担当記者より
特集「ChatGPT 仕事術革命」を担当した印南志帆です。
「ChatGPTなどの生成AIを業務に活用していますか?」
今回、ChatGPTの仕事への活用に関する特集を作るにあたって、大手企業を中心とする複数社にこんな質問を投げかけてみました。
非常にシンプルな質問をしたつもりだったのですが、各社の担当記者は想像以上に回答を得るのに難航していました。そうして集めてもらった回答を見ると、「回答を差し控える」「企業名を明らかにしないことを条件」といったコメントが散見。
さらには、当初「利用を許可していない」と回答していたのに、4月に入って「許可制で利用可」「利用を検討」などとポジティブなトーンでの回答に修正してきた企業も1社や2社ではありません。
4月10日には、ChatGPTの生みの親である米オープンAIのサム・アルトマンCEOと岸田首相が面談したとテレビなどで大きく報じられました。同日には、松野官房長官が政府でのChatGPTの利用を「懸念点が解消すれば検討する」とも発言しています。
こうした「お墨付き」を受けて、導入にはまだ懸念があるが、「利用不許可」と答えて“遅れている”という印象を与えたくない…という広報担当者の葛藤が垣間見えます。
取材で改めて認識したことですが、ChatGPTは社会全体を大きく進歩させていくでしょう。紀元前を示す「B.C」がアフター・キリストの略であるように、「B.C」(ビフォアー・ChatGPT)という概念が生まれるかもしれません。
歴史的転換点の今、企業が怠ってはならないのは「この技術でどんな未来が訪れるか」という長期的な視点を持つことです。活用に慎重になり過ぎる必要はありませんが、ブームに流されて、というのは危険なスタンスである予感がしています。
「正しく恐れて、知ろう、使おう」――。今回の特集におけるキーコンセプトです。
担当記者:印南 志帆(いんなみ しほ)
早稲田大学大学院卒業後、東洋経済新報社に入社。流通・小売業界の担当記者、東洋経済オンライン編集部、電機、ゲーム業界担当記者などを経て、現在は『週刊東洋経済』や東洋経済オンラインの編集を担当。過去に手がけた特集に「会社とジェンダー」「ソニー 掛け算の経営」「EV産業革命」などがある。保育・介護業界の担当記者。大学時代に日本古代史を研究していたことから歴史は大好物。1児の親。
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