週刊東洋経済

情報量と分析力で定評のある総合経済誌

担当記者より
2021年3月13日号
2021年3月8日 発売
定価 730円(税込)
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【第1特集】コロナ倒産 最終局面

新型コロナの第3波による緊急事態宣言の「再延長」が決まり、経済活動への影響はより深刻になりました。ホテル、旅行、外食、アパレル、エアラインなど、さまざまな業種が大きな打撃を受けています。銀行も助ける企業、見捨てる企業の選別を水面下で始めています。

「危ない企業」をどう見破ればいいのか。「危険水域」に入った504社を対象にした独自の倒産危険度ランキングなど、迫り来る倒産ラッシュに備えるための情報を満載しました。
 

【第2特集】資生堂「魚谷体制」の光と影


国内化粧品最大手の資生堂。魚谷社長は間もなく就任8年目を迎えるが、経営体制を不安視する声が社内外で高まり始めている。

担当記者より

特集「コロナ倒産最終局面」を担当した藤原宏成です。今回の特集では、倒産をテーマに多くの企業の決算書を分析。それらの情報を基に「倒産危険度ランキング」を作成しました。元の生活に戻るのに相当な時間を要する以上、損失を吸収できる体力は非常に重要です。このランキングでは、「倒産予知モデル」に基づいて上場企業の体力を点数化し、倒産危険水準を下回る企業を掲載しています。上場企業でも、504社もの企業が倒産予備軍であることがわかりました。

この倒産予知モデル、使っているのは現在、東京国際大学で特命教授を務める白田佳子先生の「SAF2002」というモデルです。

ほかの雑誌などでよく使われているのは1968年に作られたアルトマンの「Zスコア」というモデルですが、アメリカを対象とした分析である上に、分析対象とされた倒産企業の数も33社と多くはありません。より今の日本に適したモデルはないかと、関連する論文からその引用元をたどったりしながら、いくつもの論文を読み漁り、このモデルを使うことにしました。

SAF2002モデルは1000社を超える倒産企業を分析しているうえ、分析対象とされているのも日本企業。現在の企業に対しても適用可能なモデルです。

実際に白田先生にこのモデルを見るポイントを尋ねたところ、先生が最も注目されているのは「総資本留保利益率」という指標とのこと。留保利益とは、資本の中から資本金や出資者による払込資本を除いたもので、企業がこれまでのビジネスで積み立ててきた利益を指しています。企業が本当の意味で自由に使えるお金がどのくらいあるかがわかるので、企業の体力を見ることができると同時に、どれだけ危機に備えようとしているかという経営者の姿勢も読み取ることができます。

ランキング上位には留保利益がマイナスの企業が並びます。赤字が続き、資本を蓄積できていないため、今後の借入の余力も少なく、倒産に近いということです。ただ、スコアが同程度であっても総資本留保利益率がプラスの企業は、多少は損失を吸収できるため、近い点数の企業の中では生き残りやすいといえます。

SAF2002モデルは中小企業に対しても使うことができます。ご自身のお勤め先の体力は十分か、取引先は倒産しないかなどを調べてみてはいかがでしょうか。ランキングにある上場企業の数値を参考にぜひ試してみてください。

担当記者:藤原 宏成(ふじわら ひろなる)
東洋経済記者。1994年生まれ、静岡県浜松市出身。2017年、早稲田大学商学部卒、東洋経済新報社入社。学生時代は、ゼミで金融、サークルで広告を研究。趣味はディズニー映画鑑賞とサッカー観戦。2018年10月から銀行業界を担当。

