週刊東洋経済

情報量と分析力で定評のある総合経済誌

担当記者より
2021年11月27日号
2021年11月22日 発売
定価 730円(税込)
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【第1特集】エネルギー危機が来る
【第2特集】電池 世界争奪戦


天然ガスなど資源価格の爆騰や各地での大規模停電が世界経済を揺るがしています。常態化するエネルギー危機に、資源小国の日本が生き残る道とは。この冬に迫る電力不足のリスクから、洋上風力やアンモニア・水素による火力発電の実力までを徹底検証しました。
 
第2特集ではEV向けの需要爆発を当て込んで大活況を呈する車載電池市場を取り上げました。脱炭素がビジネスにもたらす激動を多角的に分析し、全体像が俯瞰できる一冊です。

担当記者より

特集「エネルギー危機が来る」を担当した秦卓弥です。6年前の2015年、EU(欧州連合)の主催で、ブリュッセル、パリの気候変動の専門家らを取材する機会がありました。印象に残っているのは、夜に日本の商社、メーカー駐在員らと会った時のこと。慣れない海外取材でぐったりとした後、美味いワインを傾けながら日本語で気楽に話を聞けると思っていたら、思いもかけず厳しいお叱りを受けました。

「気候変動はこれから大変なビジネスの大転換を招くと思いますよ。そのルールを決めているのはヨーロッパなんですから、経済メディアこそもっと現地へ取材に来てください」。

その年に開かれたCOP21では、パリ協定が採択され、今世紀末の平均気温上昇を2℃未満に抑えるいわゆる「2℃目標」が設定。当時はまだほとんど聞くことのなかった「EV」や「脱炭素」という言葉は、わずか6年の間に日本のビジネス誌でも大定番の特集テーマになりました。

一方、再生可能エネルギーの導入など急速なエネルギー構造の変化は、足元では皮肉にも天然ガスや原油、石炭などの化石燃料の争奪戦をもたらす一因にもなっています。しかも、今回のエネルギー危機で最も深刻な影響を受けた地域は電力・ガス価格の高騰に見舞われた欧州です。現実の問題を前にして、脱炭素の潮流が後退することはないのでしょうか。

そんな疑問を、ドイツのボンに住む知人に投げかけてみました。回答は、「人々はたしかにエネルギー価格の上昇に不満を感じています。でもこの問題を解決するカギは、化石燃料に対してではなく、再エネのバランスを取るためのソリューションに投資を行うことです。廃棄物・バイオ燃料を使用した大規模な地域暖房ネットワークや、電気自動車でのヒートポンプ活用など工夫はいくらでもできますよ」とのこと。

彼の答えがすべてのヨーロッパ人の声を代弁しているわけではないでしょうが、これまでにない危機に対してどういったソリューションが考えられるのか。その視点には新たなビジネスのヒントが隠されていそうです。

担当記者:秦 卓弥(はた たくや)
流通、石油、総合商社などの産業担当記者を経て、2016年から『週刊東洋経済』編集部。「ザ・商社 次の一手」、「中国VS.日本 50番勝負」などの大型特集を手掛ける。19年から『会社四季報 プロ500』副編集長。21年4月から再び『週刊東洋経済』編集部。アジア、マーケット、エネルギーに関心。

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『週刊東洋経済』は、変化する世の中を確かな視点で解明する総合ビジネス週刊誌です。

創刊は1895年(明治28年)、日本国内で最も歴史のある週刊雑誌でもあります。企業戦略から主要業界事情、国内外の政治経済はもちろん、近年はビジネス実用、テクノロジー、社会問題まで、経済の複雑化やビジネスパーソンの関心の広がりに対応し、幅広いテーマを取り上げています。

一方で創刊以来、一貫しているのはセンセーショナリズム(扇情主義)を排除し、ファクトにこだわる編集方針を堅持することです。「意思決定のための必読誌」を掲げ、今読むべき特集やレポートを満載し、価値ある情報を毎週発信しています。

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約3,900社の上場企業すべてに担当記者を配置。財務情報から海外進出情報など『会社四季報』ならではのデータベースから独自の切り口で深掘りし、分析した連載や特集を『週刊東洋経済』で展開しています。

