週刊東洋経済

情報量と分析力で定評のある総合経済誌

担当記者より
2022年7月16日号
2022年7月11日 発売
定価 730円(税込)
JAN:4910201330720

【特集】自衛隊は日本を守れるか


ロシアによるウクライナ侵攻が世界を揺り動かし、東アジアでは中国の軍拡や北朝鮮のミサイル開発などにより紛争リスクが高まっています。安全保障政策と自衛隊のあり方にかつてないほど注目が集まります。本特集では焦点となる防衛費倍増論と敵基地攻撃能力について複数の専門家の見方を紹介するとともに、気になる台湾有事の可能性や北朝鮮の核とミサイルの最新動向についても解説しています。また兵站の不十分さや世界の常識とは懸け離れた装備品開発の黒歴史など、陸海空・自衛隊の抱える課題にも迫ります。

担当記者より

特集「自衛隊は日本を守れるか」を担当した長谷川隆です。本日、参院選の投開票が行われます。今回の選挙ではあまり争点になっていませんが、自民党の公約では防衛費について「GDP比2%を念頭に、5年以内に、防衛力の抜本的強化に必要な予算水準の達成を目指す」としているのを、ご存じでしょうか。普通に読めば、「防衛費を5年以内にGDP比2%」です。

現在の防衛費5兆4000億円は、GDP比で0.96%。2%となるとあと5兆円を増やすことになります。そんな増額は無理だと誰もが思っていましたが、ロシアによるウクライナ侵攻が起こり、戦争を目の当たりにしたことで風向きが変わりました。今のままでは少なすぎる、と。

自民党の中ではすでに「GDP比2%」に向け動き始めている面があります。でも具体論はまだまだこれから。ただでさえ定員割れに悩む自衛隊を増やせるのか、財源をどうするのか、これだけの予算を毎年配分することに国民の同意を得られるのか・・・。議論はまだほとんどされていません。

もう1つ、日本の防衛では大きな論点があります。「敵基地攻撃能力」、敵のミサイル基地を直接破壊できる能力を保有するかどうかです。自衛隊の原則は、相手から武力攻撃を受けた時のみ武力行使を行う「専守防衛」ですが、ミサイルの脅威に対抗するには、ミサイル攻撃を察知した時点で攻撃しなければ間に合いません。つまり「専守防衛」から踏み込むことになります。この議論は、日本の安保政策を大きく転換することになるでしょう。

これまでの日本はいずれの問題も考える必要はありませんでした。北朝鮮が最新鋭のミサイルを開発できるようになるとは、中国がここまで経済発展を遂げて軍事能力を高めることになるとは、20年前に誰が予想できたでしょうか。ここにきて日本の安全保障は重大な転換点を迎えています。国民一人ひとりがきちんと考え、議論をする必要があるのです。

担当記者:長谷川 隆(はせがわ たかし)
東洋経済記者

>>週刊東洋経済編集部の制作にかける思い

目次

特集
自衛隊は日本を守れるか

Part1 緊迫!日本の安全保障
防衛費の「GDP比2%」と敵基地攻撃能力が焦点に
[用語集] 知っておきたい新時代の安全保障講座
核共有(核シェア)/敵基地攻撃能力/
中距離弾道ミサイル/ミサイル防衛(MD)/
戦略核・戦術核/拡大抑止/核軍縮・核不拡散/
防衛装備移転3原則/経済安全保障/サイバー戦争

北朝鮮 核とミサイルの実力
[インタビュー] どうする防衛 GDP比2%?
【積極派】自民党国防部会長 宮澤博行
「防衛費の倍増は当然だ。財源は国債発行で賄える」
【慎重派】元防衛相 岩屋 毅
「金額の目標ありきは不適切。反撃能力のあり方にも疑問」

台湾有事 中国の台湾制圧は難しい。本当の勝負は「30年後」に
[談話] 日本は「台湾有事」にどう備える
同志社大学 特別客員教授 兼原信克
「台湾有事は目前の危機。核抑止を強めて多様な備えを」
NPO法人 国際地政学研究所 理事長 柳澤協二
「認識の違いを埋めよ。バランス感覚の喪失を懸念」
核配備で自信深める中国 「先制不使用」は変更も
「ハイブリッド戦争」に善戦 情報を武器にしたウクライナ

Part2 陸海空・自衛隊のリアル
兵站が不十分な自衛隊 「戦える部隊」への脱皮を
高級幹部の昇任とポスト 陸は「1選抜」が駆け上がる
世界の常識を知らない 「装備品開発」の黒歴史
韓国の武器輸出、7年で倍増
あえて「英国と組んだ」次期戦闘機の共同開発
すでに始まっている「敵基地攻撃能力」の開発
戦闘機、護衛艦、ミサイルの価格&性能 自衛隊主力装備品ガイド

産業リポート
日本企業が世界を圧倒 TSMCも頼る半導体技術
経産省が描く「青写真」 日本の半導体は巻き返せるか

産業リポート
三菱商事の「総取り」を防ぐため?洋上風力「入札ルール」 見直しに異論噴出
[インタビュー]「後出しでのルール変更は不可解」 国際大学 副学長 橘川武郎

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