週刊東洋経済

情報量と分析力で定評のある総合経済誌

担当記者より
2022年11月12日号
2022年11月7日 発売
定価 750円(税込)
JAN:4910201321124

【特集】半導体 次なる絶頂


目下ブレーキのかかる半導体市況ですが、自動車向けなどの牽引で今後も需要が拡大する成長シナリオは不変です。とくに電気自動車の航続距離を左右するパワー半導体は不足が続き、自動運転には高度なロジック半導体や低消費電力で動く次世代半導体が求められます。地政学リスクから戦略物資でもある半導体。「次なる絶頂」への陣取り合戦は熱を帯び、国策支援で日本勢の巻き返しも本格化しています。本特集では偽物も流通するほど高まる希少価値、生まれ変わった日本勢の将来、国の10年戦略の全貌を描きました。

担当記者より

特集「半導体 次なる絶頂」を担当した佐々木亮祐です。「スズキのジムニーを注文したら、納期が1年半と言われた」――。最近会った知人がこんな愚痴をこぼしていました。自動車用の半導体は今なお不足が続いていますし、コロナ禍以降、ゲーム機や給湯器、信号機など、幅広い用途の半導体が不足し、経済活動が制限されました。その影響が自分のごく身近にも迫っていることをつくづく実感します。

現代的、文明的な生活は、半導体がなくては何もできません。自民党の半導体戦略推進議員連盟で会長を務める甘利明氏は、「台湾有事があれば、半導体供給が止まって世界中がパニックになる」と言います。弁舌に優れた政治家の説明とはいえ、これは大げさな話ではないのでしょう。

経済産業省の担当課長も「半導体産業はただの一産業ではない。石油や食料と同じで、途絶えたら大変なことになる」と、危機意識を持ちます。「経済安全保障」という漠然とした言葉から、具体的な例示をもって語られると、なぜ今、半導体支援の政策が盛り上がっているのか理解できます。

熊本県で建設が進むTSMCの工場は、まさに「不夜城」で、飛行機の中や、地上でも相当遠いところからでも目につくほど。私が熊本を訪れた3月の時点でも、周辺道路の渋滞が凄まじかったことを覚えています。今後も車線の拡張や鉄道の新規開業なども計画されています。巨額の投資マネーが地元に及ぼすインパクトは計り知れません。

今、半導体産業で何が起こっているのか。半導体に支えられた生活を送る一市民として、なるべくわかりやすくその全貌をまとめました。

担当記者:佐々木 亮祐(ささき りょうすけ)
1995年埼玉県生まれ。埼玉県立大宮高校、慶応義塾大学経済学部卒業。卒業論文ではふるさと納税を研究。2018年に入社、外食業界の担当や『会社四季報』編集部、『業界地図』編集部を経て、現在は半導体や電機担当。庶民派の記者を志す。趣味は野球とスピッツ鑑賞。社内の野球部ではキャッチャーを守る。Twitter:@TK_rsasaki

>>週刊東洋経済編集部の制作にかける思い

目次

特集
半導体 次なる絶頂

[プロローグ] 冬到来の市況にも負けない
始動する日本勢復活の「10年の計」

2023年前半が底か TSMC決算に見る市況動向

Part1 高まる希少価値
戦略物質となった「産業のコメ」 いまだ終わりが見えない半導体不足
偽物や不良品も大量に流通 跋扈する2次流通業者

過熱する人材争奪の最前線 回路設計者は今後必ず不足する
給与引き上げで従業員にアピール 100万円以上の年収増はざら

PC・スマホから自動車まで 今さら聞けない 半導体って何だ!?
ニュースで頻出 超入門! 用語解説

Part2 日本勢の将来
3度の大型買収で生まれ変わった 「時価総額6倍」ルネサスの野心
熾烈を極める「投資競争」キオクシアは勝てるのか

世界一の背中を追え パワー半導体で勃発する「覇権争い」
[トップ10のうち5社が日本勢] パワー半導体の世界シェア(2021年)

微細化の次は「3次元実装」 新技術でも世界が求める日本の装置と材料の強さ
[製造装置と材料は日本勢が強い] 半導体製造工程に関わる装置・材料メーカー 一覧

株価下落で投資チャンス? 成長銘柄を占う3つの視点
[3大テーマで伸びそうな25社] 最低購入金額100万円未満で成長期待のある半導体関連銘柄

Part3 国策の全貌
TSMC熊本誘致は序の口 巨額支援も辞さず 攻めに転じる政府
九州に負けじと動く地方 東北が着々と進めるリベンジ振興策

[インタビュー] 自民党 半導体戦略推進議員連盟会長 衆議院議員 甘利 明
半導体を制するものは世界を制す 「10年戦略の工程表はもうでき上がっている」

[エピローグ] 凋落してきたニッポン半導体
円安も復活を後押し ラストチャンスは今だ

深層リポート
日本の研究力が危ない! 「研究者大量雇い止め」の必然
「理研」大量リストラ 研究者が募らせる危機感

ニュース最前線
財政再建とインフレ対策 新首相は英国を救えるか
三井住友海上を悩ませる 英子会社アムリンの呪縛
制裁下のロシア向け輸出で 「中古車バブル」の大異変


連載
|経済を見る眼|新型コロナが迫る人口政策の再点検|小峰隆夫
|ニュースの核心|北朝鮮の目を日本に向ける戦略はあるのか|福田恵介
|発見! 成長企業|サカタのタネ
|会社四季報 注目決算|今号の4社
|トップに直撃|いちよし証券 社長 玉田弘文
|フォーカス政治|安倍派の密会で起きたハプニング|歳川隆雄
|中国動態|広がる「露店営業」政府も後押し|田中信彦
|財新 Opinion&News|中国党大会閉幕、「質の高い発展」への高い壁
|グローバル・アイ|「習近平独裁」で強まる「経済凋落」のシナリオ|ジム・オニール
|Inside USA|共和党内で高まる「反トランプ派」の存在感|瀧口範子
|FROM The New York Times|米金融関係者らが恐れる日本「低金利政策」の転換
|マネー潮流|英国債暴落から日本が学ぶべきこと|森田長太郎
|少数異見|読書はやはりネットより紙
|知の技法 出世の作法|国家総動員体制に向け 着々と準備を進めるロシア|佐藤 優
|経済学者が読み解く 現代社会のリアル|根付いたのは20世紀初頭 日本の「貯蓄の伝統」の正体|田中 光
|話題の本|『語学の天才まで1億光年』著者 高野秀行氏に聞く ほか
|シンクタンク 厳選リポート|
|PICK UP 東洋経済ONLINE|
|編集部から|
|次号予告|