特集「大解剖 新章NTT 変わる巨艦の行方」を担当した茶山瞭です。
郵便、放送、そして通信――。いずれも国家主導で全国各地をカバーする制度が整備され、長期にわたり、日本の情報インフラを支えてきた存在です。しかしその分、時間の経過とともに設備は大規模になり、組織は硬直化のリスクを抱えやすいといえます。インターネットやスマートフォンの普及で社会のデジタル化が進む中、郵政や放送は強固に構築されたシステムの制約が大きく、時代の変化への対応に苦慮してきたように見え、近年は一部でガバナンス上の問題も目立ちました。
本特集で取り上げたNTTも、国が整備を主導した固定電話網を担う公社を起源とし、かつて単一事業を維持する「官僚より官僚的」な社風と評されることもありました。しかし昨今、トップの強いリーダーシップのもと、事業、組織風土ともに変革が進んでいます。グループ再編や海外展開、人事大改革、メタル固定電話縮退、新規事業育成といった、さまざまな動きが加速しています。島田明社長は「つねに自分たちが変化することで、小さな優位性を維持していく必要がある」といいます。
今年はちょうどNTT民営化から40年の節目、NTTデータグループの完全子会社化で主力事業会社が再結集する歴史的な転換点を捉え、NTTの知られざる過去、現在、未来を明らかにすべく、NTTグループの幹部、現役社員やOB、産官学の有識者の方々と、数多くの業界関係者から話を聞いて回りました。取材にご協力頂いた方々には、この場を借りて感謝を申し上げたいです。
特集では、グループ体制や人事制度の構造改革、成長領域グローバルの将来像、成熟期を迎えた国内通信市場の今、次世代通信基盤「IOWN(アイオン)」の可能性など、さまざまな切り口で巨大グループの実像をひもときました。NTTデータグループ、NTTドコモ、NTT東日本・西日本、NTTコミュニケーションズ(現NTTドコモビジネス)と各主力会社の視点を網羅した点も特徴です。
なぜNTTは変わる必要があり、どう変わってきたのか。そしてこれから、どこに向かっていくのか。もがき続ける巨艦の姿は、多くの示唆を与えてくれると思います。ぜひ、お手に取り下さい。
担当記者:茶山 瞭(ちゃやま りょう)
1990年生まれ、大阪府高槻市出身。京都大学文学部を卒業後、読売新聞東京本社に入社。岐阜支局や経済部に在籍し、 司法や調査報道のほか、民間企業や中央官庁を担当した。 2024年に東洋経済に移り、通信、SIer、データセンター業界を取材。メディア、都市、AIといった領域にも関心がある。趣味は、読書、散歩、旅行。学生時代は、理論社会学や哲学・思想を学んだ。
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