週刊東洋経済

情報量と分析力で定評のある総合経済誌

担当記者より
2021年11月20日号
2021年11月15日 発売
定価 730円(税込)
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【特集】学び直しの「近現代史」


日本の歴史は、直接的にも間接的にも世界の動きと連動してきました。こうした認識から世界史と日本史を融合させて教えるため、来年4月から「歴史総合」が高校社会科の必修科目になります。近現代史を対象に「日本史と世界史を、横串を通して理解する」試みです。

歴史へのこうした見方は、グローバル化に直面するビジネスパーソンにこそ求められます。第一線の研究者の最新論考や60冊を精選したブックガイドで、あなたの歴史知識をアップデートします。

担当記者より

特集「学び直しの近現代史」を担当した長谷川隆です。2022年度から高校で「歴史総合」という新しい科目が新設されるのをご存知ですか。18世紀後半以降の日本史と世界史を融合させたものです。

例えば、中国とイギリスの間で起こったアヘン戦争(1840~42年)やアロー戦争(1856~60年)はこれまで「世界史」の中で学んできました。この2つの戦争をきっかけに、中国は近代化へと舵を切っていきますが、ちょうど同じ頃、日本にはペリーが来航し(1853、54年)、開港から近代化へと政策を転換します。こちらは「日本史」で学ぶ分野。

2国ともほぼ同時期に近代化に向けた改革が進められましたが、日清戦争(1894~95年)は、結果的にその成否が問われたと見ることができます(実はそんなに簡単にいえるものではありませんが、単純化した図式ではそうなります)。
両国の戦いは、近代化がよりスピーディに進んでいた日本が勝利。日本史と世界史を融合させると、欧米列強と東アジア諸国との関係、日本と中国の近代化など、複合的な視点から歴史を学ぶことができます。 

新しい歴史科目が、18世紀後半以降の時代にフォーカスされているのにも理由があります。私たちが今生きている現代社会が抱えている課題は、そのほとんどが近現代の歴史と密接に関わっているからです。

例えば、日本ばかりでなくヨーロッパでもアメリカでも、普通選挙が始まった当初の参政権は男性にしかありませんでした。その後、世界の国々で女性の参政権が認められたのはおおむね1920年代以降です。それから100年。男女平等の世の中になったはずですが、議員は圧倒的に男性であり、平均賃金では男性と女性は相変わらず開きがあります。歴史を学ぶ中で、現代的な問いにも向き合おうというのが、歴史総合の狙いなのです。

歴史的な視点で現代の課題を考えることは、新しい科目を学ぶことになる高校生だけでなく、すべての世代にとってこれから一層求められるはずです。

担当記者:長谷川 隆(はせがわ たかし)
東洋経済記者。

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創刊は1895年(明治28年)、日本国内で最も歴史のある週刊雑誌でもあります。企業戦略から主要業界事情、国内外の政治経済はもちろん、近年はビジネス実用、テクノロジー、社会問題まで、経済の複雑化やビジネスパーソンの関心の広がりに対応し、幅広いテーマを取り上げています。

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目次

特集
学び直しの「近現代史」

PART I
歴史総合を知る
歴史総合> 世界史と日本史の融合 グローバル視点の歴史教育
「歴史の学び方が変わるはず」 ●文部科学省 初等中等教育局視学官 藤野 敦
人気ユーチューバー歴史教師が教科書を読み解く ムンディ先生(山崎圭一)の歴史総合講座
「近現代史は14年周期で動く いま伝えたい“歴史の教訓”」 ●ノンフィクション作家 保阪正康
唐の分裂やモンゴル帝国の興隆は日本を変えたか 気候変動から見た日本史 ●京都府立大学教授 岡本隆司
世界と日本の近現代史がわかる60冊

PART II
グローバル視点の日本近現代史

<明治維新>「平和な革命」はなぜ実現したのか 危機に備えた指導者たち ●東京大学名誉教授 三谷 博
<日露戦争>  知られざる陸戦の勝因 「鉄道利用」で地の利  ●慶応大学名誉教授 横手慎二
<対華21カ条要求> 遅れてきた帝国主義国家 世論におもねった外交 ●京都大学大学院教授 奈良岡聰智
<恐慌後の経済> 誤った認識で暴走した日本 「経済的孤立」という神話 ●名古屋商科大学教授 原田 泰
<日中戦争> 勝利を狙った「五号作戦」 無謀な戦力分散のツケ ●愛知大学非常勤講師 広中一成
<太平洋戦争> 悪名高きインパールの戦い 愚戦にした日本軍の未熟 ●岐阜女子大学南アジア研究センター特別研究員 笠井亮平
<高度経済成長> 再現難しく「歴史」の一部に 投資と消費の好循環で実現 ●東京大学名誉教授 武田晴人
<歴史認識> すれ違いはなぜ生じるのか 存在しない「正しい歴史」 ●神戸大学大学院教授 木村 幹

緊急インタビュー
新生銀行 社長 工藤英之
「SBIの狙いがわからない 別の提携先も探している」


スペシャルリポート
ソフトバンク「巨大ファンド」 日本投資に踏み切った必然
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ニュース最前線
急回復・絶好調の鉄鋼決算 極まる日鉄VS.トヨタの構図
米FRBが量的緩和縮小へ インフレ下で正常化の難路
ファミマがPBを大刷新 セブンに叩きつけた挑戦状


連載  
|経済を見る眼|マニフェスト選挙はどこに行った?|藤森克彦
|ニュースの核心|衆院選「分配論争」への大いなる疑問|野村明弘
|発見!成長企業|ジェイフロンティア
|会社四季報 注目決算|今号の4社
|トップに直撃|良品計画 社長  堂前宣夫
|フォーカス政治|選挙突破後の「首相指示」と官僚|軽部謙介
|中国動態|中国で重大な政策変更が続く背景|伊藤亜聖
|財新 Opinion&News|中国の「不動産税」改革に求められる透明性
|グローバル・アイ|脱炭素は過去6年で進歩ゼロ 本質論から逃げる政治の怠慢|ケネス・ロゴフ
|Inside USA|乗客急減で存続の危機 鉄道、バスにコロナの急難|安井明彦
|FROM The New York Times|米軍最高幹部を震撼させた 中国の「極超音速ミサイル」
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