週刊東洋経済

情報量と分析力で定評のある総合経済誌

担当記者より
2021年5月22日号
2021年5月17日 発売
定価 730円(税込)
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【第1特集】漂流する東芝

東芝に対する英投資ファンドからの買収提案をめぐる騒動は、車谷暢昭CEOの事実上の解任によりいったん収束しました。しかし、「モノ言う株主」であるファンドとの対立構造はそのまま残り、船頭が消えた東芝再建の先行きはますます見えなくなっています。

現経営陣、海外ファンド、官邸・経産省など、さまざまなプレーヤーの思惑が入り乱れる中、従業員12万人を擁する東芝はどこに行くのか。現状を多角的に描き出します。
 

【第2特集】アパレル人材 サバイバル


アパレル不況で多くの企業が厳しいリストラを迫られている。そこで働く人たちにも変革が求められている。

担当記者より

特集「漂流する東芝」を担当した高橋玲央です。2015年の不正会計疑惑の発覚以降、経営危機に陥り、再建中だった東芝。投資ファンドの買収提案は、車谷暢昭社長の辞任という驚きの展開を迎えました。新たに社長に就任した綱川智氏は車谷氏の前任。「つなぎ役」的な色彩が強く、新たな体制が固まるまでもう一波乱ありそうです。

今回の騒動をひもとけば、車谷氏が社員からも株主からも支持を失っていったことが背景に浮かび上がってきます。支持が低迷するなか、自らの地位が危なくなることを察して近しい間柄のファンドに買収を頼む。従業員12万人を抱え、日本を代表する企業のトップがすることとはにわかには信じられません。

 「なぜこんな華美なホテルなのか」。18年の中期経営計画説明会はそれまでの本社会議室からうってかわって六本木の高級ホテルの宴会場。同僚記者がこのように車谷氏に質問しましたが、車谷氏は言い訳のような言葉を並べるばかり。納得のいく答えはありませんでした。「あのときの会見を見て、車谷氏はだめだと思った」。あるアナリストはそう振り返ります。

東芝、車谷氏、投資ファンド、国、東証……。こうした騒動が起こるには、複雑なからくりがあります。どうやってファンドはもうけを取るのか。原子力や防衛などの事業を抱える東芝を国や経産省はどのように利用してきたのか。相次ぐ不正会計にもかかわらずなぜ東証は上場維持を認めたのか。社外取締役はチェック機能を果たしたのか。絡み合う関係性を丁寧に解説しました。これから先東芝に起こることを考える際に、押さえておきたいポイントを総ざらいできる誌面を目指しました。ぜひお手元に保存していただいて、折に触れて見返していただけると幸いです。

担当記者:高橋 玲央(たかはし れお)
東洋経済記者。名古屋市出身、新聞社勤務を経て2018年10月に東洋経済新報社入社。主に日立や東芝、三菱重工など重電分野を担当。半導体、電子部品などにも興味。

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週刊東洋経済とは

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『週刊東洋経済』は、変化する世の中を確かな視点で解明する総合ビジネス週刊誌です。

創刊は1895年(明治28年)、日本国内で最も歴史のある週刊雑誌でもあります。企業戦略から主要業界事情、国内外の政治経済はもちろん、近年はビジネス実用、テクノロジー、社会問題まで、経済の複雑化やビジネスパーソンの関心の広がりに対応し、幅広いテーマを取り上げています。

一方で創刊以来、一貫しているのはセンセーショナリズム(扇情主義)を排除し、ファクトにこだわる編集方針を堅持することです。「意思決定のための必読誌」を掲げ、今読むべき特集やレポートを満載し、価値ある情報を毎週発信しています。

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「健全なる経済社会を先導する」という創刊理念のもと、企業戦略やマクロ経済だけでなく、社会問題や海外情勢など幅広いテーマで特集を組み、中立的な立場で情報発信をしています。

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『会社四季報』の独自データで深掘り
約3,900社の上場企業すべてに担当記者を配置。財務情報から海外進出情報など『会社四季報』ならではのデータベースから独自の切り口で深掘りし、分析した連載や特集を『週刊東洋経済』で展開しています。

