週刊東洋経済

情報量と分析力で定評のある総合経済誌

担当記者より
2022年1月29日号
2022年1月24日 発売
定価 730円(税込)
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【特集】全解明 暗号資産&NFT


ビットコインは昨年11月に777万円の史上最高値をつけましたが、今回のブームは米国が震源です。同じ仕組みで成り立つNFT(非代替性トークン)のビジネス利用の活発化や、メタバース(仮想空間)への期待の高まりが、暗号資産への投資熱を加速させています。

これらの新技術はネットビジネスの秩序を塗り替える可能性がありますが、全容をつかむのは極めて困難です。投資対象としての価値、そしてサービスとしての可能性を徹底解明しました。
 

担当記者より

特集「暗号資産&NFT」を担当した中川雅博です。日々のニュースや取材先との話の中で、なんとなく耳にしていた「NFT」。Non-Fungible Tokenの略で、日本語に訳すと「非代替性トークン」です。なんじゃそりゃ、と思う方も多いと思います。現に、私もそうでした。特集を組むことになり、いよいよ向き合うことに。

とりあえず、詳しい人が集まる場所に行ってみよう。ということで年末、暗号資産交換所のbitFlyer(ビットフライヤー)社が主催する「NFTクリエイター忘年会」なる会合に参加しました。

「時代はDAOだよ!」「このNFTのアバターかわいい!」「200ETH(イーサ)突破おめでとう!」。なんだか聞き慣れない言葉が飛び交います。

参加者の顔ぶれはさまざまで、趣味でイラストを描いてNFTにして売ってみたら売れっ子になってしまったという人や、オリジナルのアバターを作って仮想空間を作ろうとしている人、20年後に飲めるようになるというウイスキーの所有権をNFTとして売っている人、などなど、知らない世界の話に完全に圧倒されてしまいました。

平たく言ってしまうと、ブロックチェーンの仕組みを使った電子鑑定書のようなもので、特定の画像や動画などのデジタルデータが唯一無二であることを示します。コピペし放題だったネットの世界で、“限定商品”をつくることができるようになったのです。

さらに、NFTを買った人が他の人に転売しても、販売額の一定割合が作者に入るようにプログラムできるのも特徴。これまでは本をブックオフで売っても、著者や出版社にはお金は入りませんでした。NFTはお金の流れを根本から変えようとしています。

ちなみに先ほど出てきた「DAO」とはDecentralized Autonomous Organizationの略で、「非中央集権の自治組織」という意味の言葉です。ブロックチェーン上で発行する「トークン」(証票、NFTもこれの一種)に議決権のような権利を持たせて、トークンの保有者が組織の運営者になるとのこと。アメリカではすでにDAOがベンチャーキャピタルから資金調達を行うなど、株式会社に代わる新たな組織形態として注目されています。

既存の枠組みではちょっと理解が難しい話ばかりですが、特集では大手企業の事例も交えながら、なるべくわかりやすく解説しました。「金儲けをしたい人のポジショントークだ」と言われることもありますが、企業や個人が動き出しているのは事実です。ぜひ本誌を手にとっていただき、新しい世界の様子を覗いてみてください。

担当記者:中川 雅博(なかがわ まさひろ)
神奈川県生まれ。東京外国語大学外国語学部英語専攻卒。在学中にアメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校に留学。2012年、東洋経済新報社入社。担当領域はIT・ネット、広告、スタートアップ。グーグルやアマゾン、マイクロソフトなど海外企業も取材。これまでの担当業界は航空、自動車、ロボット、工作機械など。長めの休暇が取れるたびに、友人が住む海外の国を旅するのが趣味。宇多田ヒカルの音楽をこよなく愛する。

>>週刊東洋経済編集部の制作にかける思い

目次

特集
全解明 暗号資産&NFT

[Prologue] ブーム再燃の必然
4年前とは違う3つの要素

【必修ワード】を一挙解説
暗号資産&ブロックチェーン、ステーブルコイン、DeFi、NFT、メタバース

PART1 再燃ビットコインブームの真贋
二極化する暗号資産投資家 「億り人」の最新マネー術
「冬の時代」を乗り越えた 交換所ビジネスの第2幕
[インタビュー] 
「苦しみ抜いた3年間 『NFT』が大きな光に」 bitFlyer 共同創業者 兼 bitFlyer Blockchain CEO 加納裕三
「IEO、NFTを育成 販売所に次ぐ事業の柱に」 コインチェック 共同創業者 兼 執行役員 大塚雄介
価格の変動が起きる「3つのサイン」 ビットコイン相場を読む裏技 ●マネックス証券 暗号資産アナリスト 松嶋真倫
1年で時価総額は4.5倍の17兆円に 膨張するステーブルコイン
デジタル証券で投資家保護に弾み 進化する企業の資金調達
ビットコインとは一線画す 「日の丸通貨連合」の思惑

PART2 広がるNFT・ メタバース経済圏
国内IT大手もついに本腰 花開くNFTビジネス
草の根的に急拡大 富めるクリエーターたち
[インタビュー]
「芸術家に創作資金を還元する画期的技術だ」 GMOインターネット 会長兼社長 熊谷正寿
「プロスポーツの財源は投機マネーで拡大できる」 ミクシィ 社長 木村弘毅
かつての「セカンドライフ」とは違う メタバースが生む巨大市場
バーチャルの世界で一獲千金のチャンス メタバース投資家の実態
[インタビュー]
「世界がデジタル主体に 若者が生きやすくなる」 サードバース CEO 國光宏尚
「一般の人の創造物も消費の対象になる」 クラスター CEO 加藤直人
「閉じた空間にはせず相互の往来を可能に」 フェイスブック ジャパン 代表取締役 味澤将宏 

[Epilogue] GAFAを揺さぶる「ウェブ3.0」

産業リポート
東急ハンズをのみ込むカインズ初M&Aの狙い
ホームセンター「出店競争」の知られざる白熱

ニュース最前線
下馬評を覆すトップ人事 みずほ「出直し」の茨道
日立の子会社再編が最終章 建機株を伊藤忠に売却へ
世界初の衣服廃棄禁止令 アパレル業界に迫る変革


連載  
|経済を見る眼|学生が起業を体験することの価値|井上達彦
|ニュースの核心|「EV元年」を迎えるための課題と期待|山田雄大
|発見!成長企業|GRCS
|会社四季報 注目決算|今号の4社
|トップに直撃|山田コンサルティンググループ 社長 増田慶作
|フォーカス政治|感染爆発で試される岸田政権の真価|牧原 出
|中国動態|中国が「民主」に自信を深める訳|富坂 聰
|財新 Opinion&News|中国西安の「都市封鎖」で半導体不足に拍車も
|グローバル・アイ|パンデミックで緩んだ規律 IMF融資の変質を憂う|ケネス・ロゴフ
|Inside USA|シリコンバレー最大級の詐欺 「第2のジョブズ」事件の教訓|山本康正
|FROM The New York Times|セラノス詐欺事件が映し出す シリコンバレーの虚栄
|マネー潮流|日銀も積極的に動くべき時|佐々木 融
|少数異見|リモート化で地域格差が地方にも広がるか
|知の技法 出世の作法|カザフスタンの騒擾は鎮静化 前大統領の影響力は低下か|佐藤 優
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