>>週刊東洋経済編集部の制作にかける思い

目次

第1特集
コロナ倒産 最終局面
資金不足企業が続出! 急増必至のコロナ倒産

Part1 危ない企業のカウントダウン
吹き飛んだインバウンド需要と上場の夢 負債額最大のコロナ破綻
[ホテル・観光]名門が相次いで資産売却 Go Toでも救えぬ惨状
[外食] 債務超過企業が続出 「悪魔の増資」に走る居酒屋
[アパレル]「レナウンの次」はどこだ? テレワーク普及で窮地
消えない「三越銀座店売却」 百貨店を襲う閉店ラッシュ
[エアライン] 繰延税金資産取り崩しの最悪シナリオ ANAが抱える2つの時限爆弾
社債が紙くずに、地銀も被害 ユニゾ倒産のカウントダウン
緊急事態宣言ショック 揺らぐ銀座の灯
あえて銀座に出店する人々
人員削減に事業、不動産も相次ぎ売却 吹きすさぶリストラの嵐
  
Part2 危ない企業の見抜き方
金融のプロが伝授する4カ条 倒産予備軍を見破れ
融資増の裏で膨らむリスク 「不良債権爆弾」を恐れる銀行
危険水域企業はここだ! 倒産危険度ランキング504社
継続性にイエローカード 疑義注記&重要事象会社一覧

第2特集
資生堂「魚谷体制」の光と影
「魚谷改革」と企業文化の摩擦
コロナ禍で7年ぶり最終赤字に 守りを鮮明にした資生堂 看板ブランド売却へ

スペシャルリポート
福島原発事故から10年 終わりなき廃炉の道のり
「拙速な作業を懸念。廃炉の最終形の明示を」 日本原子力学会 福島第一原子力発電所廃炉検討委員会委員長 宮野 廣

ニュース最前線
米長期金利急騰で株価下落 一服でも拭えない不透明感
希代のカリスマが退任 スズキが立ち向かう難局
社員の新聞補助に大ナタ 朝日新聞、赤字への危機感


連載  
|経済を見る眼|リモートで実現する副業人材の戦略活用|柳川範之
|ニュースの核心|ミャンマーのクーデターとアジアの経験|福田恵介
|発見!成長企業|大阪有機化学工業
|会社四季報 注目決算|今号の4社
|トップに直撃|ブリヂストン 取締役 代表執行役 Global CEO 石橋秀一
|フォーカス政治|民意がカギ握る菅首相の「引き際」|塩田 潮
|グローバル・アイ|見えた8つのトレンド コロナで世界はこう変わる|ジム・オニール
|INSIDE USA|始まった脱シリコンバレー コロナで加速「テックジット」|瀧口範子
|中国動態|子ども激減、「二人っ子政策」で論争|伊藤亜聖
|財新|アリババが4年ぶりに巨額社債を発行中国初の「カーボンニュートラル債」発行
|マネー潮流|はしゃぎすぎ? スーパーサイクル論|高井裕之
|少数異見|コロナとトランプが生んだ「孝行息子」の正体
|企業事件簿 |粉飾アレンジャー 不振企業に食らいつくハイエナ|高橋篤史
|知の技法 出世の作法|ロシア外務省情報局長の対日発言をどう読むか|佐藤 優
|経済学者が読み解く 現代社会のリアル|一律10万円の給付金で家計消費は増えたのか|久保田 荘、大西宏一郎、遠山祐太
|リーダーのためのDX超入門|ソフトバンクG・ニトリが大学と組んだ理由|山本康正
|話題の本|『飯舘村からの挑戦』著者 田尾陽一氏に聞く ほか
|経済クロスワード|企業の倒産
|人が集まる街 逃げる街|北海道 函館市|牧野知弘
|編集部から|
|読者の手紙 次号予告|

訂正情報

「週刊東洋経済2021年3月13日号」(3月8日発売)の広告企画ビジネスアスペクトに、以下の間違いがありました。訂正してお詫び致します。
 
6ページの広告 2段目

【誤】KDDIが51.3%を出資、沖縄の有力企業を中心とした四十数社も株主として参画してくれました。加入者数は数年で他社に追いつき、
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【正】KDDIと沖縄の有力企業を中心とした四十数社が株主として参画してくれました。加入者数はすぐに他社に追いつき、