週刊東洋経済

情報量と分析力で定評のある総合経済誌

担当記者より
2025年6月28日号
2025年6月23日 発売
定価 950円(税込)
JAN:4910201340651

【第1特集】上場企業クライシス

国・東京証券取引所の市場改革やアクティビストの登場が呼び水となり、M&Aや業界再編、非公開化など日本の上場企業は大淘汰の波にのみ込まれています。本特集では、過去最多を記録している株主提案の実態や当事者へのインタビューを通じてアクティビストの動向をお伝えするほか、東証グロース企業の上場ゴールランキングなど上場“失格”企業についても分析。アクティビストに狙われやすい独自銘柄ランキングも掲載。消えゆく日本の上場企業と激変する資本市場の行方について詳報します。
 

【第2特集】企業と政治献金


政治資金を「見える化」するデータベースを用いて、企業と政治献金の関係に迫る。

担当記者より

東京証券取引所や政府のガバナンス強化によって外部株主による監視が強まる昨今、「資本と経営は車の両輪である」と喝破するゼンショーホールディングス創業者、小川賢太郎氏の言葉を思い出します。同社の筆頭株主は4割弱の株式を持つ創業家の資産管理会社。要するに、資本と経営は別の人間がやるのではなく、一体で運用されるべきという考えです。

小川氏は過去、長期経営には安定的な資本政策が必要で「ファンドなんかに売らず、資本を継承する人間がいるべき」と語っています。その言葉どおり、6月下旬の株主総会で息子の洋平氏がトップを引き継ぐ予定です。

国内外食企業で初の売上高1兆円を遂げた同社ですが、今年に入り異物混入をめぐり全店一斉休業を実施しています。絶大なカリスマ性で会社を率いた小川賢太郎氏から代わった新社長の時代に成長期待が薄れれば、今回の世襲がガバナンスの独立性や少数株主を軽視したツケではないかという声が上がっても不思議ではありません。外食業界ではすかいらーくなどが事業承継のタイミングで、プライベート・エクイティー(PE)ファンドに資本を売るということがありました。

「世界から飢餓と貧困を撲滅する」という企業理念を実現するには、確かに長期経営が大事。しかし、アクティビスト(物言う株主)の発言権が増す中、株式市場に対して一族経営の強みを説明することがとても難しくなっていると感じます。

担当記者:二階堂 遼馬(にかいどう りょうま)
解説部記者。米国を中心にマクロの政治・経済をカバー。2008年東洋経済新報社入社。化学、外食、ネット業界担当記者と週刊東洋経済編集部を経て現職。週刊東洋経済編集部では産業特集を中心に担当。

>>週刊東洋経済編集部の制作にかける思い

目次

第1特集
東証・株主が迫る大淘汰 上場企業クライシス

消えゆく日本の上場企業 激変する資本市場の行方

PART1
猛威を振るうアクティビスト

旧村上系ファンドに不穏な動き 窮地のフジに襲いかかる 前門の虎、後門の狼
[インタビュー]フジ・メディアvs.ダルトン それぞれの言い分
 「改革プランを実行できる候補」フジ・メディア・ホールディングス専務取締役 清水賢治(6月25日社長就任予定)
 「1人でも入れば劇的に変わる」ダルトン・インベストメンツ パートナー 西田真澄
[インタビュー]アクティビストが語る日本企業の問題点
 オアシス・マネジメント 設立者兼最高投資責任者 セス・フィッシャー
 カナメ・キャピタル パートナー兼リサーチ責任者 槙野 尚
 ストラテジックキャピタル 代表取締役 丸木 強
 アセンダー・キャピタル パートナー兼共同最高投資責任者 エドワール・メルシエ
[ランキング]アクティビストが狙う銘柄① 主要5指標で独自にランキング
[ランキング]アクティビストが狙う銘柄② 厳しい視線を浴びる親子上場
トヨタも動いた持ち合い解消 豊田織機、巨額TOBの真相

PART2
あぶり出される上場失格企業

東証グロース市場に激震 409社が上場廃止危機
[ランキング]東証グロース「上場ゴール」ランキング 1~100位
IPOが激減、大M&A時代に 変わるスタートアップの出口戦略
株主優待などあの手この手 現行基準すら満たせない49社
東証「退場予備軍」の避難所に 名証に新規上場ラッシュ
[トップインタビュー]日本取引所グループ グループCEO 山道裕己
 「東証の改革は『1.5合目』 ガバナンス改革は終わらない」
新興企業の依頼相次ぐ EVOファンドの実態

PART3
「国策」市場改革の混沌

TOB価格で大もめ 非公開化「祭りの後」
すべての損益が黒字に 非公開化した東芝の再生
東証が繰り出したアクティビスト封じの波紋 上場維持基準めぐる水面下の攻防
株式分割ブームの光と影 急増する「個人アクティビズム」
上場企業の救世主? 猛烈拡大するPEファンド
[インタビュー]「上場していることが正解ではない」
 
カーライル 米州プライベートエクイティー共同責任者 スティーブン・ワイズ
ホワイトナイトやMBOにも限界 同意なき買収バトルの壮絶
コーポレートガバナンス改革から10年 アクティビストとどう向き合うか

第2特集
企業と政治献金
[インタビュー] 政治献金制度の問題点①
 「献金透明化できてない 自民が率先するべきだ」群馬県知事 山本一太
自主的な開示を 企業側の「献金との向き合い方」
[インタビュー] 政治献金制度の問題点②
 「企業も献金した経緯を公表したほうがいい」岡三証券グループ社長 新芝宏之

NEWS & TOPICS最前線
2年遅れで統合へ最終合意 日野・三菱が挑む脱炭素化
「価格をつり上げていない」 コメ卸大手の悲痛な叫び
サンリオが北米で大復活 再起を導いた「3つの転換」


連載
|経済を見る眼|「三つ星」のビジネスモデルはどれか?|井上達彦
|ニュースの核心|脱炭素で、家庭用給湯器「エコキュート」への期待|岡田広行
|トップに直撃|ヒューリック 社長 前田隆也
|フォーカス政治|石破首相に問われる為政者の「覚悟」|歳川隆雄
|マネー潮流|日本の国債市場における新たな課題|森田長太郎
|中国動態|粘る中国経済、夏以降の減速に注意|福本智之
|財新 Opinion&News|中国車市場で価格競争が再燃する裏側
|グローバル・アイ|プーチンはトランプが「びびり」だと知っている|ティモシー・スナイダー
|FROM The New York Times|違法利用でレディットが提訴 AI企業のデータアクセス
|少数異見|コメ流通はわからないことだらけだ
|ヤバい会社烈伝|大和ハウス×積水ハウス 2強のエースが合流 荒ぶる「熱湯経営」|金田信一郎
|知の技法 出世の作法|佐藤流・情報の収集と分析の手法 108|佐藤 優
|経済学者が読み解く現代社会のリアル|2人の能力差が大きいとき ペアワークの効果が高まる|亀井憲樹
|話題の本|『ナラティヴの被害学』著者 阿部幸大氏に聞く ほか
|名著は知っている|『ザ・ワーク・オブ・ネーションズ』[中編]
|PICK UP 東洋経済ONLINE|
|西野智彦の金融秘録|植田丸、2年目の逆風⑤
|編集部から|
|次号予告|