目次

第1特集
漂流する東芝 舵取りなき12万人の悲運

トップ辞任でも課題はそのまま 「次」が見えない不安

「死んだふり辞任」まで計画 車谷社長辞任の一部始終
〈図解〉東芝劇場の人物関係図

4000億円の儲けを生むLBOマジック ファンドが東芝を狙う理由
「パンドラの箱が開けられた」 ファンドは買収検討を継続中

車谷体制で不採算事業からは撤退 再成長には高いハードル
「金のなる木」は戦略不透明 宙ぶらりんのキオクシア
経済安保と投資のジレンマ 外為法は買収の障害物か
東芝に甘すぎる東証 無理な上場維持の代償

「ファンドへの偏見あったのでは」東京理科大学教授 若林秀樹
「経産省は東芝をもてあそぶな」政治経済評論家 古賀茂明

〈ケーススタディー〉東芝・日本郵政・関西電力 社外役員の通信簿

第2特集
逆風下で変革待ったなし アパレル人材 サバイバル
アダストリア会長兼社長 福田三千男
「『お似合いです』と言うだけの販売員はもう必要ない」 
〈誌上座談会〉元社員、元販売員の本音 アパレル中高年が抱いた不満と不安
社内人材との融和がカギ EC人材確保の「極意」

スペシャルリポート
iPhoneの次は電気自動車 台湾ホンハイが狙う躍進
日本企業が続々と参画 ホンハイのEVに高い期待
ティアフォー創業者、CTO 加藤真平
「ホンハイとティアフォーは“相思相愛”の関係だ」

ニュース最前線
休業要請に募る怒りと不満 百貨店に広がる「面従腹背」
大赤字のJALが強気中計 のしかかる巨額増資の重荷
アース製薬トップが明かす 脱「虫ケア」の大胆戦略


連載  
|経済を見る眼|コロナ禍でも「東京一極集中」は進む|小峰隆夫
|ニュースの核心|緑の党が台風の目となる独メルケル後継争い|中村 稔
|発見!成長企業|セーレン
|会社四季報 注目決算|今号の4社
|トップに直撃|ビジョナル社長 南 壮一郎
|フォーカス政治|「バイデン図書館」に収められるもの|軽部謙介
|グローバル・アイ|コロナ禍で広がる南北格差 放置すれば地政学リスクに|ケネス・ロゴフ
|INSIDE USA|過激批判が映す不寛容 キャンセルカルチャーとは|会田弘継
|中国動態|中国が日米の分断を図りたい理由|小原凡司
|財新|半導体ファブレスメーカーが上場へファーウェイ提携先の新型EV発表
|マネー潮流|商品相場が促すテーパリング議論|高井裕之
|少数異見|「一つの中国」原則の限界
|企業事件簿|品格なき対立劇の泥沼|高橋篤史
|知の技法 出世の作法|バイデン政権のロシア戦略をクレムリンはどうみているか|佐藤 優
|経済学者が読み解く 現代社会のリアル|巨大プラットフォーム 合併は利用者の不利益に|佐藤 進
|リーダーのためのDX超入門|アップル訴訟で見えた巨大ITの地殻変動|山本康正
|話題の本|『貧困・介護・育児の政治』著者 宮本太郎氏に聞く ほか
|経済クロスワード|東芝
|人が集まる街 逃げる街|千葉県大網白里市|牧野知弘
|ゴルフざんまい|祝マスターズ優勝 松山英樹の快挙|青木 功
|編集部から|
|読者の手紙 次号予告|

今後の発売スケジュール

  • 11/4(火) 週刊東洋経済 2025年11月8日号

訂正情報

「週刊東洋経済2021年5月22日号」(5月17日発売)に、以下の間違いがありました。訂正してお詫び致します。
 
58~59ページ ■東芝社外取締役29人の通信簿

米で原発建設会社を買収した時期
【誤】2016年度
 ↓
【正】2015年度

上記の訂正に伴い、伊丹敬之氏への採点
【誤】D評価
 ↓
【正】E評価