特集「レアアースショック 米中の電撃和解でも終わらない」を担当した野中大樹です。
スマートフォンから電気自動車、戦闘機まで、あらゆるハイテク製品に使われるレアアース。素材に少量を添加するだけで製品の性能が劇的に向上することから「産業のビタミン」などと呼ばれます。
このテーマで特集を作ろうと思ったのは、今年4月に仰天するニュースがあったからです。
世界中の国々に相互関税をかけたアメリカに、唯一、報復をしかけた中国。その中身は、ジスプロシウムやガドリニウムなどレアアース7元素の輸出規制でした。すると、あの高圧的なトランプ大統領が態度を一変させ、145%の関税を一気に115%も引き下げました。石破茂首相(当時)に「日本が備蓄するレアアースをアメリカに回してもらえないか」と頼んだともいいます。
トランプ大統領を一撃でうならせたレアアースとは何か。なぜ、レアアースの輸出規制がアメリカにとって痛打となったのか。こうした疑問を解き明かしてみようと考えました。
一つひとつのデータを確認すると、なぜ中国がレアアースを外交上の「武器」にできるのかがよくわかりました。埋蔵量の約半分が中国国内に集中し、鉱物生産は世界の7割を握っています。精錬については世界シェアが9割を超えていました。つまり、中国が輸出量を搾れば、世界中のサプライチェーンが混乱するのです。この構造こそがレアアースという「武器」の強さの正体です。
特集では、レアアース調達不安に身構える自動車業界や、業界に異変が起きている電子機器業界にフォーカスしました。また、数十年をかけて「レアアース大国」となった中国の長期戦略を読み解きました。
期待が高まる南鳥島レアアース泥の開発状況についても詳報しています。
担当記者:野中 大樹(のなか だいき)
東洋経済記者。熊本県生まれ。週刊誌記者を経て2018年、東洋経済新報社に入社。現在は統合編集部。

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