週刊東洋経済

情報量と分析力で定評のある総合経済誌

担当記者より
2023年2月18日号
2023年2月13日 発売
定価 750円(税込)
JAN:4910201330232

【第1特集】どうするエネルギー危機 どうなる脱炭素

電気料金の上昇にあえぐ日本列島の各所から悲鳴が上がっています。エネルギー価格の高騰は、産業の衰退にも直結する大問題です。エネルギー危機と脱炭素をともに解決する道はあるのでしょうか。本特集では長期化に備えるべきガス危機、電力・ガス価格の倍増に産業空洞化リスクが高まるドイツの現地リポートなどから、苛烈化するエネルギー危機の最前線に迫りました。陸上風力の自然環境破壊リスクや「再エネの切り札」洋上風力の入札にくすぶる懸念、拙速な原発回帰など、国が加速するGX戦略の歪みも描いています。
 

【第2特集】信頼される会社  CSR企業ランキング2023年版


富士フイルムホールディングス(HD)が6年ぶりの総合トップ。中外製薬が医薬品初の3位以内に。

担当記者より

特集「どうするエネルギー危機 どうなる脱炭素」を担当した秦卓弥です。

わが家ではインターネットなどの通信費を私が、電気・ガス料金を共働きの妻が支払っています。10年前に結婚したとき「だいたい同じ額だから」と深く考えずに取り決めたものです。夫婦仲にヒビが入ったのはこの冬でした。急激に上昇する電気料金によって、負担額のバランスに変化が生じたのです。

今回の特集では、取材のために検針表や電気料金のデータを5つの家庭に見せてもらいました。資源エネルギー庁によれば、冬の一般家庭の電気使用量は1日あたり平均14.2kWhで月に換算すると約420kWhになります。ただ、オール電化の家や、蓄熱暖房機、床暖房を導入したケースでは1月~2月に1000kWh以上使う家庭もちらほらありました。

「毎月の電気の支払い料金は社会保険料などと同じく天引き感覚。電気やガスは使いたい時はスイッチを押す」という家庭もあれば、「小さい子どもがいつも家にいるので床暖房は止められない」というやむにやまれぬ事情を話す方もいます。

恥ずかしながら、私自身も電気料金への意識は希薄な方でした。太陽光発電の導入拡大などによる「再エネ賦課金」が毎年増えていることや、資源価格の高騰で「燃料調整費単価」が急激に上がっていることは取材を通して理解していましたが、生活者として実感をもって知ったのは妻の怨嗟の声がきっかけでした。

今後、電気料金はどうなるのでしょうか。それは、ウクライナ戦争がいつまで長期化するかや、脱炭素によるエネルギー移行がどういった形で進んでいくかによって大きく変わってきます。2月から始まる政府の電気料金補助は家計にはありがたいですが、日本のエネルギー移行を遅らせ、財政を痛める大きな副作用もあります。

「エネルギー危機」や「脱炭素」というとどうしても遠い異国や未来の話に見えがちですが、すべては自宅の電気料金につながっています。ぜひ、お手元にとってご覧ください。

担当記者:秦 卓弥(はた たくや)
流通、石油、総合商社などの産業担当記者を経て、2016年から『週刊東洋経済』編集部。「ザ・商社 次の一手」、「中国VS.日本 50番勝負」などの大型特集を手掛ける。19年から『会社四季報 プロ500』副編集長。21年4月から再び『週刊東洋経済』編集部。アジア、マーケット、エネルギーに関心。

>>週刊東洋経済編集部の制作にかける思い

週刊東洋経済とは

週刊東洋経済

『週刊東洋経済』は、変化する世の中を確かな視点で解明する総合ビジネス週刊誌です。

創刊は1895年(明治28年)、日本国内で最も歴史のある週刊雑誌でもあります。企業戦略から主要業界事情、国内外の政治経済はもちろん、近年はビジネス実用、テクノロジー、社会問題まで、経済の複雑化やビジネスパーソンの関心の広がりに対応し、幅広いテーマを取り上げています。

一方で創刊以来、一貫しているのはセンセーショナリズム(扇情主義)を排除し、ファクトにこだわる編集方針を堅持することです。「意思決定のための必読誌」を掲げ、今読むべき特集やレポートを満載し、価値ある情報を毎週発信しています。

週刊東洋経済の編集方針

  1. 取材力
    当社に所属する約100人の経済専門記者が主要業界、全上場企業をカバー。国内外の経済や業界、企業などを深堀りし、他には読めない記事を提供。
  2. 分析力
    複雑な情報やビジネス慣習、制度変化などを分析し、的確に整理。表層的事象をなぞるのではなく、経済や社会の底流で起きている構造を読み解く
  3. 中立性
    企業や業界側の立場や事情に追従することなく、本誌記者は取材対象を客観的立場で分析・評価し、ときには忖度なく切り込む。

3つのポイント

視野が広がる幅広いテーマ
「健全なる経済社会を先導する」という創刊理念のもと、企業戦略やマクロ経済だけでなく、社会問題や海外情勢など幅広いテーマで特集を組み、中立的な立場で情報発信をしています。

図解や表でわかりやすく
ビジネス誌の中で随一の規模を誇る約100人の記者集団が、「経済から社会を読み解く」スタンスで徹底取材。旬な情報を図解や表にまとめて、わかりやすく解説します。

『会社四季報』の独自データで深掘り
約3,900社の上場企業すべてに担当記者を配置。財務情報から海外進出情報など『会社四季報』ならではのデータベースから独自の切り口で深掘りし、分析した連載や特集を『週刊東洋経済』で展開しています。

目次

第1特集
どうするエネルギー危機  どうなる脱炭素
[図解] あらゆるエネルギーコストが高騰し続ける中、日本は生き残れるか?

