特集「外国人材が来ない!」を担当した井艸恵美です。いまや外国人労働者は、ほぼ全ての産業で欠かせない存在になっています。10年前は全産業で外国人は「92人に1人」の割合でしたが、現在は「37人に1人」と約2.5倍にまで増えています。
「東南アジアには産業がなく、生活水準は低い」「日本に出稼ぎに来る人はまだたくさんいる」。本特集の取材では地方の中小企業経営者からはこんな言葉をよく聞きました。しかし、その認識は実態と違ってきています。
「今、ベトナムの意欲ある若い層は韓国に目が向いている。賃金は日本を超え、外国人労働者の受け入れ拡大に本気になっているから。人気順で日本は2番手だが、3番手の台湾が追い上げている」。ベトナムの技能実習生の送り出し機関に勤める男性は言います。
最も人手不足が深刻な介護業界でも、「日本を選ぶ人が少なくなっている」と日本で介護職として働いていたフィリピン人女性は話します。
現在、韓国や台湾では戦略的に移民を受け入れる政策に力を入れています。もちろん日本に行きたいという外国人からは「日本は安全で衛生的」という好意的な声も聞きます。しかし、その評判にあぐらをかいていると、せっかく日本に希望を持ってきた人までもを取りのがしてしまいかねません。
外国人の「日本離れ」を加速させないために、本特集では技能実習や特定技能制度の欠陥を浮き彫りにし、外国人から選ばれるための企業の秘訣を紹介します。捨てられる国(企業)になるのか、選ばれる国(企業)になるのか。ぜひお手に取ってご覧ください。
担当記者:井艸 恵美(いぐさ えみ)
群馬県生まれ。上智大学大学院文学研究科修了。実用ムック編集などを経て、2018年に東洋経済新報社入社。『週刊東洋経済』編集部を経て2020年から調査報道部記者。