週刊東洋経済

情報量と分析力で定評のある総合経済誌

担当記者より
2023年8月12日・19日合併号
2023年8月7日 発売
定価 880円(税込)
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【特集】相続・登記・空き家 2024年問題


相続や登記・空き家にまつわるルールが、2024年から大きく変わります。まず、来年4月に「相続登記の申請義務化」が開始。所有者不明空き家への対策の制度で、申請しなかった場合、過料処分になる可能性があります。また1月からは「生前贈与制度」が変更となり、主流だった「暦年課税」のメリットが縮小します。そしてマンション相続税評価額の新しい算定ルールが24年から導入される予定です。本特集ではそうした相続関連の「2024年問題」の中身や対処法について解説。全国の税務署別相続税課税割合ランキングも掲載。
 

担当記者より

特集「相続・登記・空き家2024年問題」を担当した木皮透庸です。これまで企業取材の経験が長く、相続の経験がほぼない自分にとっては最も縁遠いテーマでした。当面は関係ないことと遠ざけていた面もあります。筆者と同じ40代前半でも同様の意識の人が多いかもしれません。

日本で相続税が発生するのは、亡くなった人の数に対し約9%。一方で実家の片付けには多くの人が無縁ではいられません。今回実施した読者アンケートでは約半数の人が実家の片付けを経験し、その苦労は切実でした。

「両親の他界後、ゴミ屋敷状態になっていた実家の片付けに100万円かかった」「親が施設に入り、空き家となった実家を片付けようにも売却しようにも、親は絶対に承諾しない」「田舎の250坪の実家を相続したが、維持管理の費用と手間が負担になって5年で売却。タダ同然だった」

親の死後、空き家になったままの実家をどうするかで多くの人が悩んでいます。空き家バンクに登録しても10年、20年売れないケースも少なくありません。「実家じまい」を経験したタレントの松本明子さんが、「年齢が上がると体力が落ち、片付けがどんどん大変になる」と話していたのが印象的でした。親が元気なうちから一緒に少しずつ片付けを始め、親が亡くなった後の実家の方向性を家族の中である程度決めておくことが大切になります。

日本では今や空き家が住宅の「6戸の1戸」に迫り、所有者不明の土地は九州の面積を上回る規模になっています。国も相続登記の義務化などでこの問題に対応しようとしていますが、最終的には個人の意識の変化に委ねる部分が大きいと考えます。

子の立場からすれば、実家の片付けや相続についての話はなかなか切り出せないと思います。この夏、実家に帰省する際にはぜひ本誌をお持ち帰り頂き、会話のきっかけにして頂ければ幸いです。多くの人にとって「相続・登記・空き家」という今回のテーマが自分事になれば編集者冥利につきます。

担当記者:木皮 透庸(きがわ ゆきのぶ)
1980年茨城県生まれ。一橋大学大学院社会学研究科修了。NHKなどを経て、2014年東洋経済新報社に入社。自動車業界や物流業界の担当を経て、2022年10月から東洋経済編集部でニュースや特集の編集を担当。

>>週刊東洋経済編集部の制作にかける思い

目次

特集
知らないと大変! 相続・登記・空き家 2024年問題

[図解] 相続のルールが激変する「2024年問題」

PART1 登記・空き家問題
賃貸や売却などの活用難しく 空き家が招く「国土廃墟化」
ルール激変の影響を独自予測 頭を悩ませる実家の相続
実家の片付け 約2600人アンケート

[インタビュー] タレント・女優 松本明子
「実家の方向性を家族で共有しておく」

PART2 「マンション節税」にもメス 変わる相続・生前贈与
評価額倍増で相続税発生物件が急増 「タワマン節税規制」の波紋
[独自シミュレーション] 相続税評価額はこう変わる! 7地区13物件の推計相続税額
マンションの駆け込み贈与は早計

生前贈与活用で相続税を減らす 暦年と精算の賢い使い分け
税制改正に対応 生前贈与で抑えられる相続税の節税額シミュレーション
教育資金の非課税枠は1500万円 一括贈与の特例を賢く使う

[インタビュー] 自由民主党税制調査会会長 参議院議員 宮沢洋一
「税制は短期視点ではなく 先を見据えて考えるべきだ」

PART3 賢い相続対策
「相続・贈与・実家の片付け」2600人アンケートに見る 令和日本の“相続のリアル”
[相続専門YouTuberが解説①] 相続トラブルの典型例と対策
トラブル防止の要 遺言書の書き方
[相続専門YouTuberが解説②] 税務調査の知られざる実態
手続きから相続税の計算まで ゼロから知る相続の基本
小規模宅地等の特例を活用

最新版! 富裕層が多いエリアはここだ! 税務署別 全国相続税課税割合ランキング
2023年最新路線価で見る 相続税「駅別」試算MAP

スペシャルリポート
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ニュース最前線
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