産業界は耐えられるか

第1章
四苦八苦の産業界

経団連・自工会が対応策の策定に乗り出す 身構える自動車業界
電子部品にも影響 ミネベアミツミでも調達難 スマホカメラ部品で苦戦
中国依存100%からいち早く脱却 「重希土類フリー」磁石を開発した大同特殊鋼
パナソニック&ダイキンの戦略 安定供給へ省資源を徹底
高市首相は「日米共同開発」と前のめり 国産レアアースへの長い道のり
資源採掘の国際秩序を脅かす存在に 大平洋金属「受託製錬」の危うさ

第2章
中国の長期戦略を読み解く

精製・加工で中国のシェアは9割超 中国依存脱却には生産技術の継承が不可欠
[インタビュー]マーケット・リスク・アドバイザリー 共同代表 新村直弘
 「サプライチェーンリスク管理にコスト負担を」
苦汁をなめた時代からはい上がる 中国「レアアース大国」への執念
一歩も引かぬ「奉陪到底」の中国と渡り合うために 日本の産業界は中長期戦略の再構築を

第2特集
ソニー 半導体の岐路
[インタビュー]ソニーセミコンダクタソリューションズ 執行役員 CTO 大池祐輔
 センサーが進化すると カメラを「構える」が不要に
激変する主力工場 生産改革の全貌
[インタビュー]ソニーセミコンダクタソリューションズ 社長CEO 指田慎二
 「“勝ち馬”見極め関係を構築。 アナログ集団がソニーの強み」

産業リポート
ユニクロ 日本の伸びしろ
欧米で伸びる一方、国内の成長に懸念も
[インタビュー]ファーストリテイリング 取締役兼グループ上席執行役員 柳井康治
 「既存のユニホーム市場に乗り込む感覚はない」

NEWS & TOPICS 最前線
ニデック「不適切会計」の疑い 上場維持に黄色信号灯る
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連載
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|トップに直撃|大塚ホールディングス 社長 井上眞
|フォーカス政治|高市政権始動で自民党は変われるか|飯尾 潤
|マネー潮流|今こそアベノミクスの総括を|木内登英
|中国動態|造船業の「復活」には落とし穴も|梶谷 懐
|財新 Opinion&News|絶好調TSMC「対中輸出規制」でも強気の訳
|少数異見|ジェンダーより世襲を論じたい
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|名著は知っている|『大不況下の世界 1929-1939』
|ビジネスと人生は絶望に満ちている|うまくいかなかったからこその名曲|頭木弘樹
|西野智彦の金融秘録|90年代「危機の扉」③
|21世紀の証言|三菱UFJフィナンシャル・グループ 元副社長 田中正明 その4
|編集部から|
|次号予告|

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  • 11/17(月) 週刊東洋経済 2025年11月22日・29日合併号