週刊東洋経済

情報量と分析力で定評のある総合経済誌

担当記者より
2023年8月5日号
2023年7月31日 発売
定価 800円(税込)
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【特集】台湾リスク


台湾統一(併合)か現状維持か――。中台関係の緊張が続き、軍事衝突への危機感が高まっています。ひとたび「有事」となれば、日本経済は壊滅的な打撃を受けます。本特集ではビジネスパーソン必読の「台湾リスク」の全容を徹底取材しました。10万人が中国に取り残されるなど日本企業に迫り来る有事のリスクを詳細に分析し、企業トップが知るべき危機管理と法的リスクについて解説しています。また台湾総統選の行方や半導体大手TSMCの世界戦略と地政学リスクへの挑戦など、激動する台湾政治・経済の最前線に迫りました。

担当記者より

特集「台湾リスク」を担当した野中大樹です。

7月24日、台湾では中国人民解放軍による攻撃を想定した市民の防空演習が行われました。台湾市内ではスマホから警報音が鳴り響くと、車は止められ、道行く人々は一斉に建物内や地下にかけこみました。

日本では地震や火事に備えた避難訓練は企業や学校でも行われていますが、「有事」に備えた訓練はありませんし、もし実施するとなったら大きなハレーションを招くでしょう。

しかし台湾ではこうした演習が毎年、恒例行事のように行われています。有事の懸念がより高まっているとして、今年からは台湾最大の民用空港である桃園国際空港で中国軍の空挺作戦に対する訓練も行われました。2024年からは兵役義務の期間を4カ月から再び1年に戻すなど、「中国の脅威」に備えようという機運が台湾社会で拡がっています。

中国は台湾統一を国是としており、習近平国家主席は「祖国統一のプロセスを揺るぎなく推進」、そのためには「武力行使を放棄せず」と明言しています。つまり、武力をもって台湾統一することもありうると述べているわけです。そこへきて中国の経済力、軍事力はかつてなく強大化しています。このままでは米国・台湾・日本の連携で維持してきた対中抑止構造が崩壊するのではないか。そんな懸念が高まっているのです。

日本では7月中旬の3連休、東京都内のホテルで台湾有事のシミュレーションが行われました。現職の国会議員や元政府高官らに加えて米国や台湾の有識者も参加し、実際に台湾有事が発生した時に日本政府がどう対応できるかを試す演習です。

特集の取材で浮かび上がったのは、有事が発生した際の在留邦人、在留法人の保護、避難計画がほとんど見当たらないことでした。中国と台湾にはそれぞれ10万人、2万人の在留邦人がおり、日本企業は中国大陸に1万2000社超、台湾に3000社超が進出しています。いざ有事が発生した時、彼らはどう対応すればいいのか。本社は、何か策があるのでしょうか。

必要以上に煽り立てるのは無益ですが、自国民や自社の駐在員に「自分の身は自分で守って」と言うのも無責任ではないでしょうか。できる対策はあるはずです。企業で意思決定をする方々に、そういうことを考えてもらえるきっかけになればと思いながら作りました。

特集後半では、来年1月に実施される台湾総統選挙のリポート、世界が依存する台湾積体電路製造(TSMC)のすごみ、最強の台湾企業15選など、台湾をクローズアップした記事が盛りだくさんです。

担当記者:野中 大樹(のなか だいき)
東洋経済記者。熊本県生まれ。週刊誌記者を経て2018年、東洋経済新報社に入社。現在は統合編集部。

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目次

特集
迫る「有事」の全シナリオ 台湾リスク
10万人が中国に取り残される 日本企業に迫り来る有事のリスク

Part1 米中激突! 習近平 統一への野心
解説 台湾をめぐる危ういバランス 台湾有事とは何か
台湾と中国の関係を理解するキーワード5選
[インタビュー]「衰退に向かう中国が『台湾有事』を起こすのは必然だ」 『デンジャー・ゾーン』著者 ハル・ブランズ

解放軍参謀の脳内を再現 台湾占領の戦慄シナリオ 山本勝也
[インタビュー]
「台湾侵攻を準備している。日本も備えが必要だ」 元空将 尾上定正
「ソフトランディング可能な国際秩序作りに汗をかけ」 元外務審議官 田中 均

有事への備えが損失を小さくする 企業トップが知るべき危機管理と法的リスク 横井 傑
そのとき迫られる究極の選択 「台湾有事」のコストと日本に問われる覚悟
[インタビュー]「『バランスシート不況』の中国に台湾に侵攻する余裕はない」 野村総合研究所 主席研究員、チーフエコノミスト リチャード・クー

Part2 激動!台湾の政治・経済
世界が注目する台湾総統選 民進党政権の継続か否か 中国の出方が選挙に影響 小笠原欣幸
[インタビュー]“中国”が台湾に浸透している 呉 介民

なぜこの企業に世界が依存するのか TSMCの世界戦略と地政学リスクへの挑戦 山田周平
設計や材料でも高まる存在感 製造のTSMCだけじゃない 台湾半導体産業の底力
電子機器、化学、海運などで有力プレーヤー 知られざる台湾企業の底力
米国留学から戻ったハイテク移民 「ハイテクの台湾」築いたシリコンバレー人材 川上桃子
中国一極集中から分散へ 台湾と中国の経済関係は「補完」から「競争」へ 伊藤信悟

深層リポート
異例の社長解任劇の全内幕 空港施設を「闇討ち」したJAL
「天下り天国」空港施設 国交省支配の実態

ニュース最前線
為替ヘッジが首を絞める 10兆円の「大学ファンド」
UUUMが過去最大の赤字 創業10年で迎えた危機
「同意なき買収」も辞さず ニデックが狙う旋盤会社


連載
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|トップに直撃|日本郵船 社長 曽我貴也
|フォーカス政治|デジタル「庁」敗戦で国民が混乱|牧原 出
|マネー潮流|米国経済の軟着陸は本当なのか|森田長太郎
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|財新 Opinion&News|中国シリコン原料暴落、急増する太陽光発電所
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