週刊東洋経済

情報量と分析力で定評のある総合経済誌

担当記者より
2023年3月11日号
2023年3月6日 発売
定価 780円(税込)
JAN:4910201320332

【特集】大解剖! ニッポンの給料


昨年までと打って変わり、賃上げを表明する企業が相次いでいます。低迷する賃金が経済成長の阻害要因になっていることに経営者も気づき始めたのです。この賃上げを生産性上昇につなげて成長できるでしょうか。本特集では春闘に集まる異例の熱視線から賃上げラッシュの深層に迫り、若手エリートのコンサル転職やゲーム業界の賃上げレースなど日本企業の人事の新ルールと給与のリアルを大解剖しました。独自試算の主要1400社の40歳年収もランキングしています。
 

担当記者より

特集「ニッポンの給料」を担当した長谷川隆です。

大手企業を中心とした労働組合は、今まさに春闘のさなかです。組合からの要求について会社側(経営側)から回答を行う集中回答日は3月15日。ここが春闘のヤマ場になります。今年の注目ポイントは何と言っても賃上げ。昨年から顕在化したインフレ圧力に賃金水準の伸びが追いつかず、実質的な賃金水準が下がっています。

今年の春闘で例年と違うのが、回答指定日を前に組合の賃上げ要求を100%認める「満額回答」が相次いでいること。トヨタ自動車やホンダは2月下旬に満額回答し事実上決着。ほかの企業や産業でも組合要求を受け入れるところが出ています。電力や食品の高騰は家計を直撃しています。会社側にとっても従業員の士気を維持し、有能な人材を引き留めるためにも、賃上げの必要性に迫られているのです。満額回答までいかなくても、賃上げがどこまで広がるか。今年の焦点です。

特集の前半では、「賃上げラッシュの真相」として、賃上げとマクロ経済との関係について深掘りしました。「賃金をめぐる きほんのき」と称するページでは、「定期昇給とベア」「日本ではなぜ賃金が上がってこなかったのか」「生産性と賃金との関係」などについて、解説しています。

特集の後半では、企業での働き方と給与についてフォーカスしています。

そのなかでとくにご紹介したいのが、ジャーナリストの渡邊正裕氏の「ほんとにいい会社とは何か?」の記事。渡邊氏はおよそ20年の間に、企業の広報を通さずに1000人超の企業人・職業人に会い、仕事の具体的な中身や報酬、昇進システムについて取材してきました。

記事では、年収と勤続年数について着目し、企業を「ガチの成果主義企業」「知的ブルーカラー企業」「古い戦後日本企業」「プラチナ昭和企業」の4つに分類しています。「古い日本企業」とは、終身雇用&年功序列が強く残るところ。対して、「ガチの成果主義企業」とは、年収は高いが、ほとんどの社員は短期で去るところです。具体的にはグローバルな外資の日本法人です。

日本企業では成果主義を徹底するほど勤続年数が短い傾向がありますが、成果主義を取り入れつつ長い勤続年数の企業もあります。「自分の能力に自信があるタイプ」なのか、「安定した人生を送りたいか」によって、どの企業を選ぶかは違ってきます。

豊富な取材経験に裏打ちされた、日本人の働き方と社風を分析した記事です。企業名が具体的に入っており、就活生にも有用な情報がふんだんに盛り込まれています。

ほかにも、「役職定年 バブル世代の処遇と悲哀」「主要1400社 40歳推計年収ランキング」など、ニッポンの給料を大解剖しています。

ぜひお目通しください。

担当記者:長谷川 隆(はせがわ たかし)
『週刊東洋経済』編集長補佐

>>週刊東洋経済編集部の制作にかける思い

目次

特集
賃上げラッシュは日本を救うのか
大解剖! ニッポンの給料


Part1 賃上げラッシュの深層
賃上げ率は26年ぶりの高水準へ 春闘に集まる異例の熱視線
[基礎から解説]賃金をめぐるきほんの「き」

[インタビュー]「賃上げは今年で終わらない。人への投資が重要だ」
 連合会長 芳野友子

[インタビュー]「最低賃金の引き上げこそ重要。経営者は搾取をやめるべきだ」
 金融アナリスト 小西美術工藝社 社長 デービッド・アトキンソン

形骸化していた賃上げ闘争 闘わない春闘が日本経済をダメにした

Part2 日本企業 人事の新ルール
給与と働き方のリアル
【メガバンク】初任給引き上げ 若手流出に危機感
【大和ハウス工業】「飛び級」で昇進 若手抜擢の実力主義
【キヤノン】終身雇用の維持を公言 「役割給」で社員を評価
  日本生命 営業職員 7%引き上げの事情

「獺祭」メーカーが初任給9万円増 地方中小 賃上げ企業の秘訣
「給料は低くてもいい」という就活を後悔 コンサル転職若手エリートの胸の内
  激変する成長市場で人材枯渇 ゲーム業界賃上げレースの深層

転職・就職サイトの1300万件の口コミでわかった
ユニーク指標で見る いい会社

報酬水準と勤続年数に注目 ほんとにいい会社とは何か?
 
MyNewsJapan編集長 渡邉正裕
制度設計で企業も悩む 役職定年 バブル世代の処遇と悲哀
 人事ジャーナリスト 溝上憲文

[独自試算]主要1400社 40歳年収ランキング

深層リポート
ウーバー配達員25人のリアル 僕たちはなぜ働くのか

ニュース最前線
鳥インフルが外食業界直撃 卵不足で相次ぐメニュー停止
スバル「PHV撤退」否定 見えてこない電動化戦略
虎ノ門「2つのヒルズ」 評価で明暗が分かれた背景


連載
|経済を見る眼|インフレで重要となる名目と実質のずれ|柳川範之
|ニュースの核心|金正恩総書記が娘をお披露目した理由|福田恵介
|発見! 成長企業|オハラ
|会社四季報 注目決算|今週の4社
|トップに直撃|福山通運 社長 小丸成洋
|フォーカス政治|「持続可能性」を説く政権の持続力|塩田 潮
|中国動態|IT企業への介入緩和は本物か|梶谷 懐
|財新 Opinion&News|半導体大手SMIC、稼働率の急低下が鮮明に
|グローバル・アイ|ウクライナ「中立論者」はロシア帝国主義の手先|スラヴォイ・ジジェク
|Inside USA|米国民の間で拡大する「ウクライナ支持疲れ」|瀧口範子
|FROM The New York Times|守られなかった耐震基準 トルコ高級住宅崩壊の悲劇
|マネー潮流|YCC改革は日銀新総裁の最優先課題だ|木内登英
|少数異見|パワハラの恐れは指導しない理由にならない
|知の技法 出世の作法|佐藤流・情報の収集と分析の技法①|佐藤 優
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