特集「商社 大異変」を担当した森創一郎です。
今期、資源市況が振るわず、総合商社では2年前の「純利益1兆円台」といった景気のいい話は聞こえてきません。AIや半導体関連企業のように今をときめく業種ではありません。ではなぜ、今、総合商社なのでしょうか。
三菱商事は8月、中西社長自身が陣頭指揮を執った国内洋上風力事業からの撤退を決めました。インフレや為替、金利の激変で風車を中心に購入予定の機材価格が高騰し、事業の採算が見込めなくなったからです。一方で、LNG事業の拡張、アメリカのシェールガス企業の大型買収を画策するなど、「王者復活」に向けてフル回転しています。
コツコツ型の伊藤忠商事は2月にセブン&アイホールディングスへの出資は断念したものの、セブン銀行への出資を決め、返す刀でジェネリック製造会社の買収にも動きました。純利益、時価総額、自己資本利益率で商社のトップに立とうとコツコツと業績を積み上げています。
資源投資で失敗を重ねてきた住友商事は9月に3000億円にのぼる資金でアメリカの航空機リースへの投資を決めたかと思えば、翌10月には傘下のSCSKへのTOB(株式公開買い付け)を発表しました。投資額は8800億円!
総合商社は絶えず、あっと驚くような話題に事欠きません。「なぜ今」というより、「常に注目していなければならない」という業界なのです。
総合商社は「コングロマリット」(事業の複合体)であることをもって「総合」なのですが、ビジネスのわかりにくさゆえに市場からの評価が下がる「コングロマリットディスカウント」にさらされ続けます。
「投資の神様」と言われるウォーレン・バフェット氏は割安に放置された商社株に注目しました。バフェット氏に「わかりやすい」と言わしめた総合商社のビジネスモデルをいかに世界の投資家に説明していくかも大きな課題です。
こうした話題を詰めこんで、7大総合商社の「今」をレポートしました。各社のトップには今の課題にどう向き合うか、今後、事業をどう伸ばしていくのか、直接聞いています。ぜひ一読ください。
担当記者:森 創一郎(もり そういちろう)
1972年東京生まれ。学習院大学大学院人文科学研究科修了。出版社、雑誌社、フリーライター、放送記者を経て2020年から東洋経済記者。東洋経済編集部副編集長。

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