目次

第1特集
エネルギー危機が来る
[図解]エネルギー危機が移行期の新常態に

過去10年間で最低の予備率 日本の冬に迫る電力不足
「脱炭素で事業変革、2兆円を投じる」 三菱商事社長 垣内威彦

エネルギー貧困が現実問題に 欧州市民を襲う異常価格

脱炭素で突き上げられる日本 迷走「エネ基」に募る不安
「エネ基は40点、禁断の産業縮小シナリオを使った」 国際大学副学長 橘川武郎
「持たざる国」がどう生き残るか 「エネルギー戦略に意志を持て」 日本総合研究所会長 寺島実郎

サプライチェーンを構築できるか ついに動き出す洋上風力
実証研究の成果を生かせるか 浮体式洋上風力でも開発加速

火力発電ビジネスの急展開 アンモニア・水素の実力
「アジアの脱炭素、火力も不可欠」 JERA社長 小野田 聡

インフレと景気鈍化の二重苦も 世界経済に迫り来る試練
[市場のプロが分析] エネルギー危機の今後をどうみる?
「市場は来年反落を先読み シェールなど大幅増産へ」
米CMEグループ エグゼクティブディレクター兼シニアエコノミスト エリック・ノーランド
「資源投資の減退に懸念 地政学リスクもはらむ」
国際ビジネスコンサルタント 高井裕之

第2特集
電池 世界争奪戦
EVシフト加速で生まれる巨大需要

[電池メーカーのトップに聞く]
「競争は厳しいが、積極投資続ける」 エンビジョンAESCグループCEO 松本昌一
「電動化の行方を慎重に読む」 ビークルエナジージャパンCEO&COO 池内 弘

1.大型投資に踏み切れぬ「ある事情」
パナ「慎重すぎる」電池戦略

2.課題は設備投資のタイミング
電池部材「中国が席巻」でも悲観は不要だ
「正極材」で光る住友金属鉱山

3.トヨタが衝撃の発表 「EV搭載にはかなり課題あり」
検証!夢の全固体電池の実力

4.海老名SAでは「充電渋滞」も
充電器を日本で普及させるカギ
[インタビュー]ノーベル賞科学者が警鐘!
「日本の電池は崖っぷちだが、焦らず2025年以降を見据えよ」 旭化成名誉フェロー 吉野 彰

5.期待大なのは化学メーカー
電池関連「大本命」15銘柄

ニュース最前線
東芝が繰り出した新方針 会社「3分割」に残る懸念
三菱自が「赤字脱却」目前 カギ握る東南アジア攻略
キリンビールで社長交代  急きょ「大抜擢」された腕前


連載  
|経済を見る眼|中国のイノベーション創出力の行方|井上達彦
|ニュースの核心|米国インフレの複雑さと市場不安定化|大崎明子
|発見!成長企業|モビルス
|会社四季報 注目決算|今号の4社
|トップに直撃|カクヤスグループ 社長  佐藤順一
|フォーカス政治|大躍進の「維新」が抱える最大の課題|塩田 潮
|中国動態|「歴史決議」党内部に異論の可能性|益尾知佐子
|財新 Opinion&News|中国と米国は気候変動対策で協調せよ
|グローバル・アイ|ポストコロナのインフレ論 「機械化デフレ」を見落とすな|ダリア・マリン
|Inside USA|左右とも過激派は白人金持ち 統計が示す米社会分断の実像|会田弘継
|FROM The New York Times|危機的半導体不足がもたらす 自動車「生産急減」の深刻度
|マネー潮流|気候変動対策に見る中国のしたたかさ|中空麻奈
|少数異見|「正しい」敵対的買収のススメ
|知の技法 出世の作法|日本共産党の監視 公安調査庁が続ける理由|佐藤 優
|経済学者が読み解く 現代社会のリアル|感染者数予測、経済予測の信頼性をどう考えるか|新谷元嗣
|話題の本|『問題の女 本荘幽蘭伝』著者 平山亜佐子氏に聞く ほか
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