PART1  苛烈化するエネルギー危機
[インタビュー]  S&Pグローバル 副会長 ダニエル・ヤーギン
「エネルギー危機は長期化へ 国家の市場介入が強まる」

カルテル、顧客情報の漏洩… 大手電力で不正が横行 抜本改革へ厳罰論も
[インタビュー]「電取委の改組、送配電切り離しを」 高橋 洋

サハリン2は早晩停止のリスクも 「ガス危機」の長期化に備えよ  岩瀬 昇
電力・ガス価格倍増に製造業が悲鳴 ドイツ「産業空洞化」のリスク 熊谷 徹
「省エネ」 の切り札、ダイキンやパナが増産投資 日本の 「ヒートポンプ式暖房」 が欧州で爆売れ

[インタビュー] 日本の産業はエネルギー移行期を生き残れるか?
経団連会長(住友化学会長) 十倉雅和
内閣官房参与 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹 今井尚哉

PART2  まやかしのGX
「再エネ推進」が自然環境破壊に 国内最大級の陸上風力に地元から「待った」
[インタビュー] 風力発電最大手 副社長が語る
「風況のいい立地で 国民経済にも価値」 ユーラスエナジーホールディングス 副社長 秋吉 優

規制部門は縮小の一方、金集めに奔走
「ミニ経産省」化する環境省 杉本裕明

「再エネの切り札」を待ち受ける難路 洋上風力「入札第2弾」にくすぶる懸念
岸田政権「GX基本方針」の危うさ あまりに拙速な「原発回帰」
三菱重工が開発を主導 「革新軽水炉」は既存技術の改良型

[インタビュー]「GX基本方針」はここが間違っている
国際大学 副学長 橘川武郎/龍谷大学 教授 大島堅一

対応遅れれば投資先からの評価低減も
「うわべだけの脱炭素」に 国連から厳しい目 小西雅子

東芝や三菱地所が導入 「CO2実質ゼロ」LNGが抱える課題
"質"の担保に独自基準 東京ガス 坂上貴士/大川里枝

三井物産、伊藤忠商事が取引 バイオマス「認証偽装」の衝撃
JX金属は「都市鉱山」の活用に活路 「脱炭素」で深刻化する銅、ニッケル不足

第2特集
信頼される会社
CSR企業ランキング2023年版

■総合ランキング300
■部門別上位企業

人材活用/環境/企業統治+社会性/CSR合計/財務
■金融機関 上位30
■総合ポイント上昇率 上位7
■未上場企業 上位10

ESG推進の流れは変わっていないが...
負担増が続く環境取り組み

ニュース最前線
ソニー新社長は財務のプロ 大本命に求められる独自色
横浜銀が神奈川銀を買収へ 相次ぐ「県内再編」の意味
1000億円の下方修正 住友化学、業績急落の背景


連載
経済を見る眼|60年償還ルール変更は打ち出の小づちか|佐藤主光
ニュースの核心|医療DXは、医療現場の実情踏まえて見直しを|岡田広行
発見! 成長企業|pluszero(プラスゼロ)
会社四季報 注目決算|今週の4社
トップに直撃|三陽商会 社長 大江伸治
フォーカス政治|石橋湛山の思想を野党の結集軸に|山口二郎
中国動態|顕在化し始めた地方の「隠れ債務」|福本智之
財新 Opinion&News|改革開放を進め、国際社会との協力を強化せよ
グローバル・アイ|不必要な危険をもたらす米国の債務上限問題|ウィレム・ ブイター
Inside USA|マイクロソフト、攻めの秘策はチャットGPT|山本康正
FROM The New York Times|文化論争の標的になったチョコブランド「M&M's」
マネー潮流|今年も日本の貿易赤字は改善しないのか|佐々木 融
少数異見|総裁の退職金 「結果」は無関係なのか
知の技法 出世の作法|斎藤幸平氏による新たな『資本論』解釈④|佐藤 優
経済学者が読み解く 現代社会のリアル|人は金銭の力で歩くのか? 健康管理の行動経済学|黒川博文
話題の本|『領域を超えない民主主義 地方政治における競争と民意』 著者 砂原庸介氏に聞く ほか
シンクタンク 厳選リポート|
PICK UP 東洋経済ONLINE|
編集部から|
次号予告|

今後の発売スケジュール

  • 11/10(月) 週刊東洋経済 2025年11月15日号
  • 11/4(火) 週刊東洋経済 2025年11月8日号

訂正情報

「週刊東洋経済2023年2月18日号」(2月13日発売)に、以下の誤りがありました。訂正してお詫び致します。
 
28ページ ■中国動態 筆者:福本智之

「遵義道橋建設投資集団」の借り入れの返済条件をめぐる記述
【誤】元本を維持したうえで、返済を20年間繰り延べ、当初10年間は利息支払いも不要との条件
   ↓
【正】元本を維持したうえで、返済を20年間繰り延べ、当初10年間は利息支払いのみとの条件
64ページ ■あまりに拙速な「原発回帰」

原発の運転期間に関する規定についての記述
【誤】経産省が所管する電気事業法への規定の移し替えを了承した。
   ↓
【正】経産省が所管する電気事業法への規定の移し替えを了承しようとしている。

新たな安全規制のルールについての記述
【誤】問題がないと判断した場合にはその都度認可することとした。
   ↓
【正】問題がないと判断した場合にはその都度認可することとする。