週刊東洋経済

情報量と分析力で定評のある総合経済誌

担当記者より
2023年2月4日号
2023年1月30日 発売
定価 780円(税込)
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【特集】大増税時代の渡り方


防衛増税から子育て増税まで大増税時代が到来しています。重税感が高まる中、「税金」とどう向き合えばいいのでしょうか。本特集では、2023年度の税制改正大綱で定められた、生前贈与の新しいルールや、24年から大幅に中身が拡充するNISAをはじめ、インボイスの影響や、値上げや支給額改定が相次ぐ社会保険などについて網羅し、それらに対する活用術や生活防衛術を徹底的に調べ上げました。新NISAに適した投資信託や、全国相続税駅別マップの最新版など役立つデータも多く盛り込んでいます。

担当記者より

「大増税時代の渡り方」特集を担当した大野和幸です。

1月23日から通常国会が始まりましたが、最大の焦点は「増税」です。岸田文雄政権は防衛費について、2023年度からの5年間で43兆円と現状の1.5倍にぶち上げたのですが、問題になったのは財源。増やす分のうち、歳出削減などで捻り出せない分については、増税で賄う方針を打ち出しました。しかし、与党である自民党内の抵抗を受け、実施については「24年以降の適切な時期」とあいまいな表現にとどまっています。

その防衛増税に隠れているものの、今回の税制改正で意外に注目されているのは、年間所得30億円を越える超富裕層に対する「最低負担措置」です。さしずめ“セレブ税”とでも言えましょうか。年収30億円の水準となれば、給与収入のみとは考えにくく、多くが土地や株の売却益、あるいは配当収入になるはず。実際に日本で該当するのはたった200~300人と推測されています。日本で所得の上位300人となると、「あの人とこの人と…」と想像も付くくらしかいません。

実は超富裕層への新税に対し、財界のある論客にインタビューを申し込んだのですが、感触はよかったものの、最終的に取材は成立しませんでした。「成功し富を持った者に税を課すと、優秀な人材が海外に出ていってしまう」との主張には、ある程度説得力はあると思ったのですが…。庶民からの反発を恐れたか、時の政権を刺激するのを避けたか、理由は定かではありません。

かように税制については、「総論賛成」「各論反対」が多いのが実情です。防衛力強化にせよ、子育て予算倍増にせよ、日本を巡る安全保障の変化や止まらない少子化を考えると、その目的にはおおむね賛成が多いはずです。しかし、誰が負担するかとなると、なかなか意見がまとまりません。

今特集では、税制改正の是非もさることながら、大増税・高負担が避けられない時代を前に、一人一人がどんな対策を打てるのか、徹底的に調べ上げ並べました。生前贈与の選択から、NISA(少額投資非課税制度)の活用まで、資産を守り資産を増やすハウツウが盛りだくさんです。ぜひ手に取ってご覧ください。

担当記者:大野 和幸(おおの かずゆき)
東洋経済 記者
ITや金融、自動車、エネルギーなどの業界を担当し、関連記事を執筆。相続や年金、介護など高齢化社会に関するテーマでも、広く編集を手掛ける。

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目次

特集
生前贈与を逃すな、 NISAで備えよ
大増税時代の渡り方


[図解] “防衛増税”の次は“子育て増税”か 重税感が増す国民 資産は賢く増やせ

PART1 富裕層から始まる「大増税」
相続7年内加算で暦年課税は不利に 精算課税に新非課税枠の衝撃
暦年課税と精算課税の組み合わせ 生前贈与の正しく賢い使い方
日本は“全員平等に貧乏”となる 30億円超富裕税に効果はない
相続で使えるが、リスクにも注意 不動産小口化商品の節税効果

[スペシャルインタビュー]
自民党税制調査会顧問、前幹事長 甘利 明
「消費増税を将来やるときには『少子化対策』を最優先する」

43兆円もの巨額を誰が賄うのか 防衛増税を国民が考えるとき
消費税、誰が払う? いくら払う? インボイスに見る期待と不安
2割納税、帳簿保存可など山盛り 猛反発で決めた負担軽減措置

EV走行距離税が人流減らす
大儲けステップンを襲う重税

[キーパーソンインタビュー]
公明党税制調査会会長 参議院議員 西田実仁
「税負担を公平化して脱格差の実現を進める」
日本赤十字社社長・全世代型社会保障構築会議座長 清家 篤
「少子化は恒久財源用い 全世代で支えるべきだ」


PART2 社会保険も年金も余裕ある高齢者を"標的"
[医療]出産一時金も年寄りが持つ時代 後期高齢者、医療費は重く
マイナ保険証で一気に使いやすく 高額療養費制度が身近になる
[介護]保険料増、自己負担2割を拡大へ 介護保険、負担増は既定路線
福祉用具がレンタルから買い取りになる日
[年金]厚生年金で支えれば済むのか 国民年金「救済」の危うい選択

[インタビュー]
野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミスト 木内登英
「防衛力強化の財源には法人・所得増税が適切」


年金額が増え、長い老後も安心 パートでも厚生年金に入れる
年金は増えても“実質目減り”する マクロ経済スライドの影響度

PART3 資産を増やす! 勝ち組投資家になる条件
[制度編] iDeCo併用で千万単位が無税に 新NISAの大盤振る舞い
[運用編] 新NISAでコツコツ積み立てる 月10万円まで、再投資も可能
[商品編] 新NISA、商品選びの3大基準 先進国、大規模、流入超に着目

つみたてNISA対象ファンド 純資産総額ベスト20/ワースト20
どれが投資に適しているか 投信 流入額・利回りランキング
つみたてNISA、買うならここだ ネット証券5社を徹底比較!

相続税「駅別」試算MAP
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