週刊東洋経済

情報量と分析力で定評のある総合経済誌

担当記者より
2025年12月6日号最新号
2025年12月1日 発売
定価 950円(税込)
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【特集】グローバル日立の野望


時価総額が直近5年で5倍以上に拡大した日立製作所。エヌビディアとの協業でインフラ向け保守・管理ソリューション「HMAX」を開発、オープンAIともデータセンターを軸とした提携を発表するなど、グローバルで存在感を高めています。なぜ変貌することができたのでしょうか。鉄道や送配電といった事業戦略から、営業改革、人材育成まで、現場で起きている変革を、海外取材を含めてリポートします。産業リポートは「オラクルの勝算」と「沸騰!医薬品CDMO富士フイルムの大勝負」を掲載しています。
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担当記者より

特集「グローバル日立の野望」を担当した倉沢美左です。

今や売上高の6割を海外で稼ぐ日立製作所はなぜこんなにグローバルで”成功”しているのか。その理由を探る旅は7月に始まりました。

送配電事業を手がける日立エナジーのアンドレアス・シーレンベックCEOの取材前に業界環境を調べていると、AIブームで世界的に電力消費量が爆増する中で、電力を需要家に届けるのに必要な「変圧器」が不足状態にあることが判明。しかも、日立は変圧器世界シェア1位。これは面白いかもーーと編集者に記事化の相談をしたのでした。

9月、今度は鉄道工場の本格稼働を取材するためにアメリカ・メリーランド州へ。最新鋭の工場では、犬型ロボットの写真を大量に撮ったり、AIを使った設備をみたりで大興奮。新たな鉄道も披露された式典も、しばらく企業取材の最前線から離れていた私にとって、それは華やかで、素直に「日立、すごいな」と思った瞬間でした。

さらに10月には、オープンAIとの電撃提携、アメリカ商務省との基本合意書ーーとビッグニュースが相次ぎ、またとないタイミングで日立がグローバルで存在感を示す理由や背景を追うことができました。

4月に徳永俊昭社長率いる新経営体制になって変わったことやAI戦略、2兆円規模を目指す鉄道事業の最前線、アメリカ現地でのロビー活動ーーその1つひとつにグローバルで戦うヒントがあるはずです。

個人的にもっとも印象に残っている話は、やはり現場の取り組み。もともと製品開発へのアプローチがまったく異なる人たちーーシステム開発などIT側の人たちと、工場で製品開発などに携わるOT(制御技術)側の人たちーーがいかにして互いを理解する努力をし、コラボレーションをしてきたのかは聞き応えがありました。話を聞いたIT側の1人は、工場を熱心に回って工場長に話を聞いているといいます。

表に出てくる話はとても華やかでグローバル。しかし、それを支えているのは、過去からの積み重ねや現場の地道な取り組みなのでしょう。

グローバル企業として躍進する日立の舞台裏で何が起きているのか。ぜひ、お手にとって読んでいただけると嬉しいです。

担当記者:倉沢 美左(くらさわ みさ)
米ニューヨーク大学ジャーナリズム学部/経済学部卒。東洋経済新報社ニューヨーク支局を経て、日本経済新聞社米州総局(ニューヨーク)の記者としてハイテク企業を中心に取材。帰国後、2006年に東洋経済新報社入社。メディア、食品、電力企業などを担当後、週刊東洋経済編集部→東洋経済オンライン編集部で副編集長、編集委員。25年4月から報道部で電機やAI業界を担当。夢は古着屋。気がつくと食事のことを考えている。

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『週刊東洋経済』は、変化する世の中を確かな視点で解明する総合ビジネス週刊誌です。

創刊は1895年(明治28年)、日本国内で最も歴史のある週刊雑誌でもあります。企業戦略から主要業界事情、国内外の政治経済はもちろん、近年はビジネス実用、テクノロジー、社会問題まで、経済の複雑化やビジネスパーソンの関心の広がりに対応し、幅広いテーマを取り上げています。

一方で創刊以来、一貫しているのはセンセーショナリズム(扇情主義)を排除し、ファクトにこだわる編集方針を堅持することです。「意思決定のための必読誌」を掲げ、今読むべき特集やレポートを満載し、価値ある情報を毎週発信しています。

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目次

特集
グローバル 日立の野望

Part1
グローバル展開の現場

10億ドルクラブ入りで米政府の態度が一変 アメリカに巨額投資 トランプ政権へ急接近
米エヌビディアとの協業でデータ解析を短縮 鉄道「苦節20年」で売上高2兆円へばく進
これまでの工場と違う4つのポイント 鉄道新工場の全貌 グループ技術を結集
定時運行率 99.84%を誇る自動運転システム ハワイ鉄道の開業遅れで負った痛手
1兆円の巨額投資が結実 送配電事業が爆増 怒濤の工場拡張
[インタビュー]受注残 7.4兆円、 熱狂の舞台裏 日立エナジーCEO アンドレアス・シーレンベック
「日立・創業の地」で外国人幹部にDNA浸透

Part2
日立はどこまで変われるか

[TOPインタビュー] 日立製作所執行役社長兼CEO 徳永俊昭
 成長軌道続き、近い将来シーメンスを超えられる
ルマーダの進化形をエヌビディアと開発 AI活用の「HMAX」を全社展開
大企業向けに事業横断的な営業チームを組成 グローバル営業改革で36社の戦略顧客に包括提案
創業時の開拓者精神を取り戻す グローバル人材育成の試行錯誤

産業リポート
オラクルの勝算
TikTokのアメリカ事業に参画
[インタビュー]スターゲート以外の顧客からも受注
 
オラクル シニア・バイスプレジデント(AIインフラストラクチャ・プラットフォーム担当) スダー・ラガヴァン
[インタビュー]インフラとプラットフォームに注力
 日本オラクル 取締役執行役社長 三澤智光
独SAPと互角の勝負、AIの実装力で差別化 インフラの強み生かすSaaSの躍進

産業リポート
沸騰! 医薬品CDMO 富士フイルムの大勝負
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連載(月1連載)
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