週刊東洋経済

情報量と分析力で定評のある総合経済誌

担当記者より
2023年3月25日号
2023年3月20日 発売
定価 780円(税込)
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【特集】シン・総合商社


市場が縮小していくであろう日本に、総合商社は熱視線を送っています。各社とも空前の好決算を謳歌する中、今後の事業環境をどうみて、どこに商機があると考えているのでしょうか。本特集ではトップインタビューを交えて、コンサル、再エネ、モビリティなど、資源バブル後を見据えた5大商社の「次の一手」に迫りました。空飛ぶクルマから倉庫ロボまで、次世代産業をつくる新ビジネスや、高収入で就職人気も高い総合商社のリアルな懐事情なども描いています。
 

担当記者より

特集「シン・総合商社」を担当した森創一郎です。今回の商社特集は分析と言うより、企画した担当者の願望とも言える特集になっています。

バブル崩壊から現在まで、日本の産業構造はどう変わったのか。民間投資を喚起する成長戦略の「3本目の矢」は放たれたのか。政界からは威勢の良い経済政策は示されますが、どうも首をかしげたくなるような話ばかりです。

いま、空前の利益をあげる総合商社がこぞって国内ビジネスを推進するといいます。三菱商事の中西勝也社長は、ビジネスを通して地域経済再生に取り組み、ひいては日本の再生につなげると言います。

その言葉は本当なのか、実際に現場では何が起きているのか、秋田や熊本に足を運び、現場を取材してきました。

取材を進めると、確かに三菱商事の「デジタル回覧板」は便利で、このサービスを入り口に市役所に出入りするうちの地域の課題を掘り起こし、より大きなビジネスにつなげることができるかもしれません。秋田でも洋上風力事業は地元に様々な関連事業を生み出すことができるのではないかと実感しました。

しかし一方で、こうした地域創生の取り組みは、総合商社にとってはたして儲かるビジネスなのか、それこそ首をかしげたくなる話ばかりでした。ただ、歴史をひもとけば、儲かる、儲からないにかかわらず日本の産業創出を資本面で支えたのは総合商社だったことも事実です。

20代でボーナスが500万円超という話にも驚かされましたが、空前の利益をあげた商社が国内市場に注視していることは、日本人の一人として嬉しいチャンスに思えます。

今年中学校に上がる息子が、目を輝かせて生き続ける未来がまだ日本で描けるのか。経済界が率先して国の再生に取り組まねばならない時代なのかもしれません。

担当記者:森 創一郎
1972年東京生まれ。学習院大学大学院人文科学研究科修了。出版社、雑誌社、フリー記者を経て2006年から北海道放送記者。2020年7月から東洋経済記者。

>>週刊東洋経済編集部の制作にかける思い

目次

特集
「国内回帰」で掘り起こす新鉱脈
シン・総合商社


[プロローグ]三菱商事・三井物産は純利益1兆円超え
空前の好決算下での「国内回帰」の深層
稼ぎ頭の海外でリスクが高まる。

PART1 新鉱脈を探せ!
川下経営の足場は国内にあり
総合商社の「重鎮」が語る
国内市場の期待と不安
[インタビュー]伊藤忠商事会長CEO 岡藤正広
「足元を固めないとチャンスを逃す」


①コンサル(情報)で稼ぐ
「群戦略」で一気通貫  アクセンチュアに対抗 伊藤忠、コンサルの心眼
蓄電池6万台がつながり大規模電源に 苦節26年、蓄電池ビジネスの新境地
[インタビュー]伊藤忠商事 社長 石井敬太「蓄電池ビジネスは広がっていく」

②再エネで稼ぐ
[野望その1]35年ぶり国内支店も始動
洋上風力で「街おこし」狙う
三菱商事の思惑

[野望その2 ]三菱・丸紅が続々と… 洋上風力は本当に稼げるのか
なるか地域問題解決 三菱商事が高齢化地域でデジタル活用の訳
[インタビュー]三菱商事 社長 中西勝也 「洋上風力は稼げるビジネスだ」

③食・健康で稼ぐ
もう資源一本足打法とは言わせない 三井物産、食・健康をつなぐ力
[インタビュー]三井物産 社長 堀 健一 「『組み合わせ技』で領域拡大」

④不動産で稼ぐ
量子コンピューターも活用
ソフト力で物流施設を磨く
住友商事の深謀遠慮

[インタビュー]住友商事デジタル事業本部新事業投資部 テクノロジーディレクター
寺部雅能 「量子コンピューターの可能性は無限」
[インタビュー]住友商事 社長 兵頭誠之
「量子コンピューターでゲームチェンジを起こす」

⑤モビリティーで稼ぐ
モビリティーで過疎地域を変える
丸紅が本気で挑む
オンデマンド交通革命

明治産業を完全子会社化 丸紅、「ヨーグレット」取得の焦点
[インタビュー]丸紅 社長 柿木真澄 「モビリティービジネスで日本の課題を克服する」

PART2 総合商社のヒト・モノ・カネ
空飛ぶクルマ、物流DX… 商社の投資が次世代産業をつくる
TOTOインディアでの奮闘 インドで黒子役に徹する物産マン
商社の社風と個性 得意分野も各社各様 シン・キャラクター図鑑
[匿名座談会]資源高でボーナス500万円 リアルな懐事情と商社の裏側
[エピローグ]事業投資で日本に活力を 総合商社が向かう次世代

ニュース最前線
利上げの最中に銀行が破綻 FRBが抱える新たな難題
旭化成、20年ぶり最終赤字 巨額減損が「悪くない」理由
日産「不平等条約」解消も 交渉過程で乱れた足並み


連載
|経済を見る眼|社会保障で重要性が増す「住まい政策」|藤森克彦
|ニュースの核心|岸田政権は「原発回帰」で曖昧な説明を改めよ|岡田広行
|発見! 成長企業|フーディソン
|会社四季報 注目決算|今週の4社
|トップに直撃|味の素 社長 藤江太郎
|フォーカス政治|密約を暴いた西山太吉が遺したもの|山口二郎
|中国動態|習政権の成果と国民の静かな不満|富坂聰
|財新 Opinion&News|企業の活性化と内需の拡大が急務である
|グローバル・アイ|マリアナ・マッツカート/ロージー・コリントン
|Inside USA|「TikTok」禁止法案の裏にある安保上の懸念|山本康正
|FROM The New York Times|アプリ決済では欧米を圧倒 インド「DX投資」のすごみ 
|マネー潮流|再び米インフレ懸念注目なら円安再来も|佐々木融
|少数異見|『回顧録』から浮かぶ日ロ交渉の蹉跌 
|知の技法 出世の作法|佐藤流・情報の収集と分析の技法3|佐藤 優
|経済学者が読み解く 現代社会のリアル|労働者の移動は起こるのか リスキリングの効果を分析|足立大輔
|話題の本|『データ思考入門』著者 荻原和樹氏に聞く ほか
|シンクタンク 厳選リポート|
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|ゴルフざんまい|迷ったぶんだけボールは曲がる
|編集部から|
|次号予告|

訂正情報

「週刊東洋経済2023年3月25日号」(3月20日発売)に、以下の誤りがありました。訂正してお詫び致します。
 
42ページ ■5大総合商社の連結純利益推移
2020年度の純利益順位
【誤】3位 三菱商事 1725億円
   4位 丸紅 2253億円
   ↓
【正】3位 丸紅 2253億円
   4位 三菱商事 1725億円