週刊東洋経済

情報量と分析力で定評のある総合経済誌

担当記者より
2021年10月23日号
2021年10月18日 発売
定価 730円(税込)
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【特集】みずほ 解けない呪縛


今年に入って8回ものシステム障害を引き起こしたみずほ銀行。その根底には興銀、富士、第一勧業の3行統合から20年にわたって抱え続ける、組織的な病理がありました。「内ゲバ」に足を取られた結果、メガバンク間の競争に出遅れ、背後にはりそな銀行が迫ります。

上場企業を対象にした本誌の「メインバンク満足度」調査ではみずほへの不満が突出。巨大金融グループの惨状をガバナンス、営業などあらゆる面から総ざらいし、その将来像を占います。

担当記者より

特集「みずほ 解けない呪縛」を担当した藤原宏成です。2002年と2011年に2度の大規模障害を経験しているみずほだけに、今年に入ってから頻発している障害もかなり注目度が高いのではないでしょうか。最初に発生した障害2月末。すでに半年以上が経過していますが、まだまだ終わりは見えません。

なぜ、みずほで障害が起きるのか。なぜ、こんなに頻度が多いのか。システムの担当者に話を聞くと、「部品の更新を先延ばしにしている」「一部で古いシステムを使い続けている」といった衝撃の事実がわかりました。

インフラとしての役割も持っている銀行のシステムでは、安定稼働が第一。そこにはコストをかけるのが基本です。ところが、みずほはコストカットの圧力が強く、お金も人も不足しているようです。システムを直そうにも、体制が十分でないことから、そのシステム担当者は「今のままでは障害は永遠に続く」と言います。

現在の障害の連鎖は、それだけシステムを軽視してきた結果です。これに対して「リテールやシステムのわからない旧日本興業銀行勢が経営を握っているからだ」という声もたくさん聞きました。結局のところ、システム問題も3行合併から生まれた歪みのうちのひとつなのかもしれません。

そこで今回の特集では、システム障害の直接的な原因を探るだけでなく、みずほ誕生時からの歴史も振り返ります。さらに、今後のみずほはどうなっていくのか、最新の戦略や企業向けのメインバンク調査を基に分析しています。ぜひお手にとってご覧ください。 

担当記者:藤原 宏成(ふじわら ひろなる)
1994年生まれ、静岡県浜松市出身。2017年、早稲田大学商学部卒、東洋経済新報社入社。学生時代は、ゼミで金融、サークルで広告を研究。趣味はディズニー映画鑑賞とサッカー観戦。2018年10月から銀行業界を担当。

>>週刊東洋経済編集部の制作にかける思い

目次

特集
みずほ 解けない呪縛

Part1 連鎖
金融庁は怒り心頭 みずほ「異例」処分の裏側 
昔のまま手つかずの箇所も… システム障害本当の理由

Part2 呪縛
システム障害の裏にあるみずほの「病巣」
ベールに包まれた坂井FG社長の素顔 忖度を生む顔見えぬボス
人事や働き方の改革進めても みずほを悩ます人材難

Part3 宿痾
「改革マニュアル」独自入手! 中小企業捨てる改革の全貌
顧客軽視でボロ儲け 課題まみれの営業姿勢
[ 図解 ] みずほ「メガから転落」の現実味
信用リスクを不安視する声 大口融資先にくすぶる火種
横浜市長選が決定打に 幻に消えたIR1兆円計画
好業績の裏で相次ぐ不祥事 「不正」見逃し上場に加担
海外苦戦に新規事業も不発 視界不良の将来戦略

Part4 不信
[ 独自調査 ] メインバンク満足度 だからみずほは嫌われる
財務担当者の声 メインバンクへのクレーム続々
系列企業が相次ぎ離脱 加速するみずほ離れ
 [ エピローグ ] 外部招聘の現実味 どうするみずほ

スペシャルリポート
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[ インタビュー ] 米プリンストン大学名誉教授 フランク・フォンヒッペル
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訂正情報

「週刊東洋経済2021年10月23日号」(10月18日発売)に、以下の間違いがありました。訂正してお詫び致します。
 
73ページ ■系列企業が相次ぎ離脱 加速するみずほ離れ

ヒューリックをめぐる記述
【誤】旧興銀系
 ↓
【正】旧富士銀系