週刊東洋経済

情報量と分析力で定評のある総合経済誌

担当記者より
2021年2月6日号
2021年2月1日 発売
定価 730円(税込)
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【特集】脱炭素サバイバル


いま世界中で脱炭素の動きが加速、公共投資に加え、投資家による巨額のグリーンマネーが動き始めています。日本でも菅首相が「2050年までの温暖化ガス排出ゼロ」を打ち上げました。そこでカギとなるのは「水素」です。

日本の基幹産業である自動車も電動化の加速を迫られています。水素と電気自動車(EV)を切り口に、脱炭素に向けた政府、投資家、企業の動きを徹底取材しました。

担当記者より

特集「脱炭素サバイバル」を担当した岡田広行です。昨年10月26日、菅義偉首相が施政方針演説で「2050年に脱炭素社会を作る」と宣言して以来、にわかに関心を持たれるようになったテーマです。昨年12月には「グリーン成長戦略」が公表され、洋上風力発電や電気自動車などの普及に国を挙げて取り組むことが決まりました。

中でも、水素・燃料電池は、日本が研究開発をリードしてきた分野であり、グリーン成長戦略の主軸であるとも言えます。今回の特集では、その研究開発や実用化への苦闘ぶりを、自治体や大学などの事例研究を通じて掘り下げました。

燃料電池とは、水素と酸素を化学反応することにより電気を取り出す技術で、クリーンなエネルギーとして研究開発に取り組まれてきました。日本は燃料電池の基礎研究や実用化で世界をリードしており、トヨタ自動車は燃料電池車(FCV)を世界に先駆けて発売しました。家庭用燃料電池エネファームも日本発のイノベーションです。

あまり知られていませんが、水素・燃料電池の研究開発のメッカが山梨県です。世界有数の研究実績を誇る山梨大を中心に、県の産業技術センターや企業局、燃料電池に関連する業界団体や地元企業などが一体になって、人材育成や技術開発に取り組んでいます。いわば、山梨版の「水素・燃料電池バレー」を実現しようという取り組みです。

ところが、その足元を揺るがす事態が起きています。山梨大の水素・燃料電池の基礎研究にたずさわる研究者が減る傾向にあり、技術を花開かせようという大事な時期に研究の基盤が危うくなっているというのです。定員の確保が難しく、教職員の大半が非正規職員となっていて、地に足を付けて研究に取り組むのが難しいためです。

政権は第3次補正予算で2兆円という巨額の資金をカーボンニュートラル実現のために用意しましたが、その多くは大規模プロジェクト向けに回りそうです。しかしそれだけでは不十分。奨学金の充実など、次世代技術の担い手である大学の研究者を支える仕組みこそ、必要であると強く認識しました。

担当記者:岡田 広行(おかだ ひろゆき)
東洋経済 解説部コラムニスト。1966年10月生まれ。早稲田大学卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス、海運業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

>>週刊東洋経済編集部の制作にかける思い

目次

特集
脱炭素サバイバル

再エネに加え水素・アンモニアを大活用 脱炭素戦略の産業マップ
脱炭素戦略を読み解く4つのポイント
脱炭素社会を理解するための基本用語

Part1 脱炭素で変わる世界
舵を切った日本、「独自モデル」は通用するか 脱炭素への困難な道のり
「水素・CCUS偏重に危うさ」 京都大学大学院特任教授 安田 陽
基礎研究、用途開発とも課題山積 水素・燃料電池に死角あり
2050年脱炭素戦略を問う 「官民の総力を結集し、国際競争に打ち勝つ」 経済産業相 梶山弘志
グリーンマネー3000兆円の奔流 金融が促す企業の脱炭素
グリーンマネーのキーマンが語る 「脱炭素」投資家の選択基準
 [GPIF]「環境技術など日本企業の潜在力は大」 投資戦略部次長 塩村賢史
 [ブラックロック・ジャパン]
「企業の本気度と変化を注視」 取締役CIO 福島 毅
「気候変動リスク分析も強化」 商品開発部長兼サステナブル投資推進部長 内藤 豊
グリーン戦略の鍵は水素 欧州が先行く脱炭素への道
2060年より前に実質ゼロへ 中国の成功は再エネ次第
脱炭素へ2兆ドルの巨額投資 米国が挑むグリーン革命
     
Part2 日本企業は変われるか
日本の強み・HVに「座礁資産」化のおそれ 自動車、脱炭素のジレンマ
[自動車]基幹部品の外販とトラックが鍵 トヨタ「FCV」戦略の成否
[自動車]アップル・バイドゥも参入へ 熱帯び始めたEV覇権争い 
エネルギー業界のキーマンに聞く 脱炭素戦略の勝算
「燃料アンモニア導入 火力発電を脱炭素化」 JERA社長 小野田 聡
「安価な水素製造が肝 最終形は合成メタン」 東京ガス社長 内田高史
[鉄鋼]日本の鉄鋼業は生き残れるか ゼロ炭素鉄への高すぎる壁
[商社]再エネ、水素事業に熱視線 脱炭素に挑む各社の思惑
「洋上風力で欧州子会社の知見を生かす」 三菱商事電力ソリューショングループCEO 中西勝也
[重工業]大黒柱の火力発電に強烈な逆風 水素シフトに活路求める
脱炭素で伸びる会社はどこか EV、水素、再エネ 注目70銘柄

ニュース最前線
半導体不足が自動車を直撃 急に増産できない特殊事情
ピーチが国内線を大増便 逆張り路線に透ける思惑
異例のバイデン就任式 対中国で日本への圧力増も


連載  
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|ニュースの核心|日本製鉄のTOBに見るガバナンス意識の変化|山田雄大
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|会社四季報 注目決算|今号の4社
|トップに直撃|昭和電工社長 森川宏平
|フォーカス政治|黄信号の菅政権を待つ3つの関門|塩田 潮
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|マネー潮流|デフォルト率の上昇はこれからだ|中空麻奈
|少数異見|『資本論』から見えてくる資本主義の欠点
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|リーダーのためのDX超入門|米国が圧倒する「自動運転」の現在地|山本康正
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