担当記者より
特集「暗号資産&NFT」を担当した中川雅博です。日々のニュースや取材先との話の中で、なんとなく耳にしていた「NFT」。Non-Fungible Tokenの略で、日本語に訳すと「非代替性トークン」です。なんじゃそりゃ、と思う方も多いと思います。現に、私もそうでした。特集を組むことになり、いよいよ向き合うことに。
とりあえず、詳しい人が集まる場所に行ってみよう。ということで年末、暗号資産交換所のbitFlyer(ビットフライヤー)社が主催する「NFTクリエイター忘年会」なる会合に参加しました。
「時代はDAOだよ!」「このNFTのアバターかわいい!」「200ETH(イーサ)突破おめでとう!」。なんだか聞き慣れない言葉が飛び交います。
参加者の顔ぶれはさまざまで、趣味でイラストを描いてNFTにして売ってみたら売れっ子になってしまったという人や、オリジナルのアバターを作って仮想空間を作ろうとしている人、20年後に飲めるようになるというウイスキーの所有権をNFTとして売っている人、などなど、知らない世界の話に完全に圧倒されてしまいました。
平たく言ってしまうと、ブロックチェーンの仕組みを使った電子鑑定書のようなもので、特定の画像や動画などのデジタルデータが唯一無二であることを示します。コピペし放題だったネットの世界で、“限定商品”をつくることができるようになったのです。
さらに、NFTを買った人が他の人に転売しても、販売額の一定割合が作者に入るようにプログラムできるのも特徴。これまでは本をブックオフで売っても、著者や出版社にはお金は入りませんでした。NFTはお金の流れを根本から変えようとしています。
ちなみに先ほど出てきた「DAO」とはDecentralized Autonomous Organizationの略で、「非中央集権の自治組織」という意味の言葉です。ブロックチェーン上で発行する「トークン」(証票、NFTもこれの一種)に議決権のような権利を持たせて、トークンの保有者が組織の運営者になるとのこと。アメリカではすでにDAOがベンチャーキャピタルから資金調達を行うなど、株式会社に代わる新たな組織形態として注目されています。
既存の枠組みではちょっと理解が難しい話ばかりですが、特集では大手企業の事例も交えながら、なるべくわかりやすく解説しました。「金儲けをしたい人のポジショントークだ」と言われることもありますが、企業や個人が動き出しているのは事実です。ぜひ本誌を手にとっていただき、新しい世界の様子を覗いてみてください。
担当記者:中川 雅博(なかがわ まさひろ)
神奈川県生まれ。東京外国語大学外国語学部英語専攻卒。在学中にアメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校に留学。2012年、東洋経済新報社入社。担当領域はIT・ネット、広告、スタートアップ。グーグルやアマゾン、マイクロソフトなど海外企業も取材。これまでの担当業界は航空、自動車、ロボット、工作機械など。長めの休暇が取れるたびに、友人が住む海外の国を旅するのが趣味。宇多田ヒカルの音楽をこよなく愛する。
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