週刊東洋経済

情報量と分析力で定評のある総合経済誌

担当記者より
2022年11月19日号
2022年11月14日 発売
定価 750円(税込)
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【特集】氾濫するPR


企業から消費者への「情報伝達」のあり方が激変しています。以前は報道関係者向けだったPR(パブリック・リレーションズ)は、今やSNSや動画配信サイトを介して消費者へ直接つながる手段になりました。6兆円の広告市場に染み出すPR会社のほか、PR TIMES、noteなどオウンドツールも隆盛を極めます。一方、テレビ、新聞など旧来型メディアは存在感の低下や人材流出などにあえいでいます。「PR漬け社会」のトレンドに乗る新興勢力と、時代に取り残されるマスメディア。人とお金の流れの変化から、主役交代の全容を追いました。
 

担当記者より

特集「氾濫するPR」を担当した森田宗一郎です。「PR」を題材にした巻頭特集は、おそらく例がありません。何度かメインライターとして巻頭特集に参加したことがある私も、今回の特集期間は今までになく苦しいものとなりました。

当初、私が企画したのは「境界薄まる報道とPR」というミニ特集。元テレビ朝日アナウンサーの富川悠太氏が、「トヨタイムズ」を展開するトヨタ自動車に移籍したことをフックに、「4~6ページでまとめてみよう」という気持ちで編集長にアイデアを出しました。

これに編集長が「巻頭特集で行こう」と食いつき、バディを組んだ同僚も「私の中では32ページのPR特集のイメージ、つきました」と自信ありげ。思ってもいなかった展開に困惑しましたが、提案した手前引き下がることはできず、PR特集という巨大な迷路に突き進むこととなりました。

まず洗礼を浴びることとなったのが、取材前のリサーチ。広報の教科書的な文献こそ手に入るものの、足元で激変するPRの世界を包括的にフォローした資料は、どこを探しても見つかりませんでした。今回は腹をくくって「PRの世界が激変しているように映るのですが、何が起きているのかまったくわからないので、どうか教えてください」と、現場の方から業界の重鎮まで、短期集中で何十人という方々に基本のキから教えを請いながら取材を進めました。

その甲斐あって、本特集では最前線の変化を「採れたて新鮮」でお届けできると同時に、ほかでは読めないものにもなったと胸を張ることができます。ぜひ、お手にとってご覧いただければ幸いです。

担当記者:森田 宗一郎(もりた そういちろう)
2018年4月、東洋経済新報社入社。文房具やキャラクター、パチンコ、出版、ラジオ業界などを取材。過去には工作機械・ロボットやドローン、エアライン、ホテル・旅行・テーマパーク、カジノ業界などを担当。

>>週刊東洋経済編集部の制作にかける思い

週刊東洋経済とは

週刊東洋経済

『週刊東洋経済』は、変化する世の中を確かな視点で解明する総合ビジネス週刊誌です。

創刊は1895年(明治28年)、日本国内で最も歴史のある週刊雑誌でもあります。企業戦略から主要業界事情、国内外の政治経済はもちろん、近年はビジネス実用、テクノロジー、社会問題まで、経済の複雑化やビジネスパーソンの関心の広がりに対応し、幅広いテーマを取り上げています。

一方で創刊以来、一貫しているのはセンセーショナリズム(扇情主義)を排除し、ファクトにこだわる編集方針を堅持することです。「意思決定のための必読誌」を掲げ、今読むべき特集やレポートを満載し、価値ある情報を毎週発信しています。

週刊東洋経済の編集方針

  1. 取材力
    当社に所属する約100人の経済専門記者が主要業界、全上場企業をカバー。国内外の経済や業界、企業などを深堀りし、他には読めない記事を提供。
  2. 分析力
    複雑な情報やビジネス慣習、制度変化などを分析し、的確に整理。表層的事象をなぞるのではなく、経済や社会の底流で起きている構造を読み解く
  3. 中立性
    企業や業界側の立場や事情に追従することなく、本誌記者は取材対象を客観的立場で分析・評価し、ときには忖度なく切り込む。

3つのポイント

視野が広がる幅広いテーマ
「健全なる経済社会を先導する」という創刊理念のもと、企業戦略やマクロ経済だけでなく、社会問題や海外情勢など幅広いテーマで特集を組み、中立的な立場で情報発信をしています。

