週刊東洋経済

情報量と分析力で定評のある総合経済誌

担当記者より
2025年8月2日号
2025年7月28日 発売
定価 950円(税込)
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【特集】脱・管理職罰ゲーム


働き方改革による部下の仕事の巻き取りから、ハラスメント対策、年上部下への対応……。仕事量と責任が激増する一方、賃金上昇は限定的になっており、一般社員の半数以上が管理職になりたくないと回答。果ては「管理職」になることを“罰ゲーム”とみなされています。特集では、管理職の実態と、罰ゲームから脱出する処方箋を事例と合わせて提示していきます。深層リポートは「ドキュメント 令和の米騒動」。価格が高騰した日本の主食の流通に何が起こっているのかを検証します。

担当記者より

特集『脱・管理職罰ゲーム』を担当した堀川美行です。

今、管理職の仕事は「罰ゲーム」と言われています。罰ゲームであるなら、管理職へのなり手はいなくなります。その組織は中枢にぽっかりと穴が開いたような状態になるでしょう。もう組織として、成り立たなくなるのです。

なぜ罰ゲーム化したのでしょうか。ビジネス系の新書で異例の大ヒットを記録している『罰ゲーム化する管理職』。著者でパーソル総合研究所主席研究員の小林祐児氏は最初に「組織のフラット化」を指摘します。

企業は人件費抑制などを目的に管理職削減やピラミッド型組織の見直しを進めてきました。その結果、1人当たりの管理職が担う仕事や責任は劇的に増えたのです。でも、その分、給与が増えたのかといえば、そうでもありません。

そして、働き方改革やハラスメント改革がダメ押しになりました。部下に仕事を任せるづらい雰囲気になって、上司は自分で仕事を抱えてしまう。

非正規雇用の増加、コミュニケーションの負担増加……。これらの要素は管理職にとっては、危険な「わな」のような感じではないでしょうか。本来は組織全体の仕組みの中で、対処すべき問題であるばずですが、そのすべてが管理職にのしかかっているのが現状なのです。

特集では専門家に現状分析と「脱罰ゲーム」への具体策を聞きました。若手の早期抜擢や女性の積極的な登用などに取り組む企業も紹介します。罰ゲームを脱した後にはどんな管理者が登場するのでしょうか?そのヒントをつかんでもらえたらと思います。

担当記者:堀川 美行(ほりかわ よしゆき)
東洋経済 記者 『週刊東洋経済』副編集長

目次

特集
どうすれば報われるか── 脱・管理職罰ゲーム
管理職罰ゲーム化の背景と脱出ルート

PART1
罰ゲーム化からどう抜け出すか

企業と個人が取り組むべきこと 孤独な管理職を救う4つの手法
管理職とお金の真相 管理職の収入はどうして伸び悩んでいるのか
管理職になると悪化する幸福度 お金・健康・人間関係の3要素を好転させる
コミュニケーション断絶をどう防ぐ ハラスメント問題を個人に押し付けない
男性中心の組織はこう変える 女性を登用したいのにできない会社の処方箋

本誌独自 3000人アンケートでわかったリアル 「なぜつらい?」「どうすれば?」 今どき管理職の実態
[インタビュー]管理職になる人に覚えてほしい心がけ
「自分と部下のために無駄を排除していく」 大正大学特任教授 地域構想研究所所長 片山善博
[コラム]マネジメントの技術 部下を持ったら必要な水質管理と時間管理のスキル

PART2
新時代の管理職へ

日本と米国の企業の違いは 報われる管理職はこうして作る
[早期抜擢]ヤマハ発動機/スター精密 報酬の年齢要素を撤廃 専門性あれば特別登用
[女性登用]戸建て大手、積水ハウス 女性管理職倍増のカギ
[コラム]外部人材のほうがうまくいく? 女性役員ヘッドハンティング最前線
[AI上司・上司代行]PeopleX/サルエド/Hajimari 管理職の仕事をAIが軽減 人材育成にも貢献
[インタビュー]女性管理職のつくり方
「比率ありきは逆効果 まずは機会の提供を」 サイバーエージェント専務執行役員 石田裕子
[役職定年廃止]上がり社員も管理職に NECはサイロ化解消へ
[透明性の向上]nobitel/さくら構造/SmartHR 部下が上司を選ぶと組織は活性化する

深層リポート
ドキュメント 令和の米騒動
米卸は悪者か「昨夏の後悔から争奪に」 全国米穀販売事業共済協同組合理事長 山崎元裕

スペシャルインタビュー
朝日新聞社 社長CEO 角田 克
縮小止まらない新聞 逆風下にある業界の雄 メディアの生き残り方

NEWS & TOPICS最前線
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