特集「グローバル日立の野望」を担当した倉沢美左です。
今や売上高の6割を海外で稼ぐ日立製作所はなぜこんなにグローバルで”成功”しているのか。その理由を探る旅は7月に始まりました。
送配電事業を手がける日立エナジーのアンドレアス・シーレンベックCEOの取材前に業界環境を調べていると、AIブームで世界的に電力消費量が爆増する中で、電力を需要家に届けるのに必要な「変圧器」が不足状態にあることが判明。しかも、日立は変圧器世界シェア1位。これは面白いかもーーと編集者に記事化の相談をしたのでした。
9月、今度は鉄道工場の本格稼働を取材するためにアメリカ・メリーランド州へ。最新鋭の工場では、犬型ロボットの写真を大量に撮ったり、AIを使った設備をみたりで大興奮。新たな鉄道も披露された式典も、しばらく企業取材の最前線から離れていた私にとって、それは華やかで、素直に「日立、すごいな」と思った瞬間でした。
さらに10月には、オープンAIとの電撃提携、アメリカ商務省との基本合意書ーーとビッグニュースが相次ぎ、またとないタイミングで日立がグローバルで存在感を示す理由や背景を追うことができました。
4月に徳永俊昭社長率いる新経営体制になって変わったことやAI戦略、2兆円規模を目指す鉄道事業の最前線、アメリカ現地でのロビー活動ーーその1つひとつにグローバルで戦うヒントがあるはずです。
個人的にもっとも印象に残っている話は、やはり現場の取り組み。もともと製品開発へのアプローチがまったく異なる人たちーーシステム開発などIT側の人たちと、工場で製品開発などに携わるOT(制御技術)側の人たちーーがいかにして互いを理解する努力をし、コラボレーションをしてきたのかは聞き応えがありました。話を聞いたIT側の1人は、工場を熱心に回って工場長に話を聞いているといいます。
表に出てくる話はとても華やかでグローバル。しかし、それを支えているのは、過去からの積み重ねや現場の地道な取り組みなのでしょう。
グローバル企業として躍進する日立の舞台裏で何が起きているのか。ぜひ、お手にとって読んでいただけると嬉しいです。
担当記者:倉沢 美左(くらさわ みさ)
米ニューヨーク大学ジャーナリズム学部/経済学部卒。東洋経済新報社ニューヨーク支局を経て、日本経済新聞社米州総局(ニューヨーク)の記者としてハイテク企業を中心に取材。帰国後、2006年に東洋経済新報社入社。メディア、食品、電力企業などを担当後、週刊東洋経済編集部→東洋経済オンライン編集部で副編集長、編集委員。25年4月から報道部で電機やAI業界を担当。夢は古着屋。気がつくと食事のことを考えている。

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