週刊東洋経済

情報量と分析力で定評のある総合経済誌

担当記者より
2023年10月14日号
2023年10月10日 発売
定価 850円(税込)
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【第1特集】薬クライシス 供給不足の深層

「薬がない!」。こんな言葉が医療現場で当たり前のように聞かれるほど、薬の供給不足は深刻な状況になっています。本特集では増産だけでは解決しない後発薬メーカーの業界再編の難しさや、赤字の薬でもやめられない日本医師会の呪縛、加速するMR削減、自由診療での“やせ薬”の乱発で糖尿病患者から上がる悲鳴など、製薬業界の光と影を描きました。またドラッグストアと調剤薬局の熾烈な勢力圏争いや処方箋なしで病院の薬が買える「零売薬局」規制への疑問など、問われる薬局の役割にも迫りました。
 

【第2特集】バイデノミクス狂騒曲


バイデン米大統領が国内投資を促進する大規模な経済政策を打ち出した。各国が追随し、日本企業も対応を急ぐ。

担当記者より

特集「薬クライシス」を担当した井艸恵美です。

夏場に体調を崩し、せきが止まらなくなりました。そこで友人からおすすめされたのが、オンライン診療の予約が取れるアプリ。たまたま予約が取れたのは、宮崎県内にあるクリニックでした。アプリ上で宮崎の医療機関にいる医師が、東京の自宅にいる私の症状を聞き、あっという間に薬を処方してくれました。

ところが、処方された薬を近所の薬局でもらおうとすると、その薬の在庫がないというのです。結局、電車に乗って数駅先の薬局まで薬を取りに行くはめに。果たして便利になったのか、不便になったのか……。

そんな疑問から出発した特集は、深刻化する薬の供給不足を深掘りしました。感染症の流行期となる冬場を前に、せき止め薬や子どもの抗生剤など私たちの身近な薬が、不足しています。供給不安に陥る薬は医療用医薬品全体の約2割。薬局・医療機関、そして製薬メーカー、医薬品卸への取材を重ね、サプライチェーンが抱える複合的な問題を解き明かします。

薬不足は、本来必要のない薬が乱用されていることも原因になっています。便利なオンライン診療では、薬をもらうことを目的にした自由診療サービスが登場。糖尿病向けの新薬が「やせ薬」としてダイエット目的で処方され、本来使われるべき糖尿病患者に行き届いていないという現実も見えてきました。

患者目線で薬の処方をチェックするはずの薬剤師が、その役割を十分に果たせていないことも課題です。8月に大手調剤薬局社長が逮捕された事件の背景にある、病院と薬局の癒着にも迫ります。

医療関係者はもちろん、患者やその家族にもぜひ読んでもらいたい特集です。

担当記者:井艸 恵美(いぐさ えみ)
群馬県生まれ。上智大学大学院文学研究科修了。実用ムック編集などを経て、2018年に東洋経済新報社入社。『週刊東洋経済』編集部を経て2020年から調査報道部記者。

>>週刊東洋経済編集部の制作にかける思い

目次

第1特集
がん治療から肥満症薬まで新薬の光と影
薬クライシス 供給不足の深層

[カバーストーリー]薬がない! 医療現場の悲鳴

Part1
製薬の光と影

増産だけで供給不安は解決しない
後発薬メーカーの業界再編は前途多難

アステラスも500人の早期退職者を募集
コロナで加速する製薬企業の「MR削減」

販売中止の判断がブラックボックス化
赤字の薬でもやめられない 「日本医師会」の呪縛

肥満症薬としても承認された糖尿病薬
自由診療“やせ薬”乱発で糖尿病患者が悲鳴

「レカネマブ」使える人は一握り
期待のエーザイ認知症新薬 副作用対応は不十分

コロナワクチン副反応の「遠い救済」
リスク情報開示を渋る厚労省の不可解

花粉症の根本治療
国が支援する「舌下免疫療法」

がん治療の革命児「エンハーツ」への期待
がん薬物治療の選択肢が増える

ドラッグラグに続く新たな課題
「ドラッグロス」 日本で使えない薬が増加

「頭痛外来」の開設も増えてきた
進化する片頭痛の対策 「発症抑制薬」の実力

国会議員や霞が関の足並みはバラバラ
難病やがん患者の期待大だが不安残る「ゲノム医療」
[インタビュー]ゲノム医療の火付け役 元厚生労働相 塩崎恭久

真価の見極めにはデータが不足
国産コロナ薬「ゾコーバ」 専門医に使われない現実

Part2
問われる薬局の役割

薬剤師の数は世界トップレベル
医薬分業50年でも実現しない「患者本位の薬局」

M&A活発化でチェーン化が加速
ドラッグストアと調剤 熾烈な勢力圏争い

[座談会]「給与」か「やりがい」か 若手薬剤師の胸中
「やりがい」だけでは集まらない 熾烈化する薬剤師争奪戦

処方箋なしで病院の薬が買える
「零売薬局」規制への疑問

薬の処方が前提の自由診療が登場
コロナで規制緩和が進んだオンライン診療の歪み

第2特集
加速する「自国第一主義」の産業政策
バイデノミクス狂騒曲

自動車労組のストは追い風になるか? EV批判で得票狙うトランプの魂胆
経産省が踏み出した産業政策の「新機軸」 「失われた30年」からの転換
[インタビュー]慶応大学経済学部教授 土居丈朗
「減税を通じた『政策効果』の実現を」

深層リポート
大統領選にらみバイデン、トランプも参戦
米国自動車ストが各地に拡大 物価高騰に国民の不満

ニュース最前線
まさかの村上氏登場で混沌 狙われたSBI新生銀行株
スタジオジブリを電撃買収 日テレにのしかかる重圧
東芝2兆円TOB成立で ファンドはいくら儲けたか


連載
|経済を見る眼|高齢化時代の労災防止はどうあるべきか|太田聰一
|ニュースの核心|「インフレ時代の資産防衛」が日本銀行を揺るがす|野村明弘
|発見! 成長企業|そーせいグループ
|会社四季報 注目決算|今週の4社
|トップに直撃|INPEX 社長 上田隆之
|フォーカス政治|国民民主の「連立入り」は実現するか|中北浩爾
|マネー潮流|化石燃料時代の終焉予測めぐる争い|高井裕之
|中国動態|EV電池市場を分断する対中警戒感|田中信彦
|財新 Opinion&News|恒大傘下の資産管理会社、会長が拘束の衝撃
|グローバル・アイ|経済成長率を目標にする経済政策は間違っている|マリアナ・マッツカート
|Inside USA|コミュニティーの要、図書館に「禁書」の受難|安井明彦
|少数異見|プロ野球16球団のススメ
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|知の技法 出世の作法|佐藤流・情報の収集と分析の手法㉙|佐藤 優
|経済学者が読み解く 現代社会のリアル|経済学実験の被験者役 「ChatGPT」が担えるか|土橋俊寛
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|社会に斬り込む骨太シネマ|『月』
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