週刊東洋経済

情報量と分析力で定評のある総合経済誌

担当記者より
2022年6月25日号
2022年6月20日 発売
定価 730円(税込)
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【特集】不動産争奪戦


世界中からのマネー流入が止まらない中、新たな金脈をつかもうと外資系ファンドがニッポンの不動産に熱視線を注いでいます。一方で国内デベロッパーは未開拓地で大乱戦を繰り広げています。本特集では不動産業の主役が今やファンドになっている現状を受け、彼ら独自の一獲千金術、老舗ホテルや会社資産に狙いをつけるなどの外資の戦略眼を詳細に分析しました。また「渋谷」と「八重洲」を舞台とした再開発におけるデベロッパーの激突も描いています。時価総額や営業利益の増減率など5大ランキングも掲載しています。

担当記者より

特集「不動産争奪戦」を担当した梅咲恵司です。今回の特集は総38ページと、通常よりも分厚い内容になっています。日頃の現場取材に基づく、記者の考察をつづった記事の数々。実は、特集の記事の中で、企画会議の最終段階で掲載を見送ろうとしたものがあります。

68~69ページ「次の投資先を探せ」と74~75ページ「『リーマン』の教訓は生きるのか」の2本です。「次の投資先」は4つのテーマを短くまとめて2ページに収める内容だったので、総花的で、いわゆる“薄い”記事になるのではないか、という懸念がありました。「リーマンの教訓」は評論家めいた統括のようで、逆にこちらは“重く”なるのではないか、という意見もありました。

ところが、2本ともに各記者の記事に対する思いが強かったことと、「日本の不動産の将来を展望する」という企画趣旨に添った内容であることを考慮して、掲載する運びになりました。結果的に、これは正解でした。

「次の投資先」はコンパクトながらも、市場の環境変化やデベロッパーの次の戦略が浮かび上がってくる内容になりました。例えば、デベロッパー各社が注力する物流倉庫は「そろそろ頭打ちになるのでは」との見方があるものの、足元では付加価値の高い冷凍冷蔵倉庫の開発を積極化する現場の動きなどが描かれています。

「『リーマン』の教訓」は海外マネーが流れ込み、不動産ファンドが物件を巡って激しい争奪戦を繰り広げる現状に警鐘を鳴らしています。この構図は2000年代前半から2007年ごろにかけての「ミニバブル期」に似ている、というのです。取材や情報の蓄積があってこその分析ではないでしょうか。

この2本の記事を後半に据えたことで、特集全体がビシッと引き締まった印象があります。記者が丹念に取材を重ねてきた結晶である「不動産 争奪戦」。ぜひお手にとってご覧ください。

担当記者:梅咲 恵司(うめさき けいじ)
東洋経済記者。ゼネコン・建設業界を担当。過去に小売り、不動産、精密業界などを担当。『週刊東洋経済』臨時増刊号「名古屋臨増2017年版」編集長。著書に『百貨店・デパート興亡史』(イースト・プレス)。

>>週刊東洋経済編集部の制作にかける思い

目次

特集
マネー流入が止まらない! 不動産争奪戦

[プロローグ] 不動産業、今や主役は「ファンド」
[インタビュー]「日本の不動産は米国に次いで有望だ」
KKR不動産部門マネージング・ディレクター デイビッド・チョン
不動産ファンドの稼ぎ方
- 不動産ファンドとデベロッパー 意外に異なるビジネスモデル

PART1 「割安」日本を買いあされ
外資の戦略眼①【ハイリスク&ハイリターン】外資系ファンド「一獲千金」術
国内不動産投資額ランキング 日本に投資する海外投資家の顔ぶれ
外資の戦略眼②【ホテル】老舗ホテル「買収」の全内幕
[インタビュー]「改装だけが再生ではない」ブラックストーン・グループ・ジャパン 代表取締役 橘田大輔
外資の戦略眼③【会社資産】 「会社ごと」買われる不動産

PART2 デベロッパーのつばぜり合い
稼ぎ頭の「再開発」で激突 「渋谷」と「八重洲」の大乱戦
2023年の新築ビル供給は今年の「3倍」 都心オフィス、減らぬ空室
独自路線をひた走るヒューリック、大和ハウス工業 「財閥超え」狙う新興勢力
[インタビュー] デベロッパーに直撃
「オフィス空室率に一喜一憂はしない」 住友不動産 副社長 尾台賀幸
「財務指標と投資計画のバランスを取る」 大和ハウス工業 社長 芳井敬一
「東京の物件ならほぼ持ち込まれる」 ヒューリック 社長 前田隆也
価格高騰を受け高値をにらむ マンション“売り渋り”の実情

PART3 ニッポン不動産の新潮流
オフィスビルで再エネ活用急ぐ 押し寄せるSDGsの波
反対の大合唱が収まらず 神宮外苑再開発、樹木伐採の是非
広がる市場の裾野 次の投資先を探せ
・データセンター/冷凍冷蔵倉庫/戸建て/病院
企業の明暗くっきり! 5大ランキング
  1. コロナ禍前後 時価総額増加率
  2. コロナ禍前後 時価総額減少率
  3. 負債資本倍率
  4. 営業利益増加率
  5. 営業利益減少率
[エピローグ]「リーマン」の教訓は生きるのか

深層リポート
任天堂創業家vs.東洋建設 TOB攻防戦の舞台裏
資産規模は1000億円超 建設会社に変革迫る運用会社の正体

ニュース最前線
つかの間だった小康状態 再び加速する「円売り」
ドコモショップ大量削減へ 店舗潰す「3つのステップ」
ニトリがエディオンと提携 「家電攻略」へ動き出す必然


連載
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