週刊東洋経済

情報量と分析力で定評のある総合経済誌。

担当記者より
2022年10月29日号
2022年10月24日 発売
定価 730円(税込)
JAN:4910201351022

【特集】米中大動乱


制御困難な米国のインフレと、急失速する中国経済。21世紀の経済成長を牽引した両大国が目下大混乱に陥っています。政治的動揺もはらむ未曾有の危機が、日本に襲いかかろうとしています。本特集では現地ルポを敢行し、保守・リベラル間の溝が一層深まり、もはや「内戦前夜」と形容される米国社会の今を追いました。また中国経済を押し上げてきた「不動産バブル」がついに最終局面を迎える中で、異例の3期目を迎える習近平政権の野望に多角的に迫りました。半導体やEVなど米中相克の産業の最前線も描いています。

担当記者より

特集「米中大動乱」を担当した二階堂遼馬です。気候変動対策や人種差別、性差別──。いずれも日本ではSDGsやESGの文脈で「解決しなければいけない社会問題」として認知が広がっています。しかしアメリカでは今、そのまったく逆を行く動きが起きています。

今年3月、フロリダ州で成立した「ストップ・ウォーク・アクト(Stop WOKE Act、子どもと従業員への不正を阻止する法律)」は、人種や性差別、気候変動対策などの社会問題に「意識を高める(WOKE)」ことを禁止するものです。これにより、企業研修や学校教育で上記などの社会問題について指導をした場合、それを行ったものに対し民事訴訟を起こすことが可能になりました。白人男性の社会的地位を守る性格が強く、ミニトランプとして知られる同州のロン・デサンティス知事が主導したものです。

ダイバーシティの企業研修を行っている日本企業も訴訟を受ける対象になると言われており、あまりにも世界の流れに逆行していると思われるかもしれません。ただ2020年の大統領戦でドナルド・トランプが不正な選挙で負けたと信じ議会議事堂を襲撃した人たちがいるように、ストップ・ウォーク・アクトやデサンティス知事は、アメリカの保守派から歓迎を受けています。

この法律は8月に連邦裁判所の暫定差し止め命令が出ましたが、この先どうなるかはわかりません。差し止め命令を出した裁判官は判決文の冒頭で、「まるで Netflix のドラマシリーズ『ストレンジャー・シングス (Stranger Things)』の『裏側の世界 (upside down)』」、すなわち「ゆがんだ時空に存在するパラレルワールド」という言及をしたそうです。

インフレによる賃金上昇や経済安保に関する国産化の動きなど、日本企業がアメリカ市場で対応すべき課題は多くありますが、反ダイバーシティという「パラレルワールド」の動きも追っていかないと足元を救われかねないという事態になっています。6ページにわたる現地ルポで有権者の声を拾いながら解説していますので、ぜひご覧ください。

担当記者:二階堂 遼馬(にかいどう りょうま)
解説部記者。米国を中心にマクロの政治・経済をカバー。2008年東洋経済新報社入社。化学、外食、ネット業界担当記者と週刊東洋経済編集部を経て現職。週刊東洋経済編集部では産業特集を中心に担当。

>>週刊東洋経済編集部の制作にかける思い

目次

特集
暴発寸前! 両大国発の経済危機
米中大動乱

忍び寄る世界的景気後退 米中発のリスクが暴発寸前
[図解]米中動乱のポイントを読み解く

スタンフォード大学シニアフェロー フランシス・フクヤマが語る
米国の分断と民主主義の危機
聞き手 関西大学客員教授 会田弘継

Part1 分断広がる米国の危機
[米国現地ルポ]埋まらない保守・リベラル間の溝 「内戦前夜」の米国社会 極限に達する相互不信
オバマが語った米国の分断
潜入1年で記者は見た 「トランプ信者」とはいったい誰か ジャーナリスト 横田増生
インフレ退治は追いつくか 米国は足早に景気後退に向かう
まず英国で金融市場が混乱 世界に広がる「流動性」危機

Part2 米中相克の産業最前線
苛烈化する米中ハイテク覇権争い デカップリングできない半導体
[財新リポート]中国の「半導体キーマン」が続々連行される衝撃
インフレ抑制法で揺れる自動車業界 混乱するEV政策の行方
安全保障と経済のバランスは取れるか 電池資源の中国排除 最終的にEV価格は上昇
複合機工場の売却めぐり暗闘 日本企業は板挟み 中国の「国産化」要求

Part3 習近平3期目の陥穽
人口減で「黄金時代」が終わる 中国「不動産バブル」ついに最終局面
[インタビュー]「不動産浮上のカギは再編と都市化」 UBSウェルス・マネジメント タン・ミンラン
中国が主導する「グローバルサウス」 習近平3期目の野望 ジャーナリスト・拓殖大学教授 富坂 聰
4人の中国ウォッチャーが鋭く分析 習近平の通信簿
東京財団政策研究所 主席研究員 柯 隆/九州大学教授 益尾知佐子/
大阪経済大学教授 福本智之/ジャーナリスト 田中信彦
強権政治は恐怖の裏返し 明王朝と習政権 共通する「弱点」 京都府立大学文学部教授 岡本隆司
GDP世界一めぐりデッドヒート 日本を追い詰める米中「新冷戦」の号砲

ニュース最前線
ユニクロ「最高益」更新へ 値上げでも客足維持の底力
日興の相場操縦事件で 「三井住友FG」を襲う試練
TOBめぐる混乱が収束 シダックスに残された課題


連載
|経済を見る眼|エリザベス女王崩御と国民統合|苅谷剛彦
|ニュースの核心|英国発で「財政インフレ」が意識される大崎明子
|発見! 成長企業|プレステージ・インターナショナル
|会社四季報 注目決算|今号の4社
|トップに直撃|星野リゾート 代表 星野佳路
|フォーカス政治|米国、日銀… 為替介入は難しい|軽部謙介
|財新 Opinion&News|コロナで浮き彫り、中国の精神医療体制の問題
|グローバル・アイ|経営者はなぜ「ダークサイド」に落ちるのか?|ダロン・アセモグル
|Inside USA|選挙で無風のオバマケア、待ち受ける年の決断|安井明彦
|FROM The New York Times|追い詰められたプーチンが核兵器使用で直面すること
|マネー潮流|OPECプラスの減産合意が意味すること高井裕之
|少数異見|お金への信用はどこから生まれるか
|知の技法 出世の作法|対ウクライナ戦略を変更するロシア④|佐藤 優
|経済学者が読み解く 現代社会のリアル|22年ノーベル経済学賞 大恐慌、銀行理論の研究に|松岡多利思
|話題の本|『入管問題とは何か 終わらない〈密室の人権侵害〉』編著者 鈴木江理子氏に聞く ほか
|シンクタンク 厳選リポート|
|PICK UP 東洋経済ONLINE|
|編集部から|
|次号予告|