週刊東洋経済

情報量と分析力で定評のある総合経済誌

担当記者より
2023年9月9日号
2023年9月4日 発売
定価 850円(税込)
JAN:4910201320936

【第1特集】弁護士・裁判官・検察官

文系エリートの頂点である法曹三者。その憧れの職業が、かつてないほどに揺らいでいます。司法試験は受験者数が年を追うごとに減少し、今や2人に1人が合格する試験となっています。弁護士は「食えない」「ゆくゆくはAI(人工知能)に代替される」と敬遠され、激務や劣悪な職場環境、低賃金が嫌気され若手裁判官の退官も相次いでいます。検察では冤罪が続出。企業人を起訴・長期勾留した揚げ句に無罪判決が相次ぐ失態を繰り返しています。弁護士、裁判官、検察官――、司法インフラの瓦解の足音を追いました。
 

【第2特集】中国富裕層 日本に大脱出


経済が急減速し政治的な締め付けも強まる中国から、富裕層が逃げ始めた。シンガポールに続く受け皿として浮上しているのが日本だ。

担当記者より

特集「弁護士・裁判官・検察官」を担当した山田雄一郎です。

主に検察官のパートを担当しました。裁判の傍聴取材を割としているほうなのですが、現職の公安担当の警察官や検事、経済産業省の職員が証言台に立つのを見るのは初めてでした。大川原化工機の大川原正明社長が、国と東京都を訴えた国家賠償裁判でのことです。

この大川原社長、そもそも犯罪が成立しない事案について、警視庁によって逮捕され、検察によって起訴されました。この間、約11か月も身体拘束されたのです。ところが第1回公判の直前、このままでは裁判で負けてしまうと判断した検察によって起訴が取り消されました。これではあまりにも理不尽です。そこで大川原社長は国と東京都を訴えたのです。 
 
国家賠償裁判での爆弾発言は、警視庁の警部補から飛び出しました。国や東京都にとっても衝撃的でした。
「公安部が事件をでっちあげたという点は否めないかと思うが、違いますか?」と大川原社長の弁護士が質問した時です。証言台のA警部補が「まあ、捏造(ねつぞう)ですね」と答えたのです。

実は、証人として東京都が警戒していたのは別のB警部補でした。大川原化工機の立件に早い段階から懐疑的だったからです。B警部補を証言者として呼びたくないから、「実際に実験に立ち会ったA警部補を呼んだほうがいい」と東京都は主張していたのでした。これが東京都にとってはやぶ蛇で、裁判所を交えた協議の結果、2人とも呼ぶことになったのでした。

A警部補は、経産省と警視庁との間の打ち合わせの内容を記した「捜査メモ」をしっかりと読み込み、正確な証言ができるように準備してきました。大川原社長の弁護士に聞かれたことに、ごまかしたり隠したりすることなく、捜査メモに基づいて正直に答えました。
B警部補も、捜査の実情について、批判的な観点から証言しました。 

都合の悪い質問に「覚えていない」を連発した経産省職員や起訴をした検事、起訴を取り下げた検事、捜査チームを主導した警部 、警部の命令に従順だった警部補の話に比べると、2人の警部補の証言は生々しく、本当のことを言っているな、という印象でした。

このほか、関係者にウソの供述をさせて東証1部上場社長を逮捕し起訴、長期勾留したプレサンスコーポレーション事件、検察の主張が覆され一審に差し戻されたナイス事件など、検察の捜査や起訴、証券取引等監視委員会の調査や告発が、いかにずさんであるかを取材しています。記事を読んでいただけると、現在の検察は経済犯罪を立件する技法をあまりにも研ぎ澄ましてきた結果、シロ(無実)の企業人をクロ(犯人)に仕立てあげていることがわかります。

特集では、弁護士、裁判官、検察官のホットイシューについて、フリージャーナリストを含む取材チームが取材し記事をまとめました。日本の司法のインフラはかなり危うい。瓦解する寸前だ。それが取材チームの結論です。ぜひ、お手にとってご覧ください。
 

担当記者:山田 雄一郎(やまだ ゆういちろう)
東洋経済記者。1994年慶応大学大学院商学研究科(計量経済学分野)修了、同年入社。1996年から記者。自動車部品・トラック、証券、消費者金融・リース、オフィス家具・建材、地銀、電子制御・電線、パチンコ・パチスロ、重電・総合電機、陸運・海運、石油元売り、化学繊維、通信、SI、造船・重工を担当。『月刊金融ビジネス』『会社四季報』『週刊東洋経済』の各編集部を経験。業界担当とは別にインサイダー事件、日本将棋連盟の不祥事、引越社の不当労働行為、医学部受験不正、検察庁、ゴーンショックを取材・執筆。『週刊東洋経済』編集部では「郵政民営化」「徹底解明ライブドア」「徹底解剖村上ファンド」「シェールガス革命」「サプリメント」「鬱」「認知症」「MBO」「ローランド」「減損の謎、IFRSの不可思議」「日本郵政株上場」「東芝危機」「村上、再び。」「村上強制調査」「ニケシュ電撃辞任」「保険に騙されるな」「保険の罠」の特集を企画・執筆。『トリックスター 村上ファンド4444億円の闇』は同期である山田雄大記者との共著。

>>週刊東洋経済編集部の制作にかける思い

目次

第1特集
揺らぐ文系エリート
弁護士・裁判官・検察官


Part1
弁護士 「食える」「食えない」で二極化

法務省がガイドラインを公表 「非弁行為」がクリアに 弁護士のAI利用が加速
2人に1人が合格 司法試験 受験者数が激減 岐路に立つロースクール
研究者志望や元エンジニアから転身 活躍する理系弁護士
[弁護士覆面座談会]食えないなんてウソ! 出世する人はコミュ力高い
[有力弁護士インタビュー]「弁護士にいわゆる出世はない」 中島 茂/「弁護士の収入は質と価値の掛け算」 牛島 信
AIは弁護士業務をどう変えるか 専門職としての判断が重要 使いこなせば有力なツールに
出世とお金 弁護士編 食える? 食えない? 富む者はますます富む

Part2
裁判官 不人気感が強まる職場

忙しい職場がさらに忙しく 裁判官の採用難 大手事務所と争奪
「ヒラメ裁判官」はなぜ生まれるのか 裁判官は法服を着た官僚集団
出世とお金 裁判官編 エリートは「局付」 若手の収入は見劣り

Part3
検察官 見込み捜査で経済を阻害

自白するまで長期勾留 ストーリー優先で証拠集め 繰り返される冤罪
大川原化工機事件 公安のでっち上げを起訴した東京地検のずさん
プレサンスコーポレーション事件 誤った見立てで捜査を強行 供述をねじ曲げ、捏造
「市場の番人」の看板が泣く 調査能力が不足 監視委・検察の黒星
・モルフォ・SMBC日興証券・ナイス
出世とお金 検察官編 検事正は早期退職し 高給取りの公証人に

第2特集
「新移民」のお目当ては不動産と教育
中国富裕層(ニューリッチ)  日本に大脱出

東京湾岸タワマンを中国パワーが席巻 中国「新移民」に豊洲が大人気

ニュース最前線
「原発処理水」の海洋放出 中国の禁輸で漁業が窮地に
東芝買収に3000億円 ロームが描く半導体協業
ビッグモーター不正が波及 蔓延する保険金水増し請求


連載
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|ニュースの核心|バーチャルな中国経済観にご用心|西村豪太
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|トップに直撃|ダイキン工業 社長 十河政則
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