担当記者より
特集「文系管理職のための失敗しないDX」を担当した長瀧菜摘です。
記者としてIT・ネット企業を長く担当・取材してきたにもかかわらず、エンジニアリングの世界とそこで働く人々について、踏み込んで理解しようと努めたことは、恥ずかしながらこれまでありませんでした。
そんな私の意識を一変させたのが、何を隠そう、わが社がシステム開発におけるある種の「失敗」に直面したこと。特集冒頭の漫画「恐怖!DXプロジェクト頓挫へのカウントダウン」も、登場する場面の一部は自社の経験をモデルにしたものです。
仮に自分が担当者だったら、ことをうまく運べただろうか?…もちろんそんな自信はありません。すべてのビジネスがデジタル化に向かう今、実際に手を動かすエンジニアでなくとも、最低限の知識を身につけておくことは重要だと痛感しました。
一方で書店に行ってみても、エンジニアを目指す人のための、あるいはレベルアップを図りたい現役エンジニアのための教本はものすごくたくさんあるのに、非IT人材のための指南書はほとんど見当たりません。
深遠なエンジニアリングの世界を隅々まで理解することはできなくとも、文系ビジネスパーソンがその入口に立つための指南書があるといいのではないか。今回の特集はそんな問題意識から生まれたものです。
「エンジニアは『何でも屋』ではない。専門外のことを聞かれれば、あなたの代わりにネットで調べるところから始まる」。多くの現役エンジニアに取材協力や寄稿をお願いする中で、胸に突き刺さった言葉です。懺悔したい事象の数々が走馬灯のようによぎりました。
取材を進める間にも、日本通運が基幹システムの開発中止と154億円の特別損失計上を発表しました。要因にはやはり、開発ベンダーとのコミュニケーション不足を挙げています。
アジャイルやDevOps、プログラミング不要のノーコードといった新しい開発手法も広がっていますが、どれも使いこなすには「基礎力」が必須。開発ベンダーや社内のエンジニアとまともに会話できる素地を身に着けるべく、本特集をご活用いただければ幸いです。
担当記者:長瀧 菜摘(ながたき なつみ)
1989年生まれ。兵庫県神戸市出身。中央大学総合政策学部卒。2011年の入社以来、記者として化粧品・トイレタリー、ドラッグストア、軽自動車、建設機械、楽器などの業界を担当。2014年8月から東洋経済オンライン編集部、2016年10月に記者部門に戻り、以降IT・ネット業界を担当。アマゾン、フェイスブック、楽天、LINE、メルカリなど、国内外の注目企業を幅広く取材。ネギ料理の食べ歩きが趣味。
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