特集「無敵の新幹線」を担当した大野和幸です。今年・来年の年末年始(12月28日~1月4日)は東海道・山陽新幹線の「のぞみ」が全車指定席になります。通常では、自由席が1~3号車にありますが、それが一斉になくなります。
それだけではありません。今年4月からはJR各社とも、シーズンを「通常期」「繁忙期」「最繁忙期」「閑散期」の4つに分け、指定席特急券でそれぞれ価格差を付けています。例えばJR東海の場合、今年12月は、最繁忙期の29日・30日が通常期より400円増し。逆に来年1月は、閑散期の9日・10日・11日が通常期より200円引き。最大で600円の格差があるのです。
つまり、今年12月30日にのぞみに乗りたい人は全員、指定席を事前に予約のうえ、通常より上乗せした料金を払わなければならない。もう、帰省客が自由席に座ろうとごった返す、東京駅ホームの行列の風景は見られなくなるかもしれません。
これが進めばJR各社も、航空機やホテル、テーマパークのように、繁閑で値段を常時機動的に変動させるダイナミック・プライシング制(変動価格制)を導入する可能性もあります。需要のある期間(時間)は高く、需要のない期間(時間)は安く、です。
以上は変化の一端です。
東京━名古屋━新大阪の3大都市圏をつなぎ、ビジネス利用が6割を占める東海道新幹線は、ビジネス色をどんどん強めています。車両の一部に「S WorkPシート」を導入、3列席を2列席に広げてパーティションを付け、ノートPCを操作しやすいようリクライニング角度を小さくするなど、“隙間時間に少しでも仕事をしたい”ビジネスパーソンに向けた仕様にしています(追加料金で1200円必要)。車両と車両の間には「ビジネスブース」を設置し、声を出して室内でリモート会議ができるようにも変えました(10分200円。30分以上は10分300円)。まるで“動くオフィス”ともいえます。
その意味では少しでも効率を追求し、利用者の動きを先取りするようなJR東海の姿勢は、新時代に合ったものなのでしょう。少なくとも平日ののぞみは、駅弁を買っておしゃべりしながら富士山など車窓の風景を楽しむような、牧歌的なシーンはなくなりつつあります。そういえば、この10月末で車内のワゴン販売も廃止され、モバイルオーダー(グリーン車のみ)に変わりました。
今特集では、つねに進化しつつあるのぞみの変貌のほか、北海道や北陸、九州など全国各地の新幹線ルポ、静岡県知事の一部“容認”で前進しつつあるリニアの最新事情など、ありとあらゆる新幹線の情報を盛り込んでいます。ぜひ手に取ってご覧ください。
担当記者:大野 和幸(おおの かずゆき)
ITや金融、自動車、エネルギーなどの業界を担当し、関連記事を執筆。相続や年金、介護など高齢化社会に関するテーマでも、広く編集を手掛ける。