図解や表でわかりやすく
ビジネス誌の中で随一の規模を誇る約100人の記者集団が、「経済から社会を読み解く」スタンスで徹底取材。旬な情報を図解や表にまとめて、わかりやすく解説します。

『会社四季報』の独自データで深掘り
約3,900社の上場企業すべてに担当記者を配置。財務情報から海外進出情報など『会社四季報』ならではのデータベースから独自の切り口で深掘りし、分析した連載や特集を『週刊東洋経済』で展開しています。

目次

特集
氾濫するPR
[図解] PR漬け社会がやってきた
データでわかるPRの過去・いま・未来

[インタビュー]経営者にこそPR発想が必須だ
メルカリ 会長 小泉文明
 「サービス開発とPRは成長を支える“2つの車輪”」
ファンケル 社長 島田和幸
「ダイエー中内氏の刷り込み “愛される”が最大の防御」

PART1 6兆円市場に染み出すPR会社
成長市場に新旧のプレーヤーがひしめく 大膨張「PR会社」の儲け方

[インタビュー] べクトル 会長兼社長 西江肇司
「スピード重視のツール屋として広告市場に攻め入る」

[ランキング] 約200社の実務経験者が本音で評価
6つの視点で読み解く 本当に頼れるPR会社

ニーズ高まる「危機管理広報」の難題

PART2 勝ち組企業が使い倒すオウンドツール
売り上げや認知度が爆上がり 成果を出すプレスリリースはここが違う

「じっくり読ませる」ためのコツ
自社の「秘話」をフル活用 新定番noteの必勝法

[インタビュー] PR TIMES 社長 山口拓己
「“正直さ”が問われる時代 ウソのPRはすぐにバレる」

[インタビュー] note CEO 加藤貞顕
「企業だってクリエーター 成長へメディア化は必須」

10年前と仕事が様変わり! 広報覆面座談会

PART3 存在感を奪われるマスメディア
トヨタイムズだけじゃない、見切られるオールドメディア
報道人材がPR領域に続々転職、変わる力関係

消費者との「感覚のズレ」が際立つ
メディア「不信・不振」を如実に表す4つの論点
関西大学特任教授(ネットジャーナリズム論) 亀松太郎

[インタビュー] 新興ネットメディアが直面した現実
ジャーナリスト 浜田敬子
「プラットフォームとの交渉に向け“連携”を」
ノンフィクションライター 石戸 諭
「“政権交代可能な野党”では、元々なかった」

今やPR情報が存続への「頼みの綱」 "新聞消滅列島"の行方

深層リポート
金融庁が問題視する金融商品 狙われる仕組み債
仕組み債だけではない 当局が次に狙う商品

産業リポート
三菱地所や長谷工も参入 リノベマンションが増える事情

ニュース最前線
ソウル雑踏事故で批判殺到 韓国政府に迫る大ピンチ
製鉄の脱炭素化へ切り札か 神戸製鋼所に差した光明
化粧品業界の巨大な黒子 日本に工場建設の真の狙い


連載
|経済を見る眼|成長分野への労働移動と学び直し|藤森克彦
|ニュースの核心|円安進展でも製造業の国内回帰は容易ではない|山田雄大
|発見! 成長企業|クラシコム
|会社四季報 注目決算|今号の4社
|トップに直撃|みずほ信託銀行 社長 梅田 圭
|フォーカス政治|民主政治ルールの徹底のために|山口二郎
|中国動態|習3選で台湾海峡危機はどうなるか|小原凡司
|財新 Opinion&News|中国で苦境の自営業者を新条例は救えるか
|グローバル・アイ|バブル崩壊の中国は「日本化」のわなにはまる|ケネス・ロゴフ
|Inside USA|バイデンの対中輸出規制は半導体で終わらない|ジェームズ・ショフ
|FROM The New York Times|国軍がコンサート会場爆撃 反政府軍と資源めぐる確執
|マネー潮流|各国で強まるドル高への不満|木内登英
|少数異見|日本が真に学ぶべき「英国流」とは何か
|知の技法 出世の作法|ヴァルダイ会議におけるプーチン大統領の発言①|佐藤 優
|経済学者が読み解く 現代社会のリアル|市場規模・多様性・競争が大都市の豊かさを支える|山本和博
|話題の本|『毎日のように手紙は来るけれど あなた以外の人からである 枡野浩一全短歌集』 著者 枡野浩一氏に聞く ほか
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