週刊東洋経済

情報量と分析力で定評のある総合経済誌

担当記者より
2021年9月25日号
2021年9月21日 発売
定価 730円(税込)
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【第1特集】ビジネスと人権

各種のハラスメントから少数民族への圧迫や強制労働、児童労働に至るまで企業のサプライチェーンの中で起きる人権侵害への意識が高まっています。持続可能な開発目標(SDGs)の達成のためにも「ビジネスと人権」の関係は重視されているのです。

人権リスクは国の内外を問わず発生します。大事なのは「問題発生時にすぐ対応する仕組みを準備しているか」。欧米に比べ出遅れている日本企業の現状を多角的に検証します。

 

【第2特集】超加速!新興国ユニコーン


新興国から驚きの事業を手がける成長企業が次々に登場。デジタル化が加速するリープフロッグ(かえる跳び)現象を見逃すな。

担当記者より

特集「ビジネスと人権」を担当した兵頭輝夏です。スーパーの冷凍食品売り場などでよく見かける鶏の唐揚げですが、その鶏肉を生産するタイの養鶏場で数年前、従業員に強制労働をさせていたことが発覚しました。その養鶏場は、製品の発売元である味の素の取引先企業の契約先、つまり孫請けの会社にあたります。海外のNGOの情報でそれを知った味の素は現地で立ち入り調査を行い、報告書を作成し、公表しました。ここまでの対応を行った背景には、企業価値の長期的な向上につながるという経営判断があったからだといいます。

帝人では、子会社の工場で、外国人の技能実習生が多額の手数料を負担して来日していることが発覚。入念な調査を経て、2019年から実習生の負担をなくす取り組みを始めています。取引先である米アウトドアメーカーのパタゴニアから、その対応を厳しく迫られたのが大きなきっかけでした。

国連で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)には、人権擁護がその柱の一つとして盛り込まれています。今年6月に改訂された東京証券取引所のコーポレートガバナンス・コードにも「人権の尊重」が盛り込まれました。こうした取り組みについて、欧米に大きな遅れをとっていた日本ですが、いよいよ企業にとって無視できない重要な経営課題となりつつあるのです。

サプライチェーン上の人権リスクに、外国人技能実習生の問題。味の素や帝人の取り組みは日本企業としてはまだ先進的なものかもしれません。それでも数年前までは、たとえ人権リスクを指摘されても、ほとんどの企業が実際に行動を起こすことができなかったように思います。取材を通じて、「ビジネスと人権」はこれからますますフォーカスされるテーマであることを実感しました。

担当記者:兵頭 輝夏(ひょうどう きか)
東洋経済記者。愛媛県生まれ。 東京外国語大学で中東地域を専攻。2019年入社、食品・飲料メーカーを担当。温泉や銭湯が好き。

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週刊東洋経済とは

週刊東洋経済

『週刊東洋経済』は、変化する世の中を確かな視点で解明する総合ビジネス週刊誌です。

創刊は1895年(明治28年)、日本国内で最も歴史のある週刊雑誌でもあります。企業戦略から主要業界事情、国内外の政治経済はもちろん、近年はビジネス実用、テクノロジー、社会問題まで、経済の複雑化やビジネスパーソンの関心の広がりに対応し、幅広いテーマを取り上げています。

一方で創刊以来、一貫しているのはセンセーショナリズム(扇情主義)を排除し、ファクトにこだわる編集方針を堅持することです。「意思決定のための必読誌」を掲げ、今読むべき特集やレポートを満載し、価値ある情報を毎週発信しています。

週刊東洋経済の編集方針

  1. 取材力
    当社に所属する約100人の経済専門記者が主要業界、全上場企業をカバー。国内外の経済や業界、企業などを深堀りし、他には読めない記事を提供。
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    複雑な情報やビジネス慣習、制度変化などを分析し、的確に整理。表層的事象をなぞるのではなく、経済や社会の底流で起きている構造を読み解く
  3. 中立性
    企業や業界側の立場や事情に追従することなく、本誌記者は取材対象を客観的立場で分析・評価し、ときには忖度なく切り込む。

3つのポイント

視野が広がる幅広いテーマ
「健全なる経済社会を先導する」という創刊理念のもと、企業戦略やマクロ経済だけでなく、社会問題や海外情勢など幅広いテーマで特集を組み、中立的な立場で情報発信をしています。

図解や表でわかりやすく
ビジネス誌の中で随一の規模を誇る約100人の記者集団が、「経済から社会を読み解く」スタンスで徹底取材。旬な情報を図解や表にまとめて、わかりやすく解説します。

