担当記者より
特集「もうけの仕組み100」を担当した松浦大です。
東洋経済は社員300人ほどの小さな会社なので、われわれは記者も編集もさまざまな仕事を兼務しています。その中でも、大きな仕事の1つが『会社四季報』です。
私を含め、当社の記者は四季報を書くために、年4回、約4000社の決算を取材しています。担当する企業は1~3年で変わるのが通例ですが、最初の取材で必ず聞くのは「御社のビジネスモデルは何ですか?」「何事業が好採算ですか」「何が起きると、営業利益が増えるのですか」という質問です。
業界によってその視点はさまざまです。私が担当してきた業界でいえば、自動車部品は自動車の生産台数が、外食業界は食材費と人件費(この合計を「FLコスト」といいます)、鉄鋼業界は原料価格と販売価格の差(スプレット)や稼働率が、ホテル業界では客数と単価のかけ算が、それぞれ業績の大きな決定要因になります。
こうした基本的な収益構造を押さえておかないと、四季報だけでなく『週刊東洋経済』や「四季報オンライン」にしっかりした記事が書けません。
この「四季報記者が知っている4000社のビジネスモデル」を週刊東洋経済の特集にしたら、きっと読者の皆様に面白いものがお届けできるのではないだろうかと、考えました。
ただし、どうやったら特集になるのか思いつかず、数年が過ぎました。
転機が訪れたのが、2022年の晩夏のこと。私が担当している『会社四季報 業界地図』の編集作業が佳境にさしかかった時、掲載されている「もうけの仕組み」という小さな図表が目にとまりました。
このもうけの仕組みは、決して大きな図表ではありませんが、当社の記者が見ているビジネスモデルや収益の決定要因などがぎゅっとコンパクトに詰め込まれています。
「ビジネスモデルの図が、業界地図の中にあった!」――
この「もうけの仕組みを膨らませて、たくさん集めたら、きっとこれまでになく、読者に役立つ面白いものができるのではないか。この発見が今回の特集の出発点です。
今回は業界地図に載っているものを中心に100業界をピックアップ。業界地図のさまざまなノウハウを活用しながらも、週刊東洋経済らしく、粗利や利益率など数字にこだわって、図解をしました。
読者の皆様に楽しんでいただければ幸いです。
担当記者:松浦 大(まつうら ひろし)
1984年生まれ。明治大学卒、同大学院修了(商学修士)後、2009年に入社。記者としては自動車、外食、鉄鋼、ホテル・旅行、ゼネコンと住宅・住宅関連業界を担当。妻と娘、息子、オウムと暮らす。
>>週刊東洋経済編集部の制作にかける思い