週刊東洋経済

情報量と分析力で定評のある総合経済誌

担当記者より
2023年7月15日号
2023年7月10日 発売
定価 800円(税込)
JAN:4910201330737

【特集】逆襲の銀行


長らく停滞を続けていた銀行に転機が訪れています。悲願の金利上昇が目前に迫り、投資家の注目も集まっています。構造不況から脱せるか、土壇場を迎えた業界の今を追いました。本特集ではみずほの住宅ローン「削減」の真意など3メガバンクの新戦略をトップインタビューと併せて描き、神奈川、長野、青森など地銀の県内再編の地殻変動をルポしました。割安な銀行株を狙う投資家の正体や、厳罰が下った地銀の「仕組み債」販売にも迫っています。最新版の地銀実力ランキングも一挙掲載しました。

担当記者より

特集「逆襲の銀行」を担当した一井です。異変、最終局面、呪縛、瀬戸際……。近年の銀行特集の表題を飾った言葉です。今回は打って変わって「逆襲」。意図的にトーンを変えました。

理由の1つは、国内でもいよいよ金利上昇の兆しがあること。今年に入って、物価上昇率は日本銀行が目標とする2%をすでに超えています。植田和男総裁は6月28日の欧州中央銀行フォーラムにおいて、2024年もインフレが続くという「確信が持てれば、政策変更の理由になる」と述べました。

低金利政策が収益の重石となっていた銀行業界にとってはまさに干天の慈雨。各行は金利上昇の影響について、早くもソロバンを弾いています。短期金利が0.1%上がるだけでも、地銀で数十、メガなら数百億円もの増益効果をもたらすとの試算もあります。

もう1つはPBR1倍割れ問題です。東京証券取引所は3月末、上場会社に対して株価や資本コストを意識した経営を求める通知を発出しました。低金利に人口減少。銀行経営が逆風にさらされていることは確かで、「金利が上がらなければ株価は上がらない」といった諦めの声も聞かれます。

とはいえ、企業価値向上に向けた方策は、本当に何も残されていないのか。東証の要請を受けて、時価総額の小さい地方銀行までもが自問自答を始めました。適正な自己資本の水準はどれくらいか、成長投資や株主還元と財務規律をどう両立させるか。銀行の目線は、徐々に資本市場へと向きつつあります。転換点にある銀行業界はどこへ向かうのか、ご笑覧いただければ幸いです。
 

担当記者:一井 純(いちい じゅん)
東洋経済記者。不動産業界担当。ビル、マンション、商業施設、物流施設、証券化、再開発など。趣味は写真と業務スーパー訪問。

>>週刊東洋経済編集部の制作にかける思い

目次

特集
金利上昇に株主圧力… ついに動き出す!?
逆襲の銀行


[図解] 銀行は4つの転機をモノにできるか?

Part1 選択
他メガも驚いた構造改革の大勝負 みずほ住宅ローン「削減」の真意

[インタビュー]
「日本背負う中堅企業を支える」 みずほフィナンシャルグループ(FG)社長 木原正裕
「預金が儲かる商品になる」 三井住友フィナンシャルグループ(FG)社長 太田 純
「1兆円を稼ぐ体制はできた」 三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)社長 亀澤宏規

0.1%でも影響は大 銀行の悲願 「金利上昇」の皮算用
公的資金返済へSBIがTOB強行 SBI新生銀行、乾坤一擲の非上場化
スイスでは無価値になったが… メガバンクのAT1債は大丈夫か

時価総額は2000億~3000億円 住信SBI、楽天 ネット銀行の快進撃
口座数増えても少額取引で赤字続き LINE経済圏、銀行も証券も挫折

崩れた横一線、10万円もの格差も 賃上げ狂騒曲の実像
アルムナイが次々と発足 銀行がすがる「出戻り組」

Part2 再編
県内再編のドミノは終わらず 全国地銀「合従連衡」MAP
神奈川、長野、青森の最前線 ルポ、県内再編の地殻変動
北国FHD、地銀6行に"ひっそり投資" 純投資? 根回しなしに深まる疑念

「ストファイ」武器に食い込む 地銀が欲するメインの座
セゾン・スルガ提携、神経とがらす金融庁 異業種連携を仕掛けた「黒幕」
問われる地銀系証券の存在意義 地銀の「仕組み債」販売に厳罰

最新 地銀実力ランキング
・自己資本比率 ベスト20・ワースト20
・本業利益 ベスト20・ワースト20
売却後の再投資も難題に 「評価損」は終わらない
有価証券 評価損益ランキングワースト99

Part3 対峙
目指せPBR1倍、東証が警告 尻に火がついた株価対策
自己資本利益率には3種類ある? 銀行「ROE」基準乱立の混沌

アクティビストから対話重視まで 銀行株を狙う投資家の正体
23年は3メガすべてに提案 環境アクティビストの包囲網

銀行全銘柄/割高・割安ランキング

PBRランキング85

ニュース最前線
空港施設の「社長解任劇」 JALがつけた落とし前
JSRが非公開化で狙う 半導体材料再編の主役の座
任天堂創業家が総会で勝利 東洋建設「1年戦争」の結末


連載
|経済を見る眼|「日本の稼ぐ力は衰えている」は本当か小峰隆夫
|ニュースの核心|悪化一途のミャンマー情勢、私たちがすべきこと|岡田広行
|発見! 成長企業|群栄化学工業
|会社四季報 注目決算|今週の4社
|トップに直撃|安川電機 社長  小川昌寛
|フォーカス政治|「秋の陣」で解散再挑戦の実現度|塩田 潮
|マネー潮流|円買い介入が円安加速をもたらすか|佐々木 融
|中国動態|中国の本音は米国との緊張緩和だ|小原凡司
|財新 Opinion&News|CPTPP加盟に向け、対外開放を推進せよ
|グローバル・アイ|独裁化するポーランド、現代に必要な世界的「連帯」|カティ・マートン
|FROM The New York Times|PS5で捲土重来を期す ファイナルファンタジーの野望
|少数異見|失敗を成功の糧にするために
|ヤバい会社烈伝|旧カネボウ 飲み会と社員旅行 って、マジっすか!|金田信一郎
|知の技法 出世の作法|佐藤流・情報の収集と分析の手法⑱|佐藤 優
|経済学者が読み解く 現代社会のリアル|同性の子どもが欲しい その望みが男女格差を助長|中園善行
|話題の本|『ガールズ・アーバン・スタディーズ 「女子」たちの遊ぶ・つながる・生き抜く』共編、著者 大貫恵佳氏に聞く ほか
|社会に斬り込む骨太シネマ|『ワーキング ~社会を創る、"働く"の景色~』
|シンクタンク 厳選リポート|
|PICK UP 東洋経済ONLINE|
|編集部から|
|次号予告|

訂正情報

「週刊東洋経済2023年7月15日号」(7月10日発売)に、以下の誤りがありました。訂正してお詫び致します。
 
56ページ ■ライバルを結んだ危機感  
七十七銀行の宇都宮法人営業所の開設時期            

【誤】23年6月には宇都宮法人営業所を開設した。
   ↓
【正】23年8月に宇都宮法人営業所を開設する予定だ。