週刊東洋経済

情報量と分析力で定評のある総合経済誌

担当記者より
2023年12月2日号
2023年11月27日 発売
定価 850円(税込)
JAN:4910201311231

【第1特集】外国人材が来ない! 選ばれる企業・捨てられる企業

あらゆる産業で人手不足が深刻化しています。外国人材の受け入れでカバーを見込むのは政府推計で約34万人。ただ、稼げる国として長らくアジアの新興国から「選ばれる国」であった日本の地位は、大きく揺らいでいます。本特集では中小企業から大手企業まで無関係ではない全都道府県で進行する「外国人依存」の実態や、介護、農業、建設など依存度の高い各業界の実情をリポートしています。また、すしも旅行消費額も今や日本より高い東南アジアの経済水準の最前線や、外国人から選ばれる企業の秘訣にも迫っています。
 

【第2特集】CCC 平成のエンタメ王が陥った窮地


TSUTAYAにTポイント、そして蔦屋書店――。カリスマ創業者が率いる「企画会社」はなぜ没落したのか。

担当記者より

特集「外国人材が来ない!」を担当した井艸恵美です。いまや外国人労働者は、ほぼ全ての産業で欠かせない存在になっています。10年前は全産業で外国人は「92人に1人」の割合でしたが、現在は「37人に1人」と約2.5倍にまで増えています。

「東南アジアには産業がなく、生活水準は低い」「日本に出稼ぎに来る人はまだたくさんいる」。本特集の取材では地方の中小企業経営者からはこんな言葉をよく聞きました。しかし、その認識は実態と違ってきています。

「今、ベトナムの意欲ある若い層は韓国に目が向いている。賃金は日本を超え、外国人労働者の受け入れ拡大に本気になっているから。人気順で日本は2番手だが、3番手の台湾が追い上げている」。ベトナムの技能実習生の送り出し機関に勤める男性は言います。

最も人手不足が深刻な介護業界でも、「日本を選ぶ人が少なくなっている」と日本で介護職として働いていたフィリピン人女性は話します。

現在、韓国や台湾では戦略的に移民を受け入れる政策に力を入れています。もちろん日本に行きたいという外国人からは「日本は安全で衛生的」という好意的な声も聞きます。しかし、その評判にあぐらをかいていると、せっかく日本に希望を持ってきた人までもを取りのがしてしまいかねません。

外国人の「日本離れ」を加速させないために、本特集では技能実習や特定技能制度の欠陥を浮き彫りにし、外国人から選ばれるための企業の秘訣を紹介します。捨てられる国(企業)になるのか、選ばれる国(企業)になるのか。ぜひお手に取ってご覧ください。

担当記者:井艸 恵美(いぐさ えみ)
群馬県生まれ。上智大学大学院文学研究科修了。実用ムック編集などを経て、2018年に東洋経済新報社入社。『週刊東洋経済』編集部を経て2020年から調査報道部記者。

>>週刊東洋経済編集部の制作にかける思い

目次

第1特集
選ばれる企業・捨てられる企業
外国人材が来ない!

[Prologue]もはや「選ばれる国」ではない 日本に外国人労働者が来なくなる日

Part1 外国人採用の高い壁
中小企業から大手企業まで無関係ではない! 全都道府県で進行する「外国人依存」の実態
産業別の都道府県「依存度」ランキング
農業/漁業/建設業/製造業/卸売業、小売業/宿泊業、飲食サービス業/医療・福祉

介護 「他業種に流れる!」 法改正で特養に大打撃
看護 [コラム]現場と制度にずれ 日本が取り逃がす外国人看護師たち
高度人材  増加する高度人材で真の国際化につながるか 鈴木貫太郎
農業 「脱・技能実習生」で人材の定着を模索
建設 [座談会]働き手と経営者が本音を語る
物流   技能実習に追加されても人手不足は解決しない
[インタビュー]技能実習制度が企業社会の暗部を映し出した
「労働力確保と人材育成は両立できる」 東海大学教授 万城目正雄

[Q&A] 実態は「移民政策」だが 日本で働く魅力は低下
購買力、観光客の消費力は日本をしのぐ勢い 日本に急接近する東南アジアの経済水準 藤岡資正

Part2 外国人に選ばれるための策
実習生問題は大企業にも直結 下請けの未払い賃金を一部肩代わりしたワコール
[インタビュー]人を育てる政策に舵を切れるか
「学校教育の整備なしに外国人は日本に来ない」 東京外国語大学准教授 小島祥美

外国人から選ばれる企業の秘訣
スズキハイテック(山形県)/平本精機(三重県)/エスケー化成(東京都)/センショー(大阪府)

第2特集
CCC 平成のエンタメ王が陥った窮地
[インタビュー]カルチュア・コンビニエンス・クラブ 社長兼COO 髙橋誉則
さらばTポイント 栄華と没落の20年
カリスマ創業者 増田宗昭の知られざる素顔

ニュース最前線
「進研ゼミ」のベネッセ 創業家が背中押したMBO
住友化学の最悪決算招いた 十倉経団連会長の経営判断
ビッグモーター買収を検討 伊藤忠が火中の栗拾う理由


連載
|経済を見る眼|進化し続けるAIにどう向き合うか?|井上達彦
|ニュースの核心|首尾一貫した言行を示した隣国の知性|福田恵介
|発見! 成長企業|サムコ
|会社四季報 注目決算|今週の4社
|トップに直撃|曙ブレーキ工業 社長 CEO 宮地康弘
|フォーカス政治|「解散できない首相」に残された道は|塩田 潮
|マネー潮流|来年も債券投資家は気を緩めるな|森田長太郎
|中国動態|不一致点を鮮明にした米中首脳会談|小原凡司
|財新|EV販売台数でBYDがテスラに肉薄の衝撃
|グローバル・アイ|「AI発の核戦争」はもはやSFではない|メリッサ・パーク
|FROM The New York Times|ガザ空爆の正当化に広島を持ち出すイスラエルの強弁
|少数異見|日銀保有のETFを国民に還元せよ
|ヤバい会社烈伝|3M(スリーエム) 上司うざいから勝手に作ろうぜ|金田信一郎
|知の技法 出世の作法|佐藤流・情報の収集と分析の手法㊱|佐藤 優
|経済学者が読み解く 現代社会のリアル|インフレ率にも影響及ぼす 「値上げ雪崩」という連鎖|楡井 誠
|話題の本|『家で死ぬということ ひとり暮らしの親を看取るまで』著者 石川結貴氏に聞く ほか
|社会に斬り込む骨太シネマ|『ティル』
|シンクタンク 厳選リポート|
|PICK UP 東洋経済ONLINE|
|編集部から|
|次号予告|