『会社四季報』の独自データで深掘り
約3,900社の上場企業すべてに担当記者を配置。財務情報から海外進出情報など『会社四季報』ならではのデータベースから独自の切り口で深掘りし、分析した連載や特集を『週刊東洋経済』で展開しています。

目次

第1特集
SDGsが迫る企業変革 ビジネスと人権

PART1 企業行動と人権
ガバナンスコードにも明記 SDGsは「人権を重視」
ファンドとNGOが厳しい視線 経営者は人権に留意せよ 弁護士 蔵元左近
「まず企業の実態把握から 国内2700社にアンケート」 経済産業省 ビジネス・人権政策調整室長 門 寛子
「日本政府の対応に遅れ 経営の意識改革を急げ」 ヒューマンライツ・ナウ事務局長 伊藤和子
海外NGOによる通信簿 人権対応で遅れる日本企業
リスク確認に動いた味の素と花王 サプライチェーンを総点検せよ
人権リスクを軽視した日本企業 ミャンマー進出の落とし穴 

PART2 日本企業と外国人労働者
人権リスクを放置できない 技能実習制度の曲がり角
米国は実習制度を「強制労働」と批判 解決には制度廃止しかない 国士舘大学 教授 鈴木江理子
利権まみれの技能実習制度 ベトナムとの関係を正せ ジャーナリスト 出井康博
監理団体のベトナム人が激白 高額手数料で借金背負う 低賃金や重労働で失踪 出井康博
日清製粉グループで実習生トラブル「帰国措置」は適切だったのか
実習生より事態は深刻 新聞が報じない「偽装留学生」 出井康博

第2特集
超加速! 新興国ユニコーン すごすぎる世界の成長企業
内陸国から世界へ! モンゴルテックの衝撃
「目標はデジタル時代のチンギス・ハーン」 アンドグローバル 創業者 アナラ・チンバータル
爆発的な人口増加とデジタル化 超加速経済アフリカの今 
ナイジェリア席巻、解約ゼロの電子カルテ 医療データでアフリカを救う
新興国の課題解決に出番あり 日本企業のビジネスチャンス
日本は共創パートナーになれるか 新興国デジタル化の新局面   
中国に続け! 次のゲームチェンジャー 企業はここだ! 新興国のユニコーン企業マップ

スペシャルインタビュー
プリンストン大学教授 清滝信宏
「リーマン危機の淵から世界を“救った”経済学者」


ニュース最前線
相乗効果不明で負担ばかり SBIによる新生銀行買収
「独り勝ち」ヤマトに待った 佐川・日本郵便ののろし
イオン、フジ実質買収で 岡田会長が語った将来展望


連載  
|経済を見る眼|コロナ禍と社会保障のデジタル化|藤森克彦
|ニュースの核心|洋上風力が左右する日本の産業競争力|岡田広行
|発見!成長企業|ショーボンドホールディングス
|会社四季報 注目決算|今号の4社
|トップに直撃|コクヨ 社長 黒田英邦
|フォーカス政治|退陣後を見据える菅氏の「しぶとさ」|歳川隆雄
|中国動態|「第3次分配」は資本家敵視なのか|田中信彦
|財新 Opinion&News|中国の教育改革に求められるポイント
|グローバル・アイ|法の支配を壊すハンガリー EUは「追放」をためらうな|ダロン・アセモグル
|Inside USA|気候変動で自然災害が急増 切迫感募る大統領の訴え|瀧口範子
|FROM The New York Times|アフガンに迫る次の危機 金融崩壊の現実が目前に
|マネー潮流|非効率な財政支出と家計のマネー退蔵|森田長太郎
|少数異見|東証改革が生む「プライム」という新たな幻想
|知の技法 出世の作法|ロシアが自民党総裁選で河野太郎氏に注目する理由|佐藤 優
|経済学者が読み解く 現代社会のリアル|子どもの健康にも影響 2020年一斉休校の教訓|横山 泉
|話題の本|『言論統制というビジネス』著者 里見 脩氏に聞く ほか
|シンクタンク 厳選リポート|
宇宙開発・DXの躍進と「強国」の意志 米国を凌駕しつつある中国の科学技術力
「メッセージの弱さ」と「慣れ」の意味 緊急事態宣言をゲーム理論で考える
同一労賃にやや抵抗、外国人労働者には柔軟 若年層が「右傾化」しているかを検証
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今後の発売スケジュール

  • 10/27(月) 週刊東洋経済 2025年11月1日号

訂正情報

「週刊東洋経済2021年9月25日号」(9月21日発売)に、以下の間違いがありました。訂正してお詫び致します。
 
16ページ ■相乗効果不明で負担ばかり SBIによる新生銀行買収

新生銀行の定時株主総会が行われた日
【誤】6月25日
 ↓
【正】6月23日