週刊東洋経済

情報量と分析力で定評のある総合経済誌

担当記者より
2023年11月18日号
2023年11月13日 発売
定価 850円(税込)
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【第1特集】絶望の中国ビジネス


李克強・前首相の突然の死、日本人駐在員の逮捕など、中国では不吉なニュースが続いています。国家安全を優先し経済成長が鈍化、直接投資が初のマイナスになった、そんな「世界の市場」から企業が逃げ始めました。特集では反スパイ法と「データ3法」の本当の危うさ、中国駐在員が語る超監視社会の恐怖などに迫っています。創刊記念号特集は「没後50年 今なぜ石橋湛山か」。4つのテーマで読み解く名峰湛山の実像や、超党派議連「石橋湛山研究会」が描く日本の未来についても論を展開しています。
 

担当記者より

特集「絶望の中国ビジネス」を担当した西村豪太です。
李克強前首相の急死、反スパイ法違反によるアステラス製薬駐在員の逮捕など、中国に関する衝撃的な報道が続いています。そのなかで目立ちませんでしたが、ビジネスパーソンなら見逃せないニュースがありました。

今年7~9月に、中国に対する直接投資が118億ドル(約1兆7700億円)の流出超過となったのです。外資系企業による中国への新たな投資よりも、撤退や事業の縮小が上回ったとみられます。直接投資が流出超過となったのは、統計がある1998年以来で初めてのことでした。

最近も三菱自動車が中国市場からの撤退を決めました。最初は「世界の工場」、のちには「世界の市場」としてグローバル企業を引き寄せてきた中国に、大きな転機が訪れています。

並行して、中国企業による海外への投資も拡大しています。中国国内のビジネス環境の悪化を嫌って、海外に活路を求める企業が増えているとみられます。今年7~9月の国内向けと海外向けの直接投資を差し引きしたところ、658億ドル(約9兆3000億円)の流出超過となりました。これは過去最大の数字です。外資、中国系を問わず、企業が逃げ出しているといえます。

中国では不動産不況が長期化していますが、その過程で起きた民営企業バッシングは投資意欲を大きくそいでいます。また、中国政府は口では外資を歓迎していますが、企業の側は中国への技術移転の強要や反スパイ法による駐在員の拘束などに警戒感を高めています。

今回取材した中国ビジネスのベテランたちは、異口同音に「中国政府の優先順位が変わった」と話していました。習近平政権にとって、現在の最優先課題は経済成長ではなく、「国家安全」だといいます。共産党が経済よりも大事にしている「国家安全」は、中国をどう変えていくのでしょうか? そして、日本企業のビジネスへの影響は? その答えをぜひ誌面でご確認ください。

担当記者:西村 豪太(にしむら ごうた)
1992年に東洋経済新報社入社。2016年10月から2018年末まで、また2020年10月から2022年3月の二度にわたり『週刊東洋経済』編集長。現在は同社コラムニスト。2004年から2005年まで北京で中国社会科学院日本研究所客員研究員。著書に『米中経済戦争』(東洋経済新報社)。

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創刊は1895年(明治28年)、日本国内で最も歴史のある週刊雑誌でもあります。企業戦略から主要業界事情、国内外の政治経済はもちろん、近年はビジネス実用、テクノロジー、社会問題まで、経済の複雑化やビジネスパーソンの関心の広がりに対応し、幅広いテーマを取り上げています。

一方で創刊以来、一貫しているのはセンセーショナリズム(扇情主義)を排除し、ファクトにこだわる編集方針を堅持することです。「意思決定のための必読誌」を掲げ、今読むべき特集やレポートを満載し、価値ある情報を毎週発信しています。

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「健全なる経済社会を先導する」という創刊理念のもと、企業戦略やマクロ経済だけでなく、社会問題や海外情勢など幅広いテーマで特集を組み、中立的な立場で情報発信をしています。

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約3,900社の上場企業すべてに担当記者を配置。財務情報から海外進出情報など『会社四季報』ならではのデータベースから独自の切り口で深掘りし、分析した連載や特集を『週刊東洋経済』で展開しています。

目次

第1特集
「経済失政」「国家安全」が日本企業を直撃
絶望の中国ビジネス

経済より「国家安全」優先 中国から企業が逃げ出す
[匿名座談会]現場の悲鳴を聞け!
外国企業の活動に制約 反スパイ法とデータ3法
日本の風力発電、EVが危ない 脱中国依存を 北村 滋
経済運営も側近頼み 習1強の落とし穴

[特別対談]中国は日本の「失われた30年」を再現するのか
リチャード・クー 野村総合研究所 主席研究員・チーフエコノミスト/津上俊哉 現代中国研究家

習近平が葬った改革の道 悲運の宰相・李克強の死
金融危機は回避できるか 住宅バブル崩壊の衝撃度 関 志雄
BYDだけじゃない! 中国EVが続々日本へ
三菱自はついに白旗 中国撤退ドミノの足音
中国レガシー半導体集中で 貧乏くじを引く日本企業

「中国のシリコンバレー」 深センを襲う異変
[ジャカルタ現地ルポ]インドネシアに投資攻勢 中国の独り勝ちに「待った」

【創刊記念号特集】
没後50年 今なぜ石橋湛山か

湛山を現代政治に生き返らせ 真正保守と真正革新の融合を 
ノンフィクション作家 保阪正康

名峰湛山の実像
1[経済産業人の眼]日本総合研究所会長 寺島実郎/評論家 佐高 信
2[ナショナリズムをめぐる葛藤]共立女子大学准教授 上田美和/岡山大学名誉教授 姜 克實
3[米中対立と日本]日本産業パートナーズ取締役 リチャード・ダイク/衆議院議員 「石橋湛山研究会」幹事長 古川禎久
4[道を切り開く力]KKR日本法人会長 斉藤 惇/田中角栄元首相秘書官、弁護士 小長啓一

小日本主義の本質を 「脱亜論」と比較する 京都府立大学教授 岡本隆司
[インタビュー]『政治家・石橋湛山研究』の著者 増田 弘氏に聞く
「時の権力者へも敢然と戦いを挑む政治家」

ニュース最前線
日銀が長期金利上限を撤廃 終わらない円安と物価上昇
トヨタ、営業益4.5兆円超 空前の好業績とアキレス腱
パチンコで過去最大の倒産 ガイアに見えていた「予兆」


連載
|経済を見る眼|経済政策を平時に戻す覚悟を|小峰隆夫
|ニュースの核心|雇用改革は「幹部候補」と「労働者」の区分から|野村明弘
|発見! 成長企業|チェンジホールディングス
|会社四季報 注目決算|今週の4社
|トップに直撃|JR東日本 社長 深澤祐二
|フォーカス政治|日銀審議委員に求められる「独立性」|軽部謙介
|マネー潮流|自主性重視する日本版カーボン市場|高井裕之
|中国動態|異例の特別国債は中国経済を救うか|福本智之
|財新 Opinion &News|中国の二人っ子政策効果一巡、少子化止まらず
|グローバル・アイ|早期利上げで債務危機回避、新興国の「王道政策」|ケネス・ロゴフ
|FROM The New York Times|謎の「妖精」が橋を架け直す 英村民と環境保護団体の対立
|少数異見|対北朝鮮、誰か行動する者はいないのか
|ヤバい会社烈伝|エネオス、アポロ そんなに太らして体に悪いんじゃね|金田信一郎
|知の技法 出世の作法|佐藤 優
|経済学者が読み解く 現代社会のリアル|一上 響
|話題の本|『1100日間の葛藤 新型コロナ・パンデミック、専門家たちの記録』著者 尾身 茂氏に聞く ほか
|社会に斬り込む骨太シネマ |『首』
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