【特集】漂流するセブン＆アイ
小売業初の売上高11兆円超を達成したセブン＆アイですが、物言う株主の攻勢を受けて防戦一方。過去の遺産の処理で袋小路にはまり、その先行きは不透明です。本特集ではコンビニの商品開発に必要だと主張するヨーカ堂再建策の成否や、無期限延期で行き詰まったそごう・西武売却のお粗末な顛末の裏側を描き出しました。また社内からも疑問の声が上がる井阪社長体制のガバナンス不全の実態にも迫り、セブン＆アイの進むべき道について提言しています。
担当記者より
特集「最高益に忍び寄る影 漂流するセブン＆アイ」を担当した田島です。コンビニのセブン‐イレブンにスーパーのイトーヨーカ堂、そして百貨店のそごう・西武などさまざまな業態を傘下に持つセブン&アイ・ホールディングスは今、大きく揺れています。セブン＆アイをグループ全体で見ると、小売業で初めて売上高11兆円を突破し最高益を記録するなど絶好調。にもかかわらずなぜ揺れているのかといえば、アクティビスト（物言う株主）から株主提案を受け、社長以下4人の取締役の実質的な退任を要求されているからです。もちろんセブン＆アイはこの提案に反対。今、委任状争奪戦（プロキシーファイト）が過熱しています。
しかしアクティビストの真の狙いは、好調なセブン‐イレブンだけを分離・独立させ、ヨーカ堂やそごう・西武を切り離せというもの。なぜならセブン‐イレブン以外の事業は不採算を極め、赤字を垂れ流し、足を引っ張っているから。そうした状況を解決しない経営陣に「退場」を促しているというわけです。
取材を進めると、そうした改革を決断できない経営陣の実態が浮き彫りになりました。新たに構造改革策を打ち出していますが、果たして実行して結果を出すことができるのかはなはだ疑問が残ります。そうした状況を余すことなくお伝えする今回の特集の発売日から10日後にセブン＆アイの株主総会が開催され、株主たちの判断が下されます。その前に、是非、お手にとってセブン＆アイの現状をお読みいただけたらと思います。
担当記者：田島 靖久（たじま やすひさ）
週刊東洋経済編集部副編集長。大学卒業後、放送局に入社。記者として事件・事故を担当後、出版社に入社。経済誌で流通、商社、銀行、不動産などを担当する傍ら特集制作に携わる。2020年11月に東洋経済新報社に入社し現職。
目次
特集
最高益に忍び寄る影 漂流するセブン&アイ
[prologue] 追い詰められるセブン
【図解】セブン&アイを取り巻く"三重苦"
防犯強化と商品開発がカギ
スピードウェイに未来はあるのか
PART1 呪縛
コンビニの商品開発に必要だと主張する ヨーカ堂再建策の成否
[インタビュー]「井阪社長は退任いただき 「選択と集中」を進めよ」
バリューアクト・キャピタル パートナー デイビッド・ロバート・ヘイル
ヨーカ堂店舗改装最前線 アパレル撤退後は「食&薬」で攻める
[インタビュー] 「社員と痛みを分かち合い 改革を進める覚悟がある」
セブン&アイ・ホールディングス 専務 伊藤順朗
祖業の衣料品から撤退 アパレルメーカーの本音
ヨーカ堂の救世主か 隠し球のミニスーパー 流通アナリスト 中井彰人
PART2 隘路
無期限延期で行き詰まり そごう・西武売却のお粗末
1年以上の漂流で店舗は劣化 取り残される従業員のいら立ち
[インタビュー]「雇用維持、事業継続が最優先」
そごう・西武労働組合 中央執行委員長 寺岡泰博
塗り替わる家電量販地図 池袋を狙うヨドバシの深慮遠謀
[インタビュー]「競争力の源泉であるヨーカ堂は絶対に残す」
セブン&アイ・ホールディングス 社長 井阪隆一
PART3 不全
社内からも上がる疑問の声 井阪体制の危うい統治
鈴木・井阪両氏が果たした歴史的和解
「資本と経営の分離」の真実 伊藤雅俊と鈴木敏文 暗闘の半世紀
[インタビュー] 「商人と革命児の両輪が あったから成長できた」
東京大学 名誉教授 伊藤元重
[epilogue] セブン&アイの進むべき道
スペシャルリポート
「安すぎた」ファミマTOB 伊藤忠vs.特別委 攻防の内幕
金融ジャーナリスト 伊藤 歩
深層リポート
ChatGPTと向き合う世界 AI規制論議の混沌
[インタビュー] 「運営の透明性は不可欠 AIは国家の命運をも左右」
慶応大学大学院 教授 山本龍彦
スペシャルインタビュー
映画監督 山田洋次
91歳を迎えた監督が語る 「寅にとって不幸な時代」
ニュース最前線
ヤフー・LINEに迫る 「プライム脱落」の現実味
中国市場で大不振の三菱自 撤退検討を社長が示唆
連載
｜経済を見る眼｜新データで考える人口問題｜小峰隆夫
｜ニュースの核心｜ウクライナのTPP加盟問題と広島サミット｜西村豪太
｜発見！ 成長企業｜トレジャー・ファクトリー
｜会社四季報 注目決算｜今週の4社
｜トップに直撃｜小林製薬 社長 小林章浩
｜フォーカス政治｜日銀新総裁はマクナマラになれるか｜軽部謙介
｜中国動態｜民営企業の政治不信が経済の足かせ｜福本智之
｜財新 Opinion&News｜地方債務が深刻化、政府の構造改革を進めよ
｜グローバル・アイ｜マクロン仏大統領「対中独自外交」の勘違い｜クリス・パッテン
｜Inside USA｜実は空振りだったトランプの「人種差別」発言｜会田弘継
｜FROM The New York Times｜SVBで終わらぬ金融危機 銀行「破綻連鎖」という憂鬱
｜マネー潮流｜続く金融不安と新たなリスクの芽｜中空麻奈
｜少数異見｜陸自ヘリ事故 忘れられている視点
｜ヤバい会社烈伝｜ネットワークビジネス 世の中やっぱねずみ算式よ！｜金田信一郎
｜知の技法 出世の作法｜佐藤流・情報の収集と分析の手法⑩｜佐藤 優
｜経済学者が読み解く 現代社会のリアル｜オークション成否に影響 開始価格というシグナル｜土橋俊寛
｜話題の本｜『どんがらトヨタエンジニアの反骨』著者 清武英利氏に聞く ほか
｜シンクタンク 厳選リポート｜
｜PICK UP 東洋経済ONLINE｜
｜編集部から｜
｜次号予告｜
最高益に忍び寄る影 漂流するセブン